だって姉が眩しかったから

mios

文字の大きさ
上 下
17 / 28

だって青い光が眩しくて

しおりを挟む
レイチェルには精霊王の加護が備わっている。それを今まで深く実感したことはない。けれど、カイの光が危険を知らせるのをどれだけ遠く離れた場所からでも認識できるのは、その加護のおかげに違いなかった。

カイの妹だと言う彼女には影のような黒い気配はなかった。精霊の仕業ではないのかもしれない。何も邪悪=黒の精霊と決めつけなくとも、ほかにも邪悪なものはいくらでもいる。例えば悪霊やら悪魔やら。それらの存在を感じたことはなくても、何となくいるのだろうな、と思うことはある。後は、人間の元からある悪意。これが一番厄介だ。

生きている人間は簡単に嘘をつく。怒っていないふりをして憎悪をその身に秘めていたり、穏やかなふりをして、人を痛めつけるのに快感を覚えていたり。レイチェルは家の外へ一歩出ると、そんな悪いものに晒されることを知った。

レイチェルにある程度自我が目覚めるまではその悪意に晒されなかったのも、加護のおかげなのかもしれない。

精霊王とやらは、レイチェルをどうするつもりで、力を授けたのだろう。

青い光は激しく点滅を繰り返しながら移動している。人が一人で移動するには早すぎることから、何かに乗せられて移動しているのだと推測できる。

精霊王は、ひとっ飛び、なんてできるのかしら、なんて思ったら、気づけばカイが見える位置まで飛ばされていた。

いきなりの瞬間移動で立ちくらみがする。そりゃ、酔うわね。カイの自称妹は、すぐにカイをどうこうする気はないみたい。彼女の場合、身近にいるものを傷つけて楽しむタイプみたいだ。

もうカイは他人なのだから、放っておいてほしいのに。

精霊達の悪さなら、精霊王は強いのだけど、人間の悪意には影響があるのかは、わからない。

彼女達はカイを汚い部屋に放置すると、鍵をかけて去っていく。部屋に精霊の力を弱める道具が置いてあることから、カイが愛し子であることを彼女達は知っているのだ。この程度の道具はあってないようなものだが。

知っていて、これか。

この世界において、精霊を怒らせることの意味を知らないなんて残念だな。

多分、本当なら彼女達の後ろにいるであろう黒幕を、引っ張りだしたり、根回しをする方が良いのだろう。でも、レイチェルはカイを今すぐに助けたくて、動く。思い知れば良い。

精霊の、精霊王の力を。

カイの元へまた瞬間移動したせいで、世界が回る。レイチェルを抱き止めたのは弱りきっている筈のカイだった。

「何だか、元気そうね。」
「うん、一瞬立ちくらみがしたけれど、すぐに意識は戻ったんだ。奴らを刺激しないように少し演技はしたけど。あいつら、何も気づかなかった。」
「じゃ、逃げられるわね。」
「ああ、大丈夫。レイチェルこそ、大丈夫なのか?」
「私は移動が気持ち悪いだけ。酔うから。大したことじゃないわ。」
「待って。こっちへ来て。」

カイに言われて近くによると、顔を手で挟まれておでこを合わされる。合わさったおでこから、何かがレイチェルの中に入ってきた。

「何?」
「少しマシになってない?酔い止めのおまじない、だよ。」

確かにさっきまでの気持ち悪さが嘘のようだ。

「ありがとう。びっくりしたわ、突然。」

レイチェルはカイの力というより、まつ毛の長さに驚いていた。あまりに近すぎると、どうでもよいことばかりに目がいってしまう。

「じゃ、行くわよ。」

私達は精霊王の考える一番危険度が少ない場所に飛ばされた。

「あら、レイチェル、カイも。どうしたの?」

勿論、姉のいる我が家に。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

女神様の使い、5歳からやってます

めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。 「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」 女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに? 優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕! 基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。 戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。

モブで可哀相? いえ、幸せです!

みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。 “あんたはモブで可哀相”。 お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?

【完結】私の結婚支度金で借金を支払うそうですけど…?

まりぃべる
ファンタジー
私の両親は典型的貴族。見栄っ張り。 うちは伯爵領を賜っているけれど、借金がたまりにたまって…。その日暮らしていけるのが不思議な位。 私、マーガレットは、今年16歳。 この度、結婚の申し込みが舞い込みました。 私の結婚支度金でたまった借金を返すってウキウキしながら言うけれど…。 支度、はしなくてよろしいのでしょうか。 ☆世界観は、小説の中での世界観となっています。現実とは違う所もありますので、よろしくお願いします。

今度こそ幸せになります! 小話集

斎木リコ
ファンタジー
『今度こそ幸せになります!』の小話集です。

貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!~

みちのあかり
ファンタジー
同じゼミに通う王子から、ありえないプロポーズを受ける貧乏奨学生のレイシア。 何でこんなことに? レイシアは今までの生き方を振り返り始めた。 第一部(領地でスローライフ) 5歳の誕生日。お父様とお母様にお祝いされ、教会で祝福を受ける。教会で孤児と一緒に勉強をはじめるレイシアは、その才能が開花し非常に優秀に育っていく。お母様が里帰り出産。生まれてくる弟のために、料理やメイド仕事を覚えようと必死に頑張るレイシア。 お母様も戻り、家族で幸せな生活を送るレイシア。 しかし、未曽有の災害が起こり、領地は借金を負うことに。 貧乏でも明るく生きるレイシアの、ハートフルコメディ。 第二部(学園無双) 貧乏なため、奨学生として貴族が通う学園に入学したレイシア。 貴族としての進学は奨学生では無理? 平民に落ちても生きていけるコースを選ぶ。 だが、様々な思惑により貴族のコースも受けなければいけないレイシア。お金持ちの貴族の女子には嫌われ相手にされない。 そんなことは気にもせず、お金儲け、特許取得を目指すレイシア。 ところが、いきなり王子からプロポーズを受け・・・ 学園無双の痛快コメディ カクヨムで240万PV頂いています。

婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました

ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。 王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。 しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。

土属性を極めて辺境を開拓します~愛する嫁と超速スローライフ~

にゃーにゃ
ファンタジー
「土属性だから追放だ!」理不尽な理由で追放されるも「はいはい。おっけー」主人公は特にパーティーに恨みも、未練もなく、世界が危機的な状況、というわけでもなかったので、ササッと王都を去り、辺境の地にたどり着く。 「助けなきゃ!」そんな感じで、世界樹の少女を襲っていた四天王の一人を瞬殺。 少女にほれられて、即座に結婚する。「ここを開拓してスローライフでもしてみようか」 主人公は土属性パワーで一瞬で辺境を開拓。ついでに魔王を超える存在を土属性で作ったゴーレムの物量で圧殺。 主人公は、世界樹の少女が生成したタネを、育てたり、のんびりしながら辺境で平和にすごす。そんな主人公のもとに、ドワーフ、魚人、雪女、魔王四天王、魔王、といった亜人のなかでも一際キワモノの種族が次から次へと集まり、彼らがもたらす特産品によってドンドン村は発展し豊かに、にぎやかになっていく。

庭園の国の召喚師

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 おばあちゃんが先日亡くなった。そのおばあちゃんの言いつけで男として過ごしていたリーフは、魔術師の国ラパラル王国の王都グラディナで、男性として魔術師証を取得。金欠でお金に困り、急募・男性の方に飛びついた。  驚く事に雇い主は、リーフが知っている騎士のアージェという男だった!  だが男としての接触だった為、彼は気づかない。そして、引き受けた仕事により、魔獣騒ぎに巻き込まれ――。

処理中です...