だって姉が眩しかったから

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精霊の愛し子① ユリア視点

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精霊の愛し子なんて、自分しかいないと思ってた。だって物語とかではそうじゃない?小さい頃読んでいた絵本にも、精霊の愛し子は特別な存在だって書いてあるのに。

私はこの春、学園を卒業した。王子との恋やら高位貴族との恋愛、特別扱いなども特になく。同じ時期に王子がいなかったのが一番の理由だけど、高位貴族は数人いるわけで、婚約者がいようがいまいが私みたいな可愛い精霊の愛し子に声をかけて貰ったら、何もかも投げ捨てて、虜になるべきじゃない?

精霊の愛し子だから、精霊様の願い通りに動いたって言うのに、付いたあだ名は「少しおかしな子」だった。

神殿の前を通ると、精霊様は嫌がるから、あまり神殿の近くには行かなくなった。

「本当に愛し子なら、神殿に言って、精霊様の種類をはっきりさせたら。」

自分達は見も聞きもできないくせに上から目線で話す彼らにうんざりする。でも神殿だって無料ではないし、精霊様が嫌がるのだから仕方ないじゃない。

学園を卒業するまで、どこかの高位貴族と恋に落ちる気でいたから、就職なんてする気はなかった。侍女養成コースなんて受けても侍女になれば、屋敷の主人のお手付きになるかもしれない、と思っていたから、居ただけだし、勉強なんて特にはしていない。

見るに見かねて、侯爵家の侍女の面接を母が持って来た時も、侯爵に気に入られれば愛人として可愛がって貰えるかもしれないと思ったぐらいだ。リシート侯爵は二人の子持ちと思えないぐらい美しい妻がいる。元は下位貴族の妻だというから、ユリアと似たタイプかもしれない。それなら、若い方が良いと、判断してくれるかもしれない。

結果は散々だった。いつもならいろんなことを先回りして教えてくれる精霊様は一番小さいご令嬢を見るなり怯えて小さくなっているし、別の精霊様はそのご令嬢の隣にいた姉?らしき美少女に夢中になっているし、混乱して泣いてしまった私は悪くない。

侯爵は特に私を慰めては下さらなかったのは、夫人に遠慮しているから、ということは分かっている。ああ、やっぱり使用人として出会うのは悪手だったみたい。

侯爵家の面接を終えてから、精霊様が孤児院に行きたいと言い出した。

「もう、さっきは助けてくれなかったくせに何ですか。」

私はどうにか彼ら精霊様に話しかけようとするのだけど、話せているのかはわからない。彼らとの会話は噛み合っているかいないか判断がつきにくいからだ。

だって全く人の話を聞く気がないのだもの。

孤児院なんて行ったことないくせに、精霊様の指示通り私は少年に出会った。私と話したいのに、もじもじとしているから、気を利かせて私が彼の手を繋いであげたというのに、彼は暴れて手を振り解いたのよ!私はそんな些細なことで怒らないわ。何故かそれから体が軽くなったような気がして、孤児院に来るなんて、と暗い気持ちだったのが、晴れていくようだった。

それから何度かその少年に話しかけに行ったけれど、恥ずかしいのか隠れてしまって、見つけるのに時間がかかったりした。でも最後には必ず見つけていた。彼は精霊様のお気に入りだったから。

けれど初めて会った時ほどには彼に会っても高揚感は得られなくなっていた。綺麗な顔をしていても所詮孤児だし。彼が高位貴族に引き取られて、金持ちになる、とかなら相手をしてあげてもよかったけれど、そんなことある訳ないわよね。



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