9 / 28
リシート侯爵家のご令嬢②
しおりを挟む
「せ、精霊王ですか?この子が?姉ではなく?」
夫人の困惑した声に興奮冷めやらぬ神官。
「精霊王様の加護というよりは力の一部を与えられたというのか、愛し子はみなそうなんですが、その中でも触れられる、というのは一段上の加護なんです。見える、話ができる、も特別に考えられていますが、それはあくまでも人間側の話で精霊側からすれば、問答無用で触れられて、しかも怒りが湧かないというのは唯一無二の能力なんですよ。
確かにサマンサ嬢の周りも居心地が良いのでしょう。そして、それはレイチェル嬢と一緒にいることでより効果を発揮するようです。精霊達は精霊王を尊敬し、愛していますから。一緒にいて居心地が良いのでしょう。」
「レイチェルが精霊王の……」
夫人の困惑した様子は未だ続いている。
「あの、神官様、お聞きしても?」サマンサ嬢がおずおずと手を挙げる。
「どうぞ。」
「あの、妹は触れるのもそうですが、神官様と同じように精霊様が発する光が眩しくて目を開けられない、という状況にあるのですが、何とか改善することはできませんか。私が近づくと、本人は喜んでくれるのですが、直視するのが辛そうで見ていられないんです。」
「確かにサマンサ嬢についている精霊達では仕方ないでしょうね。ちょっと交渉してみましょうか。」
神官は精霊達に話しかけると、光を少し抑えてもらうようにお願いする。すると、急にパワーダウンしたように光は目に優しくなった。
「あの、娘についている精霊様が白い精霊様ということはわかったのですが、もう一人実は見て貰いたい者がおりまして。」
侯爵から一人の少年が紹介される。またこれは、綺麗な青い光が彼自身を隠すように輝いている。
「これは……」絶句した神官は少年の様子から平民であると見抜いたようだ。
「彼はうちで引き取りましょう。彼もサマンサ嬢と同じ白の精霊様の加護があります。なのに光が青いというのは、彼に危険が迫っている、ということです。レイチェル嬢と一緒にいられるならば、大丈夫でしょうが。平民の彼が侯爵家にいられるはずも無い。神殿なら、他の愛し子とも一緒ですし、変な横槍も入りません。彼を保護するのに、適している。」
侯爵には孤児の少年が何らかの加護を持っていた場合、侯爵家で侍従として雇い、レイチェルにつけようと思っていた。サマンサの白い光を眩しがっていたレイチェルだが、彼の青い光は眩しくても楽しそうだったからだ。姉が世界の中心だった妹が自分の世界を創り始めている。その傍に彼がいてくれたら、と。ただ、本人はそれが最善なんだろうか。侍従になるより、神官の方が彼は幸せになれるんじゃなかろうか。
侍従の話は少年にしていた。どういう結果であれ、レイチェル嬢の助けになるなら、と好意的な返事をもらっている。チラと、彼を見ると侯爵に力強く頷き、神官に駆け寄った。
「お声がけありがとうございます。ですが、私は侯爵家で働く方を選びます。私に迫っている危険とは何か教えていただくことはできませんか。」
「いえ、そうですか。レイチェル嬢の側にいることが一番ですので、そうであればそれが一番良いです。差し出がましいことを申しました。貴方に対する脅威というのは、黒の精霊様とのことです。黒の精霊様と言うのは、精霊になる過程でエラーが起き、精霊になり損ねた者達の総称になります。彼らは精霊様達の敵になりまして、人間によからぬことを吹き込むことで、精霊達を混乱に陥れようとする存在のことを言います。どこでかはわかりませんが、彼らに会ったことがあるのではないですか。多分何度か。思い当たることはないですか。」
「多分、わかる気がします。この前男爵家のご令嬢という方が孤児院に来たんです。彼女はひたすらぶつぶつ誰かと話していて、子ども達が近寄り難くしていました。その時、何だか暗い影みたいなのが、こちらに向かってくるような気がしたのです。」
「その男爵令嬢ってどんな人か覚えている?」
少年が特徴を挙げていくと、何故か夫人の顔をどんどんと青くなっていく。レイチェル嬢と目を合わせ、頷いている。
「その人物に心当たりがありますわ。こちらにも来ました。彼女をどうしたら良いか、知恵をお貸しください。」
夫人の困惑した声に興奮冷めやらぬ神官。
「精霊王様の加護というよりは力の一部を与えられたというのか、愛し子はみなそうなんですが、その中でも触れられる、というのは一段上の加護なんです。見える、話ができる、も特別に考えられていますが、それはあくまでも人間側の話で精霊側からすれば、問答無用で触れられて、しかも怒りが湧かないというのは唯一無二の能力なんですよ。
確かにサマンサ嬢の周りも居心地が良いのでしょう。そして、それはレイチェル嬢と一緒にいることでより効果を発揮するようです。精霊達は精霊王を尊敬し、愛していますから。一緒にいて居心地が良いのでしょう。」
「レイチェルが精霊王の……」
夫人の困惑した様子は未だ続いている。
「あの、神官様、お聞きしても?」サマンサ嬢がおずおずと手を挙げる。
「どうぞ。」
「あの、妹は触れるのもそうですが、神官様と同じように精霊様が発する光が眩しくて目を開けられない、という状況にあるのですが、何とか改善することはできませんか。私が近づくと、本人は喜んでくれるのですが、直視するのが辛そうで見ていられないんです。」
「確かにサマンサ嬢についている精霊達では仕方ないでしょうね。ちょっと交渉してみましょうか。」
神官は精霊達に話しかけると、光を少し抑えてもらうようにお願いする。すると、急にパワーダウンしたように光は目に優しくなった。
「あの、娘についている精霊様が白い精霊様ということはわかったのですが、もう一人実は見て貰いたい者がおりまして。」
