だって姉が眩しかったから

mios

文字の大きさ
上 下
10 / 28

だって私の侍従が眩しくて

しおりを挟む
レイチェルの侍従になったカイは実は危機の中にあった。彼らは青く光ることでそれを誰かに伝えていた。それは、あの神官のいうように、レイチェルに見つけてもらう為なんだろうか。そんな一か八か会えるかどうかわからないような人に命運を託したりするだろうか。彼らはレイチェルとは違う誰かに危機を伝えたかったのではないだろうか。

そういったことを神官ではなく、帰ってから父に話した。


どうやら父も同じことを思っていたらしく、何やら考え込んでいた。

「黒の精霊様について、調べたい。」
「レイチェルにはまだ少し難しいと思うが読んでみるか?」

図書室の奥にある古い分厚い本。ページを一枚捲るだけで丁寧に扱わなければいけないとわかる本。古語で書かれているため、レイチェルには難しい。見兼ねたサマンサが勉強がてら古語をレイチェルに教えてくれるという。

父は精霊様が読む手助けをしてくれる、と期待していたようだが、助けてくれたのは姉だった。


「レイチェル、今後彼をお前の侍従につけるから彼の変化を見つけたら、教えてほしい。勿論、姉のサマンサも一緒だ。今のところこの屋敷内で精霊様が見えるのはお前だけなんだ。些細なことでも良いから。」

忙しい父の邪魔にはなりたく無いが毎日報告することを約束させられた。実はレイチェルは父に少し不満がある。

行くと必ず、お膝の上に乗せられることだ。父はいつまでもレイチェルのことを小さな赤ん坊だと認識している為、姉にはもうしないのに、やたらめったらレイチェルには構ってくるのだ。それがレイチェルにはうっとうしくてたまらない。


社交界では未だに若い女性にも人気だと噂の父だが、娘からすると、忙しいからか最近薄くおじさんの匂いを纏うようになった父に不用意に近づきたく無いと言うのが本音。

「レイチェルはずっと可愛いままでいてほしいのよ。さすがにもう少しすれば、諦めてちゃんと接するようになるわ。」
母の言葉に姉も笑顔で頷いている。

「だって匂いがキツイんだもの。」
「レイチェル、大丈夫だとは思うけれど、その匂いとやらをあの人に直接指摘するのはやめてあげて。立ち直れなくなって仕事に支障が出るから。」

可哀想だから、と言わないところが母の良いところだ。レイチェルの言い分を否定しないところも、母にも思い当たる節があるのかもしれない。

「カイには匂いはないのに、不思議ね。いつから匂いが出るようになるのかしら。」

「わからないけれど、食生活やら忙しいせいで臭くなることがあるみたいよ。」

なら、カイにはあまり忙しくさせない方が良いわね。

父への不満はさて置き、カイに目を向けると、侍従として、既に忙しそうに見える。

彼のためにも早くこの本を読めるようにならなくちゃ。気合いを入れるレイチェルに、母の心配そうな視線が刺さった。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今度こそ幸せになります! 小話集

斎木リコ
ファンタジー
『今度こそ幸せになります!』の小話集です。

モブで可哀相? いえ、幸せです!

みけの
ファンタジー
私のお姉さんは“恋愛ゲームのヒロイン”で、私はゲームの中で“モブ”だそうだ。 “あんたはモブで可哀相”。 お姉さんはそう、思ってくれているけど……私、可哀相なの?

【完結】私の結婚支度金で借金を支払うそうですけど…?

まりぃべる
ファンタジー
私の両親は典型的貴族。見栄っ張り。 うちは伯爵領を賜っているけれど、借金がたまりにたまって…。その日暮らしていけるのが不思議な位。 私、マーガレットは、今年16歳。 この度、結婚の申し込みが舞い込みました。 私の結婚支度金でたまった借金を返すってウキウキしながら言うけれど…。 支度、はしなくてよろしいのでしょうか。 ☆世界観は、小説の中での世界観となっています。現実とは違う所もありますので、よろしくお願いします。

貧乏奨学生の子爵令嬢は、特許で稼ぐ夢を見る 〜レイシアは、今日も我が道つき進む!~

みちのあかり
ファンタジー
同じゼミに通う王子から、ありえないプロポーズを受ける貧乏奨学生のレイシア。 何でこんなことに? レイシアは今までの生き方を振り返り始めた。 第一部(領地でスローライフ) 5歳の誕生日。お父様とお母様にお祝いされ、教会で祝福を受ける。教会で孤児と一緒に勉強をはじめるレイシアは、その才能が開花し非常に優秀に育っていく。お母様が里帰り出産。生まれてくる弟のために、料理やメイド仕事を覚えようと必死に頑張るレイシア。 お母様も戻り、家族で幸せな生活を送るレイシア。 しかし、未曽有の災害が起こり、領地は借金を負うことに。 貧乏でも明るく生きるレイシアの、ハートフルコメディ。 第二部(学園無双) 貧乏なため、奨学生として貴族が通う学園に入学したレイシア。 貴族としての進学は奨学生では無理? 平民に落ちても生きていけるコースを選ぶ。 だが、様々な思惑により貴族のコースも受けなければいけないレイシア。お金持ちの貴族の女子には嫌われ相手にされない。 そんなことは気にもせず、お金儲け、特許取得を目指すレイシア。 ところが、いきなり王子からプロポーズを受け・・・ 学園無双の痛快コメディ カクヨムで240万PV頂いています。

【完結】それはダメなやつと笑われましたが、どうやら最高級だったみたいです。

まりぃべる
ファンタジー
「あなたの石、屑石じゃないの!?魔力、入ってらっしゃるの?」 ええよく言われますわ…。 でもこんな見た目でも、よく働いてくれるのですわよ。 この国では、13歳になると学校へ入学する。 そして1年生は聖なる山へ登り、石場で自分にだけ煌めいたように見える石を一つ選ぶ。その石に魔力を使ってもらって生活に役立てるのだ。 ☆この国での世界観です。

没落した建築系お嬢様の優雅なスローライフ~地方でモフモフと楽しい仲間とのんびり楽しく生きます~

土偶の友
ファンタジー
優雅な貴族令嬢を目指していたクレア・フィレイア。 しかし、15歳の誕生日を前に両親から没落を宣言されてしまう。 そのショックで日本の知識を思いだし、ブラック企業で働いていた記憶からスローライフをしたいと気付いた。 両親に勧められた場所に逃げ、そこで楽しいモフモフの仲間と家を建てる。 女の子たちと出会い仲良くなって一緒に住む、のんびり緩い異世界生活。

婚約破棄を目撃したら国家運営が破綻しました

ダイスケ
ファンタジー
「もう遅い」テンプレが流行っているので書いてみました。 王子の婚約破棄と醜聞を目撃した魔術師ビギナは王国から追放されてしまいます。 しかし王国首脳陣も本人も自覚はなかったのですが、彼女は王国の国家運営を左右する存在であったのです。

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

うどん五段
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

処理中です...