だって姉が眩しかったから

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だって精霊王が眩しくて

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精霊王は自らを光らせることにしたらしい。今まで姉のキラキラを見慣れている身としては自分が発光体になるなんて、信じ難いことだと思う。

眩しいどころの騒ぎではない。精霊王は人間の目に対して配慮がなっていない。

「眩しい……」
呟きと同時に光が半減したから話は聞こえているようだ。ただし、レイチェルには何も聞こえないから、レイチェルからの一方通行なのだろう。

精霊王が光る理由は、「覚醒」が、近いと言うことらしい。

「覚醒」とは?

サマンサに読めと言われた本からの情報だと、リセットと言うものらしい。何らかの外的要因から状態異常を引き起こしている精霊達を一度リセットして、元の状態に戻すことをいうらしい。

一度「覚醒」した精霊王は、深い眠りにつくらしいけれど、その前にほぼ無敵の状態になるらしく、そこでこの世界の悪は全て滅ぼされるらしい。

前回「覚醒」したのは、もう随分と前の話で、そのことを知る人間などは勿論いない。人間の寿命など精霊達からしたら、一瞬の出来事に過ぎない。

精霊王は精霊達を纏め、導く存在だ。導く為に、はみ出した者達を淘汰する。

そこは容赦がないんだな。レイチェルは未だに精霊王の言葉は聞き取れないものの何となくやりたいことはわかってきた。

サマンサを含めた周りはレイチェルに、あのおかしな女を近づかせないようにしているが、多分無敵状態の精霊王からすれば近くに行きたいのだろう。

何とか姉やカイを説得し、近くに行くことを試みた。真っ黄色に輝く光が、彼女の隣にいる人間を照らしている。精霊には色による種別があって、黄色は才能だったかしら。カリスマとか才能だとかそう言った類の精霊だったと思う。

愛し子への愛が重いのは精霊達全てに当てはまることだけれど。精霊王は彼らに対して結界みたいなものを張った。今からすることに、巻き込みたくなかったのかもしれない。

ハッとした顔で黄色の光に囲まれていた青年がレイチェルを見る。目が合ったものの、レイチェルの意志ではないので、全くの無の表情しか浮かべられない。

彼が酷く不満げな様子だったことは理解した。ただレイチェルに出来ることはない。不満は精霊王に言ってくれ。

そうして、王は何の合図もなく「覚醒」した。

あのおかしな女はその場から消滅し、驚いたことに全くの別人がその場に現れる。レイチェルは全く仕組みがわからなかったのだが、黄色の光の青年が、新しく現れた別人に抱きついたことから、ここはレイチェルの出番ではないと悟った。

彼らがこちらの存在を思い出す前にいそいそと戻る。精霊王の力で瞬間移動すると、レイチェルの中にいた精霊王の力を感じなくなった。これは、また深い眠りについたと言うこと?

よくわからない。

「覚醒」の効果なのか何かはわからないが、レイチェルが家に帰ると、前とは違い、精霊の多くは見えるようになっていた。

ただの眩しい光だった精霊達は、皆レイチェルを見てニコニコしている。

「もしかして漸く見えるようになったの?」

サマンサの周りから離れてレイチェルに話しかけた精霊をレイチェルが掴むと、スルリと指の間を抜けて、レイチェルの握り拳に器用に座る。

「貴方は、精霊?」
「うん。虫じゃないよ。僕は、ナーヴって言うの。宜しくね。」

ナーヴはレイチェルの頬に勝手にキスをすると、サマンサの身体のようにレイチェルにも光の輪のようなものが現れる。

「眩しさを抑えることはできる?」
「それは、僕じゃなくて、君側の問題だよ。」

ダメ元で頼んだのに、此方の所為だったらしい。

「光を抑えるイメージをしたら、多分大丈夫。君は精霊王の器だから、できないことなんてないんだよ。」

ナーヴの他にもサマンサの周囲から抜け出してレイチェルにくっついた精霊はいて、彼らの全員に名を教えて貰った。名を教えると言う行為は、精霊達が自分の愛し子として、大切に守り育てると言う決意表明らしい。

「僕達、ずっと君に話しかけていたんだけど、君には聞こえていなかったからね。王様が覚醒してくれて、良かったよ。

覚醒は、精霊達と愛し子の力を最大限まで満たしてくれるんだ。そして、精霊の力を不当に使っている者は、その満たされた力によって、滅びる。力を制御できないんだね。」

ナーヴの説明により先程の不可思議な現象の意味が少しわかった。悪は滅ぼされたんだ。消えた彼女の行方はわからないけれど、精霊のしたことなら、関わらない方が身の為なのかな。
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