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だって姉の笑顔が眩しくて
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サマンサの行動力には驚いた。レイチェルが知る姉は、穏やかなおっとりした性格のままだったから。いつの間にこんなしっかりした人間に……と。姉曰く、やはりあの女性はどこかおかしい人だったらしい。
カイが言うにはあの自称妹はカイについていた青い光が見えていたらしく、彼女も精霊の愛し子であると判明した。
「でも、あんな邪悪で、愛し子っておかしくない?」
「いや、精霊にもいろいろいるから。要は彼女の周りにいる精霊と、彼女の質が似ていれば彼女に力を貸すし、違うなら近くには来ないだけだ。見える、見えないはまた別なんだろう。」
カイの説明は、前に読んだ本にそういえば書いてあった。愛し子かどうかは生まれた時に決まっているから、邪悪に育った場合でも愛し子である事実は変わらない。愛し子は生まれてから死ぬまで変わらず愛し子だ。
愛し子がその能力を失うとしたら、それは能力を使って人に危害を加えようとした時、だったか。要は精霊の力に頼らないのであれば、どれだけ悪いことをしても愛し子のままでいられる、ということだ。
そんな馬鹿な。うん、私もそう思った。
けれど、この世界ではそれが普通なんだ。精霊の愛し子をチヤホヤすることで、悪いことなんて考えもしないだろう、と皆が思うらしい。
そんな馬鹿な。うん、二度目だ。
「精霊様は心が広いのね。」
サマンサは呆れ顔だが、多分違う。精霊様は自分と関わりがないことに対してどうでも良いのだろうと思われる。
「とりあえずうちで出来ることは終わったから全てが終わるまでお休みすれば良いわ。ま、勉強は家でも出来るしね。」
サマンサは自分が使った教材を全て持って帰ってきたらしく、二人の目の前にバサッと積み上げる。四年間の教材だから、物凄い量あるが。
「学園に寄付してこなかったの?」
「うーん、厄介な人が来るって聞いていたから、こんなことがあるかと思ってね。念の為よ。こちらのせいではないのに、勉強が遅れるなんて、嫌でしょう?」
姉の笑顔に何故か黒い影が見えるのは何故だろう。いつも姉についている白い光はそのままなのに、黒い影が見える。もしかして、相当怒ってる?
「本当にうちの大事な妹とカイになんてことをするのかしら。カイ、例え彼女が貴方の本当の妹だったとしても、私は手加減するつもりはないわ。いいかしら。」
「はい。私の家族は、リシート侯爵家と、育った孤児院だけですので、完膚なきまでにしていただければ、結構です。」
「精霊王の力って、精霊を捕まえる以外に何があるのかしら。相手に害を与えるのではなくて、自衛ぐらいなら私にも出来ることがあるかもしれないわ。」
「レイチェルには、そうね。この辺りかしら。」
教材の山から何冊かを拾い上げて、サマンサはレイチェルの前に本を積み上げる。
「レイチェルの力は今後大切になる筈よ。そろそろ精霊達と仲良くできる頃よ。」
サマンサの笑顔をこんなに黒くしたのは誰だろう。レイチェルは姉の友人達を思い浮かべ、喜ぶべきか、悲しむべきか迷った。
カイが言うにはあの自称妹はカイについていた青い光が見えていたらしく、彼女も精霊の愛し子であると判明した。
「でも、あんな邪悪で、愛し子っておかしくない?」
「いや、精霊にもいろいろいるから。要は彼女の周りにいる精霊と、彼女の質が似ていれば彼女に力を貸すし、違うなら近くには来ないだけだ。見える、見えないはまた別なんだろう。」
カイの説明は、前に読んだ本にそういえば書いてあった。愛し子かどうかは生まれた時に決まっているから、邪悪に育った場合でも愛し子である事実は変わらない。愛し子は生まれてから死ぬまで変わらず愛し子だ。
愛し子がその能力を失うとしたら、それは能力を使って人に危害を加えようとした時、だったか。要は精霊の力に頼らないのであれば、どれだけ悪いことをしても愛し子のままでいられる、ということだ。
そんな馬鹿な。うん、私もそう思った。
けれど、この世界ではそれが普通なんだ。精霊の愛し子をチヤホヤすることで、悪いことなんて考えもしないだろう、と皆が思うらしい。
そんな馬鹿な。うん、二度目だ。
「精霊様は心が広いのね。」
サマンサは呆れ顔だが、多分違う。精霊様は自分と関わりがないことに対してどうでも良いのだろうと思われる。
「とりあえずうちで出来ることは終わったから全てが終わるまでお休みすれば良いわ。ま、勉強は家でも出来るしね。」
サマンサは自分が使った教材を全て持って帰ってきたらしく、二人の目の前にバサッと積み上げる。四年間の教材だから、物凄い量あるが。
「学園に寄付してこなかったの?」
「うーん、厄介な人が来るって聞いていたから、こんなことがあるかと思ってね。念の為よ。こちらのせいではないのに、勉強が遅れるなんて、嫌でしょう?」
姉の笑顔に何故か黒い影が見えるのは何故だろう。いつも姉についている白い光はそのままなのに、黒い影が見える。もしかして、相当怒ってる?
「本当にうちの大事な妹とカイになんてことをするのかしら。カイ、例え彼女が貴方の本当の妹だったとしても、私は手加減するつもりはないわ。いいかしら。」
「はい。私の家族は、リシート侯爵家と、育った孤児院だけですので、完膚なきまでにしていただければ、結構です。」
「精霊王の力って、精霊を捕まえる以外に何があるのかしら。相手に害を与えるのではなくて、自衛ぐらいなら私にも出来ることがあるかもしれないわ。」
「レイチェルには、そうね。この辺りかしら。」
教材の山から何冊かを拾い上げて、サマンサはレイチェルの前に本を積み上げる。
「レイチェルの力は今後大切になる筈よ。そろそろ精霊達と仲良くできる頃よ。」
サマンサの笑顔をこんなに黒くしたのは誰だろう。レイチェルは姉の友人達を思い浮かべ、喜ぶべきか、悲しむべきか迷った。
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