6 / 10
死の関係者 テオドール視点
しおりを挟む
第二王子フェリクスの亡くなった部下は、テオドールも知る人物だった。元はテオドールの側近として選ばれる筈だった彼はその後、大人の事情とやらで、第二王子の側近として、側を離れてしまった。
歳はテオドールよりも少し上で、フェリクスよりは少し下。性格は生意気だけど優しいお兄さん。彼が殺された時、何故か彼自身が治安の悪い場所に赴いていた、とか、悪しき行いをしていたとか、様々な疑惑が飛び回っていたけれど、彼を知る者ならば、それは噂でしかないことを知っていた。
第一王子ルシアンと第二王子フェリクスの影、そして自分でクルデリス家に乗り込んだ時には、この問題はさっさと解決するのだろうとたかを括っていた。
そこにいたのは、彼を陥れた犯人とされる男達。中にはいかにも、な女性もいて、正義感に塗れた男が好きそうな容姿をしていた。
トカゲの尻尾切りで、彼らは実行犯ではあるものの、詳細については知らされていなかった。知らないものは話せない。裏切りという選択肢を取り上げられて彼らは話すことがなくなった。
この場にフェリクスがいないことは、ルシアンの意思だ。フェリクスはいいやつではあるが脳筋で、王子の中で唯一、本人の性格に問題のないタイプ。問題のあるのは彼の周りで、それは後見のベネーノ公爵家も同じだった。
テオドールは、ベネーノ家の庶子、リオルに考えを巡らせ、思い直す。
「あれは不気味であるが、まだ此方側だ。頭の良すぎる彼には彼方側も扱いに困っているだろう。」
第二王子フェリクスの周りにいる者達は一枚岩ではない。小さな石がいくつも集まって岩に擬態しているだけ。どこからでもすぐに割れてバラバラになりうる可能性に溢れている。
「リオルだったか、あの庶子の母親を探して吐かせよう。場合によっては、奥方の力を借りるかもしれないが、いいか。」
クルデリス家の当主は最近結婚した新妻を随分と可愛がり、溺愛していると聞く。第一王子ルシアンの言葉にいつもなら逆らわないリュードが、躊躇う様子を見せることにテオドールは驚いたが、当のルシアンは苦笑いで済ませている。
王家に盾ついたからと言って、クルデリス家を処分などしないが、今までルシアンのいうことに逆らわなかった公爵のその反応は新鮮で、ダリア夫人に更に興味が湧いた。
「冷酷男の仮面が剥がれかけているぞ。」
リュードがそう自ら名乗っているわけではないが、女性への対応然り、処刑人としての仕事然り、彼にはその名を否定できる要素も理由もない。
「恋は人を変えるとは、真実だったのだな。」
テオドールはルシアンの言葉に、ついメリッサの顔を思い浮かべてしまい、彼女も恋をしたら今の良さが無くなってしまうのか、と何だか残念な気持ちになった。彼女の良さは、自分のことを自分で決めて実行できることだ。単純なことだが、それをできる人は意外に少ない。
テオドールは自らが変わる可能性については瞬時に無いと、判断した。
そんなふわふわした感情は、自分には必要がない。自分はあくまでも傍観者で、実行者ではないのだ。実行者ではないがメリッサのことについて、思いを巡らせるのだけは、許してほしい。テオドールは誰に言い訳しているかわからないままそんなことを思った。
歳はテオドールよりも少し上で、フェリクスよりは少し下。性格は生意気だけど優しいお兄さん。彼が殺された時、何故か彼自身が治安の悪い場所に赴いていた、とか、悪しき行いをしていたとか、様々な疑惑が飛び回っていたけれど、彼を知る者ならば、それは噂でしかないことを知っていた。
第一王子ルシアンと第二王子フェリクスの影、そして自分でクルデリス家に乗り込んだ時には、この問題はさっさと解決するのだろうとたかを括っていた。
そこにいたのは、彼を陥れた犯人とされる男達。中にはいかにも、な女性もいて、正義感に塗れた男が好きそうな容姿をしていた。
トカゲの尻尾切りで、彼らは実行犯ではあるものの、詳細については知らされていなかった。知らないものは話せない。裏切りという選択肢を取り上げられて彼らは話すことがなくなった。
この場にフェリクスがいないことは、ルシアンの意思だ。フェリクスはいいやつではあるが脳筋で、王子の中で唯一、本人の性格に問題のないタイプ。問題のあるのは彼の周りで、それは後見のベネーノ公爵家も同じだった。
テオドールは、ベネーノ家の庶子、リオルに考えを巡らせ、思い直す。
「あれは不気味であるが、まだ此方側だ。頭の良すぎる彼には彼方側も扱いに困っているだろう。」
第二王子フェリクスの周りにいる者達は一枚岩ではない。小さな石がいくつも集まって岩に擬態しているだけ。どこからでもすぐに割れてバラバラになりうる可能性に溢れている。
「リオルだったか、あの庶子の母親を探して吐かせよう。場合によっては、奥方の力を借りるかもしれないが、いいか。」
クルデリス家の当主は最近結婚した新妻を随分と可愛がり、溺愛していると聞く。第一王子ルシアンの言葉にいつもなら逆らわないリュードが、躊躇う様子を見せることにテオドールは驚いたが、当のルシアンは苦笑いで済ませている。
王家に盾ついたからと言って、クルデリス家を処分などしないが、今までルシアンのいうことに逆らわなかった公爵のその反応は新鮮で、ダリア夫人に更に興味が湧いた。
「冷酷男の仮面が剥がれかけているぞ。」
リュードがそう自ら名乗っているわけではないが、女性への対応然り、処刑人としての仕事然り、彼にはその名を否定できる要素も理由もない。
「恋は人を変えるとは、真実だったのだな。」
テオドールはルシアンの言葉に、ついメリッサの顔を思い浮かべてしまい、彼女も恋をしたら今の良さが無くなってしまうのか、と何だか残念な気持ちになった。彼女の良さは、自分のことを自分で決めて実行できることだ。単純なことだが、それをできる人は意外に少ない。
テオドールは自らが変わる可能性については瞬時に無いと、判断した。
そんなふわふわした感情は、自分には必要がない。自分はあくまでも傍観者で、実行者ではないのだ。実行者ではないがメリッサのことについて、思いを巡らせるのだけは、許してほしい。テオドールは誰に言い訳しているかわからないままそんなことを思った。
13
お気に入りに追加
142
あなたにおすすめの小説
命を狙われたお飾り妃の最後の願い
幌あきら
恋愛
【異世界恋愛・ざまぁ系・ハピエン】
重要な式典の真っ最中、いきなりシャンデリアが落ちた――。狙われたのは王妃イベリナ。
イベリナ妃の命を狙ったのは、国王の愛人ジャスミンだった。
短め連載・完結まで予約済みです。設定ゆるいです。
『ベビ待ち』の女性の心情がでてきます。『逆マタハラ』などの表現もあります。苦手な方はお控えください、すみません。

