だって姉が眩しかったから

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だって姉の騎士が眩しくて

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新しく入った三人の侍女は、メキメキと才能を開花させている。アリシアと、ミランダは、三ヶ月を待たずに、侍女としてサマンサに付くようになった。

経営コースを履修していたクロエは、普段は姉に付き、偶に母の補佐として、領地の視察などを手伝ったりしている。

「若い人の視点から気づくこともあるわね。」

忙しい父に代わってする仕事は多く、母は働きすぎて不機嫌になることも多々あったが、最近は彼女達のおかげか機嫌が良い。


お茶会デビューが近くなると、今度は姉専用の護衛選びが始まる。侍女選びの一件から母はレイチェルを排除するのではなく、利用する方が得だと考えたらしい。

「レイチェル、一番眩しかった人を教えてちょうだい。」

元よりそのつもりだったレイチェルは頷き、母からの信頼を嬉しく思った。何よりサマンサが「頼りにしてるわ。」と、言ってくれたのだから、例えレイチェル自身の目が無くなろうと眩しさを追求してゆく所存だ。

なのに、母が選んだ騎士の中には、眩しい人はいなかった。父が選んでも結果は同じ。光は彼らを観察するように一周回って、サマンサの元へ帰ると、二度と彼らには近づかなかった。レイチェルが精霊を見えるのを知る者は落胆した。自分ではサマンサの力になれないと、鍛錬を増やした者もいる。

「どうせなら、精霊に好かれている人の方が良いわよね。」

その後も護衛は、とりあえず両親の護衛から借りることにして、茶会デビューの日を迎えたのだった。

その日のレイチェルは不機嫌だった。姉は母に連れられ王宮に、父は仕事に行き、一人取り残されたからだ。

一人が嫌いなのではない。サマンサのこれでもかと着飾った完璧な可愛さを堪能できないのが、辛くて悲しかった。

あんなに可憐なのだから、王宮にいる王子なんか、すぐに恋に落ちるかもしれない。王命だとか言って、レイチェルからサマンサを取り上げてしまうかもしれない。そうなったらいよいよ、王子の暗殺なども視野に入れなければならない。

そんなことをつらつらと考えながら庭の散策は続いていた。

レイチェルには騎士云々は置いといて、姉以外にも精霊に付き纏われている人物に心当たりがあった。

広い侯爵家の庭を管理している庭師の息子リードだ。彼は父の跡を継ぐ為に、度々庭に現れるが、いつも光に纏わりつかれている為、すぐに居場所がわかる。

「リード、貴方剣術に興味ない?」
「は?何言ってるんです?」

リードは作業の手を止めて、レイチェルを不審な目で見る。彼はおかしなお嬢様がまた変なことを言っている、と思っていることだろう。だが、レイチェルは知っている。彼が侯爵家に常駐する騎士達の練習を並々ならぬ熱意で見つめていることを。

「もし、やる気があるのなら、仕事の合間に習ってみたらどうかしら。」

レイチェルは精霊に付き纏わられている彼にサマンサの護衛になって貰いたい。あわよくば、姉についている奴らが彼に流れるのを期待して声をかけてみるが、彼からの反応は、イマイチだった。

「やる気があったって、僕には無理ですよ。それに仕事をしなくては、生きていけません。」

彼の周りを取り囲む光は、点滅を繰り返している。レイチェルには彼らが何を伝えたいかはわからない。

「でも、庭師でも護身術は必要じゃない。」

侯爵家の侵入を試みる不届き者を彼らが定期的に排除しているのは、レイチェルだって知っている。

屋敷の維持管理に彼らの力は大きい影響を持っている。

「ソレと、コレとは……」
「一緒よ。貴方には姉を間近で守る存在になってほしいのよ。」

彼はレイチェルには塩対応だが、姉サマンサには憧れがあるらしく、借りてきた猫のように大人しい。

彼の反応にレイチェルは気を良くし、母が帰るとすぐに、リードのことを薦める。母は少し難色を示したものの、レイチェルに押しきられる形で、一応、騎士見習いとして、彼の存在を認めたのである。


これにより、庭師の息子リードは、騎士見習いの称号を手に入れた。

誤算としては彼についていた光がサマンサにいくつか流れたことだ。光を失ったことにより少しだけ顔を見やすくなったリードが意外と綺麗な顔をしていることに気づいたレイチェルは、より眩しくなった姉を見ようにも見えなくなり、苦虫をを噛み潰したような顔をして、リードにまた変な目で見られている。



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