僕の運命は君じゃない

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情報を交換するために

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モスカント家を調べるのはあまり気が乗らなかったが、調べはじめてすぐに、いつもは来ない婚約者様から連絡があったので、そう言う意味では正解だったかも知れない。

今回は、偽物ではなく、本物のテオドール。調査を止められるかと、身構えたのも束の間、彼はそうはしなかった。

「いつも、影に頼んでいたから、久しぶりだね。他のご令嬢ならすぐに騙されてくれるのに、メリッサ嬢は、騙されてくれなかったらしいから、僕も興味はあったんだ。で?モスカント伯爵家の何を調べるの?」

本人を前に「貴方を調べる為です。」とは言い難い。どうしたものかと考えていると、テオドールはメリッサに「情報交換」を持ちかけてきた。

「貴女の目的が何かは別にいいんだ。だけどもしかしたら二人で探した方が早いかも知れないだろう。それはまあお互い様なんだけど。だからさ、此方が知り得た情報を開示するから、そちらが知ったことも、出来たら教えてもらえないかな。取捨選択は此方でやるから、どんな小さな事も教えて欲しいんだ。どうかな。」

「それは全てを開示しなければなりませんか?」
「出来ればね。ただ、そうだな。どうしても言いたくないことであれば、言わなくても構わない。そこは貴女の意思を尊重するよ。」

テオドールの提案には驚いたが、約束してしまえば、逃げようもない。それに情報共有することによって、婚約者候補としての距離が近くなるなら、望ましい事だ。

「その時には、テオドール様が来られます?」
メリッサは気になることを聞いただけなのだが、テオドールは不意打ちされたみたいな顔をして、そのあとすぐに笑い出した。

「ああ、僕が提案したのだもの。影ではなく、僕が行くことになるよ。なら、場所は此方で決めても良いだろうか。少数精鋭で行くからね。余計な事態を引き起こさないように。」

話を終え、テオドールはメリッサに小さな箱を手渡した。

「屋敷に戻ってから開けてね。絶対に一人で開けるように。」

テオドールがウィンクをして、立ち去る。メリッサが普通のまともな女性ならそれだけで「テオドール様素敵!」となっていただろうが、メリッサの頭に浮かんだ言葉は、「あざとい」だった。

帰宅して開いた箱には、モスカント伯爵家に纏わる前情報が不思議な形で入っていた。

メリッサはその内容を見て、テオドールに感じた好印象を全て引き下げた。

彼が渡してきた書類には、第二王子の部下が亡くなった当時の証拠映像が封入されており、テオドールがこの争いにポエナ家及びメリッサを引き入れたことが判明してしまったからだ。

「だから、嫌だったのよ。」

メリッサは苛立ちながらも約束だけは守って貰うために、テオドールの元へ連絡を入れた。彼は二週間後を指定してきた。

リミットは、二週間後である。モスカント伯爵家の全てを探るためにの協力者はすぐに見つかった。
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