だって姉が眩しかったから

mios

文字の大きさ
上 下
24 / 28

だって私も眩しくて

しおりを挟む
どこかに行ってしまった皇女のことは、何の混乱も生まなかった。監視人が、彼女を逃してしまったと証言した為だ。彼女は自分の意思で逃げたと言ったことで、それ以上の追跡をなされなかった。

どこかに逃げ延びて、悪事を企んでいたりしたらどうするつもりだ、と穿ってはみたが、精霊王が彼女にした行為なのだから、そんなことになるはずも無い。

それに精霊達からは「大丈夫。二度と悪事ができないように皆で見張っているから。」という声がする。

「精霊王様の部屋にいるの。」
「夢の中にいるの。」
「もう出てこられないよ。」
「あるべき場所に戻ったんだ。」
「精霊王様の部屋には勝手に入れない。」
「悪いことしたら閉じ込められるの。皆が忘れてしまうまで。」

思い思いに話すから、聞き取れる声と聞き取れない声が混ざる。若干、聞き取りたくない物騒な言葉も聞こえた気はするが、気にしないでおこう。

詳しいことはわからないけれど、精霊王の監視下にいるのなら、カイも特に被害はないでしょう。

ヨシュアが、カイのことは皇女が勝手に入れ上げていただけだと、説明したらしく、皇女の家族には隠してくれるらしい。

「あんな化け物が出る家だから、見た目が普通でも同じような性質の人間がいるかもしれない。突然変異と思いたいけれど。」

確かに、彼女と近い、親やその兄弟姉妹ならああまで邪悪ではなくとも近い思考の者はいてもおかしくはない。

「どちらにしても、愛し子であるほぼ全ての人間が、精霊の守りを得た今、愛し子に危害を加える命知らずなど、いないと思うわ。」

レイチェルの尊敬するサマンサ及びリリアンヌが言うのだから、それは事実だろう。


皇女がいない学園に戻った二人は、特に何の支障もないままに、学生生活を楽しんでいる。レイチェルはしばらく発光体の自分を楽しんだ。

皇女と入れ替わりに現れた女性は、ヨシュアと共に隣国へ帰るのかと思われたが、隣国は危ないので当分の間は此方でのんびりするらしい。

彼女は、レベッカに、「こんな娘が欲しかった。」と言われるほどに、優しい人だった。

多少記憶は曖昧ではあるものの、これから少しずつ元の自分を取り戻して行って貰いたい。

皇女に、辟易していた皆は喜び、拍子抜けするほどあっさりと彼女を受け入れた。

レイチェルとカイも、それからは幸せに暮らした。面倒があるとすれば、やたらと精霊に話しかけられることぐらい。

彼らの話を聞いていると、人間との会話ができなくなるし、何なら無視しているように見られるらしい。ただでさえ、リシート侯爵家は、怖がられていて距離を置かれている。

レイチェルはその原因が昔の自分にあるとは思っても見ないが。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

モブで可哀相? いえ、幸せです!

みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。 “あんたはモブで可哀相”。 お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?

【完結】私の結婚支度金で借金を支払うそうですけど…?

まりぃべる
ファンタジー
私の両親は典型的貴族。見栄っ張り。 うちは伯爵領を賜っているけれど、借金がたまりにたまって…。その日暮らしていけるのが不思議な位。 私、マーガレットは、今年16歳。 この度、結婚の申し込みが舞い込みました。 私の結婚支度金でたまった借金を返すってウキウキしながら言うけれど…。 支度、はしなくてよろしいのでしょうか。 ☆世界観は、小説の中での世界観となっています。現実とは違う所もありますので、よろしくお願いします。

今度こそ幸せになります! 小話集

斎木リコ
ファンタジー
『今度こそ幸せになります!』の小話集です。

婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました

ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。 王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。 しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?

白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。 「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」 精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。 それでも生きるしかないリリアは決心する。 誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう! それなのに―…… 「麗しき私の乙女よ」 すっごい美形…。えっ精霊王!? どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!? 森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。

愚かな者たちは国を滅ぼす【完結】

春の小径
ファンタジー
婚約破棄から始まる国の崩壊 『知らなかったから許される』なんて思わないでください。 それ自体、罪ですよ。 ⭐︎他社でも公開します

【 完 結 】スキル無しで婚約破棄されたけれど、実は特殊スキル持ちですから!

しずもり
ファンタジー
この国オーガスタの国民は6歳になると女神様からスキルを授かる。 けれど、第一王子レオンハルト殿下の婚約者であるマリエッタ・ルーデンブルグ公爵令嬢は『スキル無し』判定を受けたと言われ、第一王子の婚約者という妬みや僻みもあり嘲笑されている。 そしてある理由で第一王子から蔑ろにされている事も令嬢たちから見下される原因にもなっていた。 そして王家主催の夜会で事は起こった。 第一王子が『スキル無し』を理由に婚約破棄を婚約者に言い渡したのだ。 そして彼は8歳の頃に出会い、学園で再会したという初恋の人ルナティアと婚約するのだと宣言した。 しかし『スキル無し』の筈のマリエッタは本当はスキル持ちであり、実は彼女のスキルは、、、、。 全12話 ご都合主義のゆるゆる設定です。 言葉遣いや言葉は現代風の部分もあります。 登場人物へのざまぁはほぼ無いです。 魔法、スキルの内容については独自設定になっています。 誤字脱字、言葉間違いなどあると思います。見つかり次第、修正していますがご容赦下さいませ。

処理中です...