だって姉が眩しかったから

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だって私も眩しくて

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どこかに行ってしまった皇女のことは、何の混乱も生まなかった。監視人が、彼女を逃してしまったと証言した為だ。彼女は自分の意思で逃げたと言ったことで、それ以上の追跡をなされなかった。

どこかに逃げ延びて、悪事を企んでいたりしたらどうするつもりだ、と穿ってはみたが、精霊王が彼女にした行為なのだから、そんなことになるはずも無い。

それに精霊達からは「大丈夫。二度と悪事ができないように皆で見張っているから。」という声がする。

「精霊王様の部屋にいるの。」
「夢の中にいるの。」
「もう出てこられないよ。」
「あるべき場所に戻ったんだ。」
「精霊王様の部屋には勝手に入れない。」
「悪いことしたら閉じ込められるの。皆が忘れてしまうまで。」

思い思いに話すから、聞き取れる声と聞き取れない声が混ざる。若干、聞き取りたくない物騒な言葉も聞こえた気はするが、気にしないでおこう。

詳しいことはわからないけれど、精霊王の監視下にいるのなら、カイも特に被害はないでしょう。

ヨシュアが、カイのことは皇女が勝手に入れ上げていただけだと、説明したらしく、皇女の家族には隠してくれるらしい。

「あんな化け物が出る家だから、見た目が普通でも同じような性質の人間がいるかもしれない。突然変異と思いたいけれど。」

確かに、彼女と近い、親やその兄弟姉妹ならああまで邪悪ではなくとも近い思考の者はいてもおかしくはない。

「どちらにしても、愛し子であるほぼ全ての人間が、精霊の守りを得た今、愛し子に危害を加える命知らずなど、いないと思うわ。」

レイチェルの尊敬するサマンサ及びリリアンヌが言うのだから、それは事実だろう。


皇女がいない学園に戻った二人は、特に何の支障もないままに、学生生活を楽しんでいる。レイチェルはしばらく発光体の自分を楽しんだ。

皇女と入れ替わりに現れた女性は、ヨシュアと共に隣国へ帰るのかと思われたが、隣国は危ないので当分の間は此方でのんびりするらしい。

彼女は、レベッカに、「こんな娘が欲しかった。」と言われるほどに、優しい人だった。

多少記憶は曖昧ではあるものの、これから少しずつ元の自分を取り戻して行って貰いたい。

皇女に、辟易していた皆は喜び、拍子抜けするほどあっさりと彼女を受け入れた。

レイチェルとカイも、それからは幸せに暮らした。面倒があるとすれば、やたらと精霊に話しかけられることぐらい。

彼らの話を聞いていると、人間との会話ができなくなるし、何なら無視しているように見られるらしい。ただでさえ、リシート侯爵家は、怖がられていて距離を置かれている。

レイチェルはその原因が昔の自分にあるとは思っても見ないが。
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