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だって姉が眩しかったから
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「どうしてそこまでムキになるの?」
精霊達に対抗意識を燃やしているレイチェルにカイは不思議そう。
どうして?わからない。だって、気がついた時には既に姉との間に彼らはいて、大好きな姉を独占できなくなっていた。
「精霊達との仲は良好そうだから、そう言う意味では心配しないけれど。あまりムキになると、心が壊れないかは心配だよ。」
カイは本当に心配そうにレイチェルの手を取る。カイの周りにもキラキラはいて、それらもカイとレイチェルの間を邪魔していると言うのに、それらに対して引き剥がさなきゃ、と思うことはない。
だって彼らはカイの危険を知らせてくれたもの。どちらかと言うと恩人に近いため、レイチェルはカイの精霊達とはいい関係を築けている気がしている。互いにカイを思う気持ちがあるもの。
だけど、姉に群がる奴らは少し違う。姉の側が心地よいからいるだけで、姉の危機に働いてくれるのかは甚だ疑問だ。
私がこれからすることは、姉を危険に晒すことかもしれない。精霊達の怒りを買ってしまうことかもしれない。最悪、姉に嫌われてしまうかもしれない。
永遠に姉が失われてしまうかもしれない。
弁明できるとするならば、私は姉を、姉の周りにいるもの全てを愛していて、危害を加える気はない、ということ。
それでも姉の周りに居続ける彼らがのうのうと、自分の利益ばかりを求め続ける悪い精霊達ではない、と証明したいのも事実。
私は姉の周りにいるキラキラ達に、戦線布告を言い渡す。
カイは半ば呆れ顔でレイチェルを見ているが、最後には気の済むまでやれば、と見送ってくれた。
姉を守るのは、いつも自分でありたい。私は精霊王の力を借りて、彼らを鍛えるつもりだった。
結局は私の惨敗だった。姉は楽しそうにレイチェルの成長を喜んでくれたがそれだけだ。
彼らはレイチェルの攻撃を避けながら姉を守り、レイチェルに挑発までしてみせた。
レイチェルが本気でサマンサを傷つける気などないのだから、当然だが、精霊達はレイチェルの予想に反してしっかりとサマンサを守り続けた。サマンサは突然のレイチェルの乱心に何故かニコニコしていただけで、奇襲も見破られていたのかもしれない。
一世一代の謀もぐだぐだになってしまったものの、レイチェルは満足していた。
白の精霊達の弱点がわかったからだ。
姉より何より、クッキーを破壊された時が、彼らの隊列が乱れたのをしっかりとその目に焼き付ける。
食べ物の恨みは精霊にも有効だった。
「レイチェル、お茶にしましょう。」
既に彼らが群がるクッキーを手に取ると、彼らと一緒に味わう。満面に笑みが広がるのを、互いに確認する。
「後で私にも付き合ってちょうだい。」
サマンサはレイチェルの身のこなしに感化されたのか、護身術を習いたいと言い出した。
余計な虫がつかないようにそれは却下したのだが、どうしても諦めきれないようだ。
サマンサは守られてばかりは嫌なんだそうだ。とはいえ、精霊の愛し子であるサマンサが襲われる事態なんて、想像もできない。レイチェルと愛を確認し合うほどの重い愛を抱えた白の精霊達がサマンサを傷つけるものをたとえ一瞬でも近づかせることはあり得ないと思うのだけれど。
「多分そんな状況にはならないと思うわ。だって、姉が眩しかったなら、私が気がつくでしょう?私と精霊達が絶対に傷ひとつつけさせないわよ。」
姉は一瞬、不満そうに口を尖らせたが、すぐに諦めた顔になった。
「そうよね。貴女達に任せるわ。私は貴女達のことも守りたいと思うけれど守り方は一つではないものね。」
サマンサに比べてレイチェルの評判は今も昔もあまりいいものではない。姉以外に興味のなかったレイチェルには、したこともない武勇伝が付き纏う。
ここに、今度は姉に突然攻撃を仕掛けた、と言うものが入ってくるのだろう。
どう言う経緯であれ、それがこの侯爵家や姉を守るのならばそれで良い。レイチェルに必要なものは既に揃っている。
大好きな姉と家族、愛するもの達、それ以外は有象無象。自分と大切な人達があいればそれでいい。
終わり
最後の締めを悩みに悩んでしまい、間が空いてしまいました。こんな終わりですみません。読んでいただきありがとうございました。
mios
精霊達に対抗意識を燃やしているレイチェルにカイは不思議そう。
どうして?わからない。だって、気がついた時には既に姉との間に彼らはいて、大好きな姉を独占できなくなっていた。
「精霊達との仲は良好そうだから、そう言う意味では心配しないけれど。あまりムキになると、心が壊れないかは心配だよ。」
カイは本当に心配そうにレイチェルの手を取る。カイの周りにもキラキラはいて、それらもカイとレイチェルの間を邪魔していると言うのに、それらに対して引き剥がさなきゃ、と思うことはない。
だって彼らはカイの危険を知らせてくれたもの。どちらかと言うと恩人に近いため、レイチェルはカイの精霊達とはいい関係を築けている気がしている。互いにカイを思う気持ちがあるもの。
だけど、姉に群がる奴らは少し違う。姉の側が心地よいからいるだけで、姉の危機に働いてくれるのかは甚だ疑問だ。
私がこれからすることは、姉を危険に晒すことかもしれない。精霊達の怒りを買ってしまうことかもしれない。最悪、姉に嫌われてしまうかもしれない。
永遠に姉が失われてしまうかもしれない。
弁明できるとするならば、私は姉を、姉の周りにいるもの全てを愛していて、危害を加える気はない、ということ。
それでも姉の周りに居続ける彼らがのうのうと、自分の利益ばかりを求め続ける悪い精霊達ではない、と証明したいのも事実。
私は姉の周りにいるキラキラ達に、戦線布告を言い渡す。
カイは半ば呆れ顔でレイチェルを見ているが、最後には気の済むまでやれば、と見送ってくれた。
姉を守るのは、いつも自分でありたい。私は精霊王の力を借りて、彼らを鍛えるつもりだった。
結局は私の惨敗だった。姉は楽しそうにレイチェルの成長を喜んでくれたがそれだけだ。
彼らはレイチェルの攻撃を避けながら姉を守り、レイチェルに挑発までしてみせた。
レイチェルが本気でサマンサを傷つける気などないのだから、当然だが、精霊達はレイチェルの予想に反してしっかりとサマンサを守り続けた。サマンサは突然のレイチェルの乱心に何故かニコニコしていただけで、奇襲も見破られていたのかもしれない。
一世一代の謀もぐだぐだになってしまったものの、レイチェルは満足していた。
白の精霊達の弱点がわかったからだ。
姉より何より、クッキーを破壊された時が、彼らの隊列が乱れたのをしっかりとその目に焼き付ける。
食べ物の恨みは精霊にも有効だった。
「レイチェル、お茶にしましょう。」
既に彼らが群がるクッキーを手に取ると、彼らと一緒に味わう。満面に笑みが広がるのを、互いに確認する。
「後で私にも付き合ってちょうだい。」
サマンサはレイチェルの身のこなしに感化されたのか、護身術を習いたいと言い出した。
余計な虫がつかないようにそれは却下したのだが、どうしても諦めきれないようだ。
サマンサは守られてばかりは嫌なんだそうだ。とはいえ、精霊の愛し子であるサマンサが襲われる事態なんて、想像もできない。レイチェルと愛を確認し合うほどの重い愛を抱えた白の精霊達がサマンサを傷つけるものをたとえ一瞬でも近づかせることはあり得ないと思うのだけれど。
「多分そんな状況にはならないと思うわ。だって、姉が眩しかったなら、私が気がつくでしょう?私と精霊達が絶対に傷ひとつつけさせないわよ。」
姉は一瞬、不満そうに口を尖らせたが、すぐに諦めた顔になった。
「そうよね。貴女達に任せるわ。私は貴女達のことも守りたいと思うけれど守り方は一つではないものね。」
サマンサに比べてレイチェルの評判は今も昔もあまりいいものではない。姉以外に興味のなかったレイチェルには、したこともない武勇伝が付き纏う。
ここに、今度は姉に突然攻撃を仕掛けた、と言うものが入ってくるのだろう。
どう言う経緯であれ、それがこの侯爵家や姉を守るのならばそれで良い。レイチェルに必要なものは既に揃っている。
大好きな姉と家族、愛するもの達、それ以外は有象無象。自分と大切な人達があいればそれでいい。
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最後の締めを悩みに悩んでしまい、間が空いてしまいました。こんな終わりですみません。読んでいただきありがとうございました。
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