侯爵から一人の少年が紹介される。またこれは、綺麗な青い光が彼自身を隠すように輝いている。
「これは……」絶句した神官は少年の様子から平民であると見抜いたようだ。
「彼はうちで引き取りましょう。彼もサマンサ嬢と同じ白の精霊様の加護があります。なのに光が青いというのは、彼に危険が迫っている、ということです。レイチェル嬢と一緒にいられるならば、大丈夫でしょうが。平民の彼が侯爵家にいられるはずも無い。神殿なら、他の愛し子とも一緒ですし、変な横槍も入りません。彼を保護するのに、適している。」
侯爵には孤児の少年が何らかの加護を持っていた場合、侯爵家で侍従として雇い、レイチェルにつけようと思っていた。サマンサの白い光を眩しがっていたレイチェルだが、彼の青い光は眩しくても楽しそうだったからだ。姉が世界の中心だった妹が自分の世界を創り始めている。その傍に彼がいてくれたら、と。ただ、本人はそれが最善なんだろうか。侍従になるより、神官の方が彼は幸せになれるんじゃなかろうか。
侍従の話は少年にしていた。どういう結果であれ、レイチェル嬢の助けになるなら、と好意的な返事をもらっている。チラと、彼を見ると侯爵に力強く頷き、神官に駆け寄った。
「お声がけありがとうございます。ですが、私は侯爵家で働く方を選びます。私に迫っている危険とは何か教えていただくことはできませんか。」
「いえ、そうですか。レイチェル嬢の側にいることが一番ですので、そうであればそれが一番良いです。差し出がましいことを申しました。貴方に対する脅威というのは、黒の精霊様とのことです。黒の精霊様と言うのは、精霊になる過程でエラーが起き、精霊になり損ねた者達の総称になります。彼らは精霊様達の敵になりまして、人間によからぬことを吹き込むことで、精霊達を混乱に陥れようとする存在のことを言います。どこでかはわかりませんが、彼らに会ったことがあるのではないですか。多分何度か。思い当たることはないですか。」
「多分、わかる気がします。この前男爵家のご令嬢という方が孤児院に来たんです。彼女はひたすらぶつぶつ誰かと話していて、子ども達が近寄り難くしていました。その時、何だか暗い影みたいなのが、こちらに向かってくるような気がしたのです。」
「その男爵令嬢ってどんな人か覚えている?」
少年が特徴を挙げていくと、何故か夫人の顔をどんどんと青くなっていく。レイチェル嬢と目を合わせ、頷いている。
「その人物に心当たりがありますわ。こちらにも来ました。彼女をどうしたら良いか、知恵をお貸しください。」
0
お気に入りに追加
101
あなたにおすすめの小説
婚約破棄に効く薬
ひろか
ファンタジー
「ルビエット! 君との婚約を破棄し、ここにいるハルーシャを新たな婚約者とする!」
婚約とは家同士の契約。
平民に心奪われたわたくしの婚約者さま。よろしいですわ。わたくしはわたくしのやり方で貴方の心を奪い返しましょう。
どうやらお前、死んだらしいぞ? ~変わり者令嬢は父親に報復する~
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「ビクティー・シークランドは、どうやら死んでしまったらしいぞ?」
「はぁ? 殿下、アンタついに頭沸いた?」
私は思わずそう言った。
だって仕方がないじゃない、普通にビックリしたんだから。
***
私、ビクティー・シークランドは少し変わった令嬢だ。
お世辞にも淑女然としているとは言えず、男が好む政治事に興味を持ってる。
だから父からも煙たがられているのは自覚があった。
しかしある日、殺されそうになった事で彼女は決める。
「必ず仕返ししてやろう」って。
そんな令嬢の人望と理性に支えられた大勝負をご覧あれ。
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
嘘つきと呼ばれた精霊使いの私
ゆるぽ
ファンタジー
私の村には精霊の愛し子がいた、私にも精霊使いとしての才能があったのに誰も信じてくれなかった。愛し子についている精霊王さえも。真実を述べたのに信じてもらえず嘘つきと呼ばれた少女が幸せになるまでの物語。
【完結】拾ったおじさんが何やら普通ではありませんでした…
三園 七詩
ファンタジー
カノンは祖母と食堂を切り盛りする普通の女の子…そんなカノンがいつものように店を閉めようとすると…物音が…そこには倒れている人が…拾った人はおじさんだった…それもかなりのイケおじだった!
次の話(グレイ視点)にて完結になります。
お読みいただきありがとうございました。
悪役令嬢は所詮悪役令嬢
白雪の雫
ファンタジー
「アネット=アンダーソン!貴女の私に対する仕打ちは到底許されるものではありません!殿下、どうかあの平民の女に頭を下げるように言って下さいませ!」
魔力に秀でているという理由で聖女に選ばれてしまったアネットは、平民であるにも関わらず公爵令嬢にして王太子殿下の婚約者である自分を階段から突き落とそうとしただの、冬の池に突き落として凍死させようとしただの、魔物を操って殺そうとしただの──・・・。
リリスが言っている事は全て彼女達による自作自演だ。というより、ゲームの中でリリスがヒロインであるアネットに対して行っていた所業である。
愛しいリリスに縋られたものだから男としての株を上げたい王太子は、アネットが無実だと分かった上で彼女を断罪しようとするのだが、そこに父親である国王と教皇、そして聖女の夫がやって来る──・・・。
悪役令嬢がいい子ちゃん、ヒロインが脳内お花畑のビッチヒドインで『ざまぁ』されるのが多いので、逆にしたらどうなるのか?という思い付きで浮かんだ話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる