だって姉が眩しかったから

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だって娘がおかしくて 母視点

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あの日、侍女の面接でおかしな態度だった四人目の少女は、侍女に採用されに来た者ではなかった。

少女の狙いは侯爵家。侍女として入り込み、侯爵に取り入ろうとしていた。政敵からの刺客かと思いきや、ただの子どもの浅知恵というもので、妻子がいても尚人気の夫を単に狙ったものだという。

見た目だけは恐ろしく美しい夫には、確かに若い頃からご令嬢が勝手に懸想し、強引に迫ってくることは多々あった。

レベッカとは身分差はあったものの、政略結婚としては仲良く過ごしている。マメでもなく、面倒を嫌う性格の夫がハニートラップにひっかかることはない。

レイチェルの姉大好きな一途な性格は、多分夫から来ているものだ。惚気でも何でもないけれど夫は私以外、いや家族以外には基本塩対応だ。笑顔を見せることすら少ない。だからこそ偶に見せる家族に対する笑顔を見て、勝手に懸想する者が現れるのかもしれない。

レイチェルも基本姉に関すること以外に興味はない。最近精霊を見られるようになって行動が更に過激になったように感じる。対して姉サマンサは、本来のおっとりした性格と、引っ込み思案な性格が相まって妹の行動にもあまり深くは掘り下げないでスルーしている。

その点は考えるのを放棄したレベッカに似ている。自分の頭の容量を超えるとどうでも良くなるところはそっくりだ。

姉の友人や、孤児院の子ども達に会えたことはレイチェルの成長にも役立っている。刺繍の上手いココと言う少女に刺繍を習い始めたり、少しずつ令嬢としての自覚が出てきたことには一安心だ。

だが、カイという少年にはサマンサと同じように青い光が付いているらしく、精霊について勉強しなくては、と焦ったことも事実。前述の侯爵を狙った少女についても精霊の忌避する何かが付いているのかは分からなかった。


悩んでいた私に神殿に行くことを提案したのは、夫だった。

「防犯上、秘密にしてもらうことに変わりはないけれど、娘達がお世話になっている精霊は誰なのか知っておいた方が良いだろう。」

神殿には、精霊の愛し子が働いている。彼らの中には精霊が見える者もいるわけで、娘二人と、カイという少年に付いている精霊を見分けることができるだろう。


神殿に行くことを不安がったのは、サマンサだった。彼女は集団の中にいると、引っ込み思案になるが、気心の知れた人達の中にいると気が大きくなる、所謂内弁慶なところがあって、知らないところに連れていかれるのを、とても嫌がった。

のちに家族全員で行く旨を伝えると、態度は和らぎ、神殿内ではレイチェルと手を繋ぐことを伝えると、お姉さんの顔になり、力強く頷いた。

レイチェルは、というとサマンサの様子を見てヘラヘラしている。彼女は姉以外に興味がないため、どうでも良さそうだ。神殿に行って迷ってもすぐに見つけられるようにと、お揃いの服をアピールするのも忘れない。

神殿内にいる神官達に、変な子だと思われなければ良いか、とレベッカは考えを放棄した。
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