離れ離れの婚約者は、もう彼の元には戻らない
月山 歩
恋愛
婚約中のセシーリアは隣国より侵略され、婚約者と共に逃げるが、婚約者を逃すため、深い森の中で、離れ離れになる。一人になってしまったセシーリアは命の危機に直面して、自分の力で生きたいと強く思う。それを助けるのは、彼女を諦めきれない幼馴染の若き王で。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

私は王子の婚約者にはなりたくありません。
黒蜜きな粉
恋愛
公爵令嬢との婚約を破棄し、異世界からやってきた聖女と結ばれた王子。
愛を誓い合い仲睦まじく過ごす二人。しかし、そのままハッピーエンドとはならなかった。
いつからか二人はすれ違い、愛はすっかり冷めてしまった。
そんな中、主人公のメリッサは留学先の学校の長期休暇で帰国。
父と共に招かれた夜会に顔を出すと、そこでなぜか王子に見染められてしまった。
しかも、公衆の面前で王子にキスをされ逃げられない状況になってしまう。
なんとしてもメリッサを新たな婚約者にしたい王子。
さっさと留学先に戻りたいメリッサ。
そこへ聖女があらわれて――
婚約破棄のその後に起きる物語

ご安心を、2度とその手を求める事はありません
ポチ
恋愛
大好きな婚約者様。 ‘’愛してる‘’ その言葉私の宝物だった。例え貴方の気持ちが私から離れたとしても。お飾りの妻になるかもしれないとしても・・・
それでも、私は貴方を想っていたい。 独り過ごす刻もそれだけで幸せを感じられた。たった一つの希望

さようなら、あなたとはもうお別れです
四季
恋愛
十八の誕生日、親から告げられたアセインという青年と婚約した。
幸せになれると思っていた。
そう夢みていたのだ。
しかし、婚約から三ヶ月ほどが経った頃、異変が起こり始める。

公爵令嬢は見極める~ある婚約破棄の顛末
ひろたひかる
恋愛
「リヨン公爵令嬢アデライド。君との婚約は破棄させてもらう」――
婚約者である第一王子セザールから突きつけられた婚約破棄。けれどアデライドは冷静な態度を崩さず、淡々とセザールとの話し合いに応じる。その心の中には、ある取り決めがあった。◆◆◆「小説家になろう」にも投稿しています。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。
松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。
そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。
しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる