だって姉が眩しかったから

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だって姉の婚約者が眩しくて

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姉にたくさんの釣書なるものが届き始めたのは、あの忌々しい王子が婚約者を決めた直後のことだった。王宮で行われた茶会は王子の婚約者を決める催しで第二王子のルシ…ルセ…ルなんちゃらが姉を未だに諦められなかったらしいが、王妃の再三の説得により遂に観念した。

サマンサに害がなければどうでもいいので相手までは知らないが是非とも彼らの手綱を握っていてほしい。

姉に届いた釣書の中には同年代の子供もいれば、少し年上もいれば、親子ほど歳の離れたものもいる。それらはまず両親によって振り分けられ、この時点で既に一桁になっているのだが、レイチェルの元に送られる。レイチェルの、と言うよりはレイチェルに付いている精霊王の加護の力やサマンサの周りにいる精霊様達の目を頼りにしているのだが、レイチェルには両親に頼られているような感じがして楽しかった。そうして選ばれたのがサマンサの友人のリリアンヌ様の弟、クロード・グルマイト公爵令息と、精霊様の一番人気で、まだ子供でありながら王立学園で教師をしていたこともある同じ歳のジュリアン・フプス侯爵令息の二人だった。

ジュリアンも、クロードも、姉に一度会っているらしく、どちらも一目惚れだと言う。

ただクロード・グルマイトは姉リリアンヌにはあまり似ておらず、貴族特有の何を考えているかよくわからない感じが漂っており、確かにあまり可愛いと形容される感じではない。

対してジュリアンは賢そうな見た目と経歴なのに、知らないことには目を輝かせ、多分天性の人誑しなのか、とても厳つい見た目なのに、可愛いと言う言葉がしっくりくるような人だった。

勿論レイチェルも兄になるなら、ジュリアンが良いなと思っていた。

リリアンヌ様は、クロード様の縁談は断っても良いとサマンサに告げたらしい。

「私が貴女のことを楽しそうに話したから好奇心が湧いてしまったのかもしれないわ。ごめんなさいね。弟は、悪い人ではない、とは言い切れないわ。良くも悪くも貴族的な子なのよ。公爵家の中にあってもアレに権力は持たせてはいないのだけど、社交界では別よね。何か弟関連で嫌なことがあれば、私に言って頂戴。サマンサが義妹になれば嬉しいけれど、不幸にしたくないから。」

精霊様は残酷なまでに顕著で、ジュリアンが来た時は周りを好き勝手に飛び回るのに、クロードが来た時はサマンサにくっついたまま離れない。かと言ってこの前の時のように光がパワーダウンして嫌がっていたりはしないので、彼に悪い何かがある、とかではないみたい。

クロードの年齢はサマンサと、レイチェルのちょうど中間で、だから、両親としては相手はレイチェルでも良いかも、とレイチェルを同席させていたが、見事に奴はレイチェルを視界に入れなかった。

レイチェルはクロードに対して密かに思っていたことがあった。折角のサマンサとの会話で彼は見事に、全て姉リリアンヌ様の話題で持ち切ったのだった。

「何か同じ匂いがする……」
そう呟いたのは母だったか、レイチェルだったか。

自分以外の姉大好き人間を側から見ると随分気持ち悪いと、レイチェルが知った瞬間だった。
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