2 / 28
だって姉の宝石が眩しくて
しおりを挟む
この世には誕生日に贈る石というものがあるらしい。これは宝石商が勝手に考えた陰謀論ではないかと、レイチェルは思うのだが、姉サマンサに似合う宝石を探すとなれば、話は変わってくる。
姉の誕生石は、薄緑色で、可愛らしいのだが、姉の美しさを引き立てるには何かが足りないような……
姉の茶会デビューを前に、はじめての宝石を選ぶ私達。本当は姉の分だけを買うつもりだったが、お揃いを欲しくて、チラチラソワソワしていたら、レイチェルの分も買っていいと言う。
「良かったわね。貴女の瞳の色も素敵だし、好きな色でも良いし。こんなにたくさんあると悩んでしまうわね。」
姉は、一人で悩んでいたのが二人になって嬉しかったのか、自分のことをそっちのけでレイチェルに似合うものを探し始める始末。
レイチェルは嬉しい。嬉しいのだが、ここでも、また邪魔な奴らは現れた。
姉サマンサがせっかくレイチェルのために選んでくれる宝石が見えない。宝石の光も相まっていつもより余分に光っているように思える。眩しいなんてものではなく、目が開けられない。
クリクリの瞳が薄く閉じられ、顔を顰める。今まで二人を微笑ましく眺めていた宝石商と母レベッカは、レイチェルの様子に困惑している。
「もしかして、レイチェル。貴女また?」
母はレイチェルがまた眩しがっているのを察してくれたのだが、部外者の宝石商にはその事情がわからない。
「精霊の愛し子」なのではないか、と言う疑念は防犯上あまり公には出来ないからだ。
宝石商がその日、見たものは、姉が選んだものを嫌そうに拒否する妹で、それは大いなる誤解である。
対する姉は、自分の選んだものに精霊が群がると言うことは、この石が精霊のお墨付きなのでは?と、前向きに捉えている。
「ダメよ、レイチェル。ここでは抑えてちょうだい。」
母は必死に説得する。宝石商は、精霊を見えないとしても全てが明るみになった時に心証が悪くなることは避けたい。
それに、侯爵家の次女がご乱心だと思われたくなかった。
レイチェルは姉が選んだ数点を、姉が離れた隙に見ることにして、その可愛さと、これを選んでくれた姉に感謝した。
宝石商はその様子に胸を撫で下ろす。妹は姉が嫌いなのではなく、素直になれないだけなのだと、立派な勘違いをして。
姉の為に宝石を選びたい、と言うレイチェルの考えはうまくいかなかった。でも、レイチェルは満足だ。
「私はこれにする。レイチェルと、お揃いでつけたいわ。」
姉サマンサが選んでくれたお揃いは、レイチェルの宝物になった。
出来上がった姉の宝石はやっぱり眩しくて中々見ることは出来なかったのだけれど。
姉の誕生石は、薄緑色で、可愛らしいのだが、姉の美しさを引き立てるには何かが足りないような……
姉の茶会デビューを前に、はじめての宝石を選ぶ私達。本当は姉の分だけを買うつもりだったが、お揃いを欲しくて、チラチラソワソワしていたら、レイチェルの分も買っていいと言う。
「良かったわね。貴女の瞳の色も素敵だし、好きな色でも良いし。こんなにたくさんあると悩んでしまうわね。」
姉は、一人で悩んでいたのが二人になって嬉しかったのか、自分のことをそっちのけでレイチェルに似合うものを探し始める始末。
レイチェルは嬉しい。嬉しいのだが、ここでも、また邪魔な奴らは現れた。
姉サマンサがせっかくレイチェルのために選んでくれる宝石が見えない。宝石の光も相まっていつもより余分に光っているように思える。眩しいなんてものではなく、目が開けられない。
クリクリの瞳が薄く閉じられ、顔を顰める。今まで二人を微笑ましく眺めていた宝石商と母レベッカは、レイチェルの様子に困惑している。
「もしかして、レイチェル。貴女また?」
母はレイチェルがまた眩しがっているのを察してくれたのだが、部外者の宝石商にはその事情がわからない。
「精霊の愛し子」なのではないか、と言う疑念は防犯上あまり公には出来ないからだ。
宝石商がその日、見たものは、姉が選んだものを嫌そうに拒否する妹で、それは大いなる誤解である。
対する姉は、自分の選んだものに精霊が群がると言うことは、この石が精霊のお墨付きなのでは?と、前向きに捉えている。
「ダメよ、レイチェル。ここでは抑えてちょうだい。」
母は必死に説得する。宝石商は、精霊を見えないとしても全てが明るみになった時に心証が悪くなることは避けたい。
それに、侯爵家の次女がご乱心だと思われたくなかった。
レイチェルは姉が選んだ数点を、姉が離れた隙に見ることにして、その可愛さと、これを選んでくれた姉に感謝した。
宝石商はその様子に胸を撫で下ろす。妹は姉が嫌いなのではなく、素直になれないだけなのだと、立派な勘違いをして。
姉の為に宝石を選びたい、と言うレイチェルの考えはうまくいかなかった。でも、レイチェルは満足だ。
「私はこれにする。レイチェルと、お揃いでつけたいわ。」
姉サマンサが選んでくれたお揃いは、レイチェルの宝物になった。
出来上がった姉の宝石はやっぱり眩しくて中々見ることは出来なかったのだけれど。
0
お気に入りに追加
101
あなたにおすすめの小説
愚者(バカ)は不要ですから、お好きになさって?
海野真珠
恋愛
「ついにアレは捨てられたか」嘲笑を隠さない言葉は、一体誰が発したのか。
「救いようがないな」救う気もないが、と漏れた本音。
「早く消えればよろしいのですわ」コレでやっと解放されるのですもの。
「女神の承認が下りたか」白銀に輝く光が降り注ぐ。
「無加護」で孤児な私は追い出されたのでのんびりスローライフ生活!…のはずが精霊王に甘く溺愛されてます!?
白井
恋愛
誰もが精霊の加護を受ける国で、リリアは何の精霊の加護も持たない『無加護』として生まれる。
「魂の罪人め、呪われた悪魔め!」
精霊に嫌われ、人に石を投げられ泥まみれ孤児院ではこき使われてきた。
それでも生きるしかないリリアは決心する。
誰にも迷惑をかけないように、森でスローライフをしよう!
それなのに―……
「麗しき私の乙女よ」
すっごい美形…。えっ精霊王!?
どうして無加護の私が精霊王に溺愛されてるの!?
森で出会った精霊王に愛され、リリアの運命は変わっていく。
あの夏の日、私は確かに恋をした
田尾風香
恋愛
夏の祭礼の終盤、私は婚約者である王子のエーリスに婚約破棄を言い渡されて、私が"精霊の愛し子"であることも「嘘だ」と断じられた。
何も言えないまま、私は国に送り返されることになり、馬車に乗ろうとした時だった。
「見つけた、カリサ」
どこかで見たことがあるような気がする男性に、私は攫われたのだった。
***全四話。毎日投稿予定。四話だけ視点が変わります。一話当たりの文字数は多めです。一話完結の予定が、思ったより長くなってしまったため、分けています。設定は深く考えていませんので、サラッとお読み頂けると嬉しいです。
公爵子息に気に入られて貴族令嬢になったけど姑の嫌がらせで婚約破棄されました。傷心の私を癒してくれるのは幼馴染だけです
エルトリア
恋愛
「アルフレッド・リヒテンブルグと、リーリエ・バンクシーとの婚約は、只今をもって破棄致します」
塗装看板屋バンクシー・ペイントサービスを営むリーリエは、人命救助をきっかけに出会った公爵子息アルフレッドから求婚される。
平民と貴族という身分差に戸惑いながらも、アルフレッドに惹かれていくリーリエ。
だが、それを快く思わない公爵夫人は、リーリエに対して冷酷な態度を取る。さらには、許嫁を名乗る娘が現れて――。
お披露目を兼ねた舞踏会で、婚約破棄を言い渡されたリーリエが、失意から再び立ち上がる物語。
著者:藤本透
原案:エルトリア
連れ去られた先で頼まれたから異世界をプロデュースすることにしました。あっ、別に異世界転生とかしないです。普通に家に帰ります。 ②
KZ
ファンタジー
初めましての人は初めまして。プロデューサーこと、主人公の白夜 零斗(はくや れいと)です。
2回目なので、俺については特に何もここで語ることはありません。みんなが知ってるていでやっていきます。
では、今回の内容をざっくりと紹介していく。今回はホワイトデーの話だ。前回のバレンタインに対するホワイトデーであり、悪魔に対するポンこ……天使の話でもある。
前回のバレンタインでは俺がやらかしていたが、今回はポンこ……天使がやらかす。あとは自分で見てくれ。
※※※
※小説家になろうにも掲載しております。現在のところ後追いとなっております※
悪役令嬢ですが、ヒロインの恋を応援していたら婚約者に執着されています
窓辺ミナミ
ファンタジー
悪役令嬢の リディア・メイトランド に転生した私。
シナリオ通りなら、死ぬ運命。
だけど、ヒロインと騎士のストーリーが神エピソード! そのスチルを生で見たい!
騎士エンドを見学するべく、ヒロインの恋を応援します!
というわけで、私、悪役やりません!
来たるその日の為に、シナリオを改変し努力を重ねる日々。
あれれ、婚約者が何故か甘く見つめてきます……!
気付けば婚約者の王太子から溺愛されて……。
悪役令嬢だったはずのリディアと、彼女を愛してやまない執着系王子クリストファーの甘い恋物語。はじまりはじまり!
仮想戦記:蒼穹のレブナント ~ 如何にして空襲を免れるか
サクラ近衛将監
ファンタジー
レブナントとは、フランス語で「帰る」、「戻る」、「再び来る」という意味のレヴニール(Revenir)に由来し、ここでは「死から戻って来たりし者」のこと。
昭和11年、広島市内で瀬戸物店を営む中年のオヤジが、唐突に転生者の記憶を呼び覚ます。
記憶のひとつは、百年も未来の科学者であり、無謀な者が引き起こした自動車事故により唐突に三十代の半ばで死んだ男の記憶だが、今ひとつは、その未来の男が異世界屈指の錬金術師に転生して百有余年を生きた記憶だった。
二つの記憶は、中年男の中で覚醒し、自分の住む日本が、この町が、空襲に遭って焦土に変わる未来を知っってしまった。
男はその未来を変えるべく立ち上がる。
この物語は、戦前に生きたオヤジが自ら持つ知識と能力を最大限に駆使して、焦土と化す未来を変えようとする物語である。
この物語は飽くまで仮想戦記であり、登場する人物や団体・組織によく似た人物や団体が過去にあったにしても、当該実在の人物もしくは団体とは関りが無いことをご承知おきください。
投稿は不定期ですが、一応毎週火曜日午後8時を予定しており、「アルファポリス」様、「カクヨム」様、「小説を読もう」様に同時投稿します。
婚約破棄から始まる恋~捕獲された地味令嬢は王子様に溺愛されています
きさらぎ
恋愛
テンネル侯爵家の嫡男エドガーに真実の愛を見つけたと言われ、ブルーバーグ侯爵家の令嬢フローラは婚約破棄された。フローラにはとても良い結婚条件だったのだが……しかし、これを機に結婚よりも大好きな研究に打ち込もうと思っていたら、ガーデンパーティーで新たな出会いが待っていた。一方、テンネル侯爵家はエドガー達のやらかしが重なり、気づいた時には―。
※『婚約破棄された地味令嬢は、あっという間に王子様に捕獲されました。』(現在は非公開です)をタイトルを変更して改稿をしています。
お気に入り登録・しおり等読んで頂いている皆様申し訳ございません。こちらの方を読んで頂ければと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる