だって姉が眩しかったから

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だってお嬢様が眩しくて  カイ視点

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身体の不調は、あの神官の言った通り、レイチェルの側にいたら良くなっていった。頻繁に来ては、必ずカイを見つけていたあの女は、少しずつカイの周りにいた精霊の気を吸っていたのだろうか。厳密にはあの女に纏わりついている精霊だが。

カイの周りの光が青から白に変わり切った時、レイチェルは茶会デビューの年を迎えた。姉のサマンサは、今年から学園というところに通うため家を出て寮に入ったため、レイチェルの悲壮感は凄かった。全寮制の学園なのだから、仕方がない。しかも、サマンサは後継者としてのコースを選択したから他のコースより一年長い四年制だ。四歳差のレイチェルは、姉が帰ってくるのと、入れ替わりで寮に入るため、実質七年間は一緒に住めず、そのことに気づいたレイチェルは発狂していた。

「年に三回ある長期休暇には必ず帰るから気を落とさないで。手紙も書くようにするから。レイチェルも色んなこと、手紙に書いて送ってね?」

寮に入る前に、サマンサは大量のレターセットをレイチェルに渡していたのだが、毎日何十枚も書こうとするので、止めるのに苦労した。

「お嬢様、いくらなんでも気持ち悪いです。クロード様みたいですよ。」

サマンサの婚約者決めの時の公爵令息の姿がよほど衝撃的だったのか、クロードの名を出すと、気持ち悪さを自覚できるようになったようだ。

結局、サマンサの婚約者はジュリアン・フプスに決まった。クロード・グルマイトの敬愛するリリアンヌお姉様が、サマンサを困らせてはならぬ、と仰せになり、クロードに新しい縁談を持ってきたからだ。

侯爵家からは断りにくかったため、ありがたく彼からの辞退を受け入れた。

ジュリアンとサマンサは順調に愛を育んでいるように思う。ジュリアンも四年コースに通う。彼はいつも二人の時間を邪魔するレイチェルがいない学園生活に喜んでいるらしく、既に婚約者同士の仲は熱々だと言う。

カイには、レイチェル以上に鈍く見えるサマンサが相手で、大丈夫かと思うがしっかり者のジュリアンには理想の女性らしい。

精霊については、レイチェルと同じように古語を学んだ後、同じ本を読んで勉強した。

姉に褒められたくて、勉強を頑張るレイチェルと、レイチェルに褒められたくて、頑張って彼女よりも進みたいと思う自分は似ていると思う。

レイチェルが学園に入ってしまうと、カイは仕事を失ってしまう。平民の自分は学園に入れないし、そもそも男性だから、女性の寮に入れない。彼女の侍従としてできることがなければ、カイがこの場所に居座ることはできない。

レイチェルが学園に通うようになるまでは全力で働こうと決意した日、侯爵夫妻から声をかけられた。

「カイ、貴方突然だけど、子爵家の子になる気はない?」

本当に突然のことに戸惑っていると、侯爵から本当に言いにくそうに話があった。

「レイチェルの側にずっといる気はないかな。君達は仲が良いみたいだから、娘を頼みたいと思うのだが。」
「それは、どういうことでしょうか。私は侍従として、ずっと側にいるつもりでありますが。」
「侍従として、だけではなく、レイチェルの一番の理解者になってほしいのよ。今の立場では、ちょっと難しいから、一旦分家の子爵家に入ってもらいたいの。」
「どういうことですか?」

「レイチェルの婚約者になって貰えない?」

「……は?」



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