だって姉が眩しかったから

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リシート侯爵家のご令嬢①

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神殿に貴族といえば、寄付がつきものだ。精霊信仰のこの国では、「うちの子は聖女に違いない。何の精霊がついてるか調べてくれ。」と言っては、真実を口にして、斬られそうになったり、何をしたのか精霊の怒りを買って酷い目に遭ったと、精霊を宥めるために来たり、など、碌なことがない。

リシート侯爵家といえば、代々多額の寄付をして、ただ祈りに来る敬虔な信者という印象で神殿内に好意的な目で見られていた。

精霊の愛し子は全てが神殿に入るわけではない。自分の身を自分で守れる人は神殿に入らずにいることもできる。貴族家に生まれた者の何人かは普通の生活を送っている。

神殿にいる愛し子の中には、精霊が見えて話ができる、までの者がいる。彼は元は貴族だったが家族に恵まれずに自ら逃げて来た。今は神殿内で熱心に働いている。

リシート侯爵家の訪問は、いつもとは異なり、とても眩しいものとなった。今回はご家族で来られたようで、神殿は一気に明るくなった。それは精神的なものばかりではなく、物理的に眩しさを感じた者が多数存在し、早い話しが大混乱に陥った。ご令嬢の一人が強い白い光を発している。目をやられた者が、急いで、精霊を見分ける者を連れてくる。

彼は見た瞬間とても晴れ晴れとした表情で頭を下げ、祈りを始めた。彼の祈りの儀式は一度始めると暫く続く。その間もどんどん目をやられていく者が続くというのに。

「精神が昂りすぎて冷静な判断ができていないようだ。」

光は、彼が話しかけ認識されると、弱まる場合がある。だから、こんな風に祈る前に、話しかけさえしてくれれば、皆の目は助かったかもしれない。


彼の儀式に意識が向かっていると、侯爵夫人から声にならない悲鳴が聞こえ、そちらに目を向ける。

小さい方のご令嬢、妹のレイチェル嬢がサマンサ嬢の光を無理矢理引き剥がすような仕草を見せ始めた。

眩しさで目をやられた者達は気づいていないが、彼女のおかげで少し目が見えるようになった者は、絶句した。

罰当たり?なのか、彼らに触れられるとなれば、良いことなのか、何もわからないまま彼女を見守った。

祈りの儀式が終わったら、彼がどうにかしてくれるだろう、と思ったからだ。

夫人はレイチェル嬢の奇行を止めようとなさっているが、神殿内に働く全員の目を守るためにはレイチェル嬢を止めるわけには行かずジレンマを味わわされることとなった。

祈りの儀式の終了とレイチェル嬢が光を引き剥がす作業の終了はほぼ同時だった。

彼は今までのことを見逃したのか凄く嬉しそうにご令嬢方に近づき、精霊達に声をかける。

光はぐるぐるとサマンサ嬢を囲むように飛んでいたが、彼女の体につくギリギリで留まっている。

「サマンサ嬢に付いているのは、白の精霊様ですね。白の光はとても珍しいのですよ。それに、こちらのレイチェル嬢は更に素晴らしいです。精霊王の加護をお持ちです。だから、触れたりしても精霊達は怒らないし、いうことを聞くのですね。これは、本当に素晴らしい。」


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