僕の運命は君じゃない

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真意と気づき

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声をかけたのはどちらが先か。まあ、それはどちらでも良い。二人の真意がどこにあるか、それもどうでも良いが、その影響下にメリッサが入るとなると、話が違ってくる。

足の引っ張り合いは当然、互いの家、互いの陣営に不利にならないように動くのは当然のこと。それがまさか王子を裏切るようなことはあってはならない。

兄は第三王子カミーユの婚約者候補であるセレナ・オランと知らぬ間に親密になっていた。

第三王子カミーユは毒にならされる過程で体調を崩していた一時期病弱と誤解された王子だが、今は徐々に体調をとりもどしているし、何よりテオドールを一方的に毛嫌いしているとして有名だ。

「年が離れた兄弟より年が近い方が、仲は悪い」というのは、あながち真理に近いかもしれない。カミーユ第三王子と、セレナ嬢が婚約者としてどんな関係なのかメリッサは知らない。ただ間に別の男がいる彼女を王子と言う立場にいる人がどう感じるかは恐ろしくて考えられない。

兄には何度か回りくどい言い方ではあるが、注意をした。だが、それについて、反省は全くなく、「自分が魅力的なのが悪い」やら、「テオドール様には迷惑をかけない」やら、おかしなことばかり言うため、兄からの解決を諦めたのだ。

今度の会合に、テオドール様の耳には入れておこうと思ったが彼はすでに知っていた。

「ああ、カミーユが謝っていた。セレナ嬢のおふざけが過ぎたのだと。」

セレナ・オラン公爵令嬢には悪い癖があるそうだ。儚げな容姿を利用して下位貴族を試す、と言う遊び。王子殿下を裏切るような部下は要らないと、カミーユにちゃんと話を通した上で、相手にハニートラップを仕掛けていた。

「カミーユ曰く、今回は不意の出来事だったらしい。彼女から仕掛けたことをきいていないうちに、それらは始まっていた、と。カミーユの知らぬところで進んでいたのは、セレナ嬢から仕掛けた遊びではなかったからだと。

貴女の兄の言っていたように自分の魅力があるのが悪いとは、まさにそうだったみたいだね。セレナ嬢はオラン公爵家で再教育されるらしい。カミーユは貴女の兄をハニトラ要員と見做したらしいよ。」

兄の愚かさの代償は、セレナ嬢が支払ってくれたらしい。

「兄には言ってきかせます。」
本人が聞くかどうかは別ですが。

「いや、まあ、いい。カミーユのあんな顔を見れたのは彼のおかげだ。」

意外にも楽しげな顔を見せるテオドールは、初めて年相応に見え、メリッサは戸惑った。

「何だ?」
「いえ、笑ったところを初めて見たので。」

「いや、いつも笑っているだろう。」

テオドールが言うのはあの嘘くさい笑顔のことだろうか。あれは笑顔に換算していいのか?メリッサにはわからない。

だが、メリッサの戸惑いは、テオドールには新鮮な驚きだったらしい。

「貴女にはいつも驚かされるな。」

テオドールはメリッサを貴女と呼ぶ。偽物はいつも君と呼ぶのに。どちらも名前を呼んでくれないのに、受ける感情が違うのはどう言う訳だろう。メリッサにはわからなかった。
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