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メリッサの母の過去
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母が再婚した理由はただ一つ、そう決められていたからだ。クルデリス家以外の公爵家は、順番に王家の婚約者候補になることを予め決められている。
母自身も当時の第三王子の婚約者候補だった。第三王子は後に王籍から抜けた為に、メリッサの父である伯爵子息を婿にしたのだそうだが。
母曰く、「最初の婚約者とは相性が悪かった」らしく、メリッサがテオドールとうまくいかなくても母としては、「特に問題無い」と言う。
「ただ、そんなことを考えていたから再婚相手として、彼が送り込まれてきたのかもしれないわ。」
自嘲気味に笑う母だが、公爵家の人間であって、王子と上手くいかなくても良いなんていう人は監視されても仕方ないと思う。
「正直、メリッサにはあまり苦労してほしく無いから、第四王子に決まったのは良いことだったんだけど、結果は、どうして、よね。第一王子の次によく出来る王子なんて、荷が重いわ。流れてくる敵も増えるだろうし。」
「流れてくる、って、何?」
「第一王子を推す者、潰そうとする者、どちらにしろ、邪魔な存在と認識されている筈よ。本人に効かないのなら、貴女達って思う人間は少なく無いと思うわ。」
母は呑気に話しているが、割と物騒な話だ。ポエナ家には、他の公爵家のような後ろ暗いところがない。何もないわけではないが、こんな状態で生き残れるのだろうか。
「でも、うちは大丈夫よ。私の元婚約者だった元第三王子の話、したじゃない?あの時にね、王家にちゃんと話をつけておいたのよ。脅したとも言うわね。今後うちに何かあれば、王家のために働くことを止めるって、ね。うちは、大した力はない、とメリッサは思ってるかもしれないけれど、他の公爵家の主張が強い分、調整役が必要なのよね。それに、国を守るのは力だけじゃないのよ。この意味、わかるわよね。」
母の過去に何があったかはわからない。ただ、母の様子にそれが真実であることは分かった。
「何か、ってそれはどこまでのことをいうの?」
「それは私がどう思われているかによるわね。私を舐めているようなら、危険があるかもしれないけれど、それは無いと思うから大丈夫よ。」
「どうしてそう言えるの?」
「だって、テオドール王子殿下が、今クルデリス家に入り浸っているのでしょう?あれは、他にも理由があるかもしれないけれど、ポエナ家に降りかかる火の粉を落とす為もあるのよ。
クルデリス家の前当主は、私の古い友人なのよ。ちゃんと彼も王家と共にあの時に脅しておいたから、ポエナ家の不利になることはしないわ。安心しなさい。」
メリッサは母が単なる公爵家の夫人だと思っていたが、それが間違いであると理解した。同時に今の父に関することを調べることが一気に怖くなる。この母を手に回すことが果たしてあっている事なのかやりたいことなのか、わからなくなったからだ。
「貴女には何の憂いもなく幸せになって貰いたいの。だから、これだけは言わせてちょうだい。テオドール王子殿下を調べるなら、彼の影ではなく、モスカント家から調べなさい。あの家なら危ないことはないはずよ。」
母自身も当時の第三王子の婚約者候補だった。第三王子は後に王籍から抜けた為に、メリッサの父である伯爵子息を婿にしたのだそうだが。
母曰く、「最初の婚約者とは相性が悪かった」らしく、メリッサがテオドールとうまくいかなくても母としては、「特に問題無い」と言う。
「ただ、そんなことを考えていたから再婚相手として、彼が送り込まれてきたのかもしれないわ。」
自嘲気味に笑う母だが、公爵家の人間であって、王子と上手くいかなくても良いなんていう人は監視されても仕方ないと思う。
「正直、メリッサにはあまり苦労してほしく無いから、第四王子に決まったのは良いことだったんだけど、結果は、どうして、よね。第一王子の次によく出来る王子なんて、荷が重いわ。流れてくる敵も増えるだろうし。」
「流れてくる、って、何?」
「第一王子を推す者、潰そうとする者、どちらにしろ、邪魔な存在と認識されている筈よ。本人に効かないのなら、貴女達って思う人間は少なく無いと思うわ。」
母は呑気に話しているが、割と物騒な話だ。ポエナ家には、他の公爵家のような後ろ暗いところがない。何もないわけではないが、こんな状態で生き残れるのだろうか。
「でも、うちは大丈夫よ。私の元婚約者だった元第三王子の話、したじゃない?あの時にね、王家にちゃんと話をつけておいたのよ。脅したとも言うわね。今後うちに何かあれば、王家のために働くことを止めるって、ね。うちは、大した力はない、とメリッサは思ってるかもしれないけれど、他の公爵家の主張が強い分、調整役が必要なのよね。それに、国を守るのは力だけじゃないのよ。この意味、わかるわよね。」
母の過去に何があったかはわからない。ただ、母の様子にそれが真実であることは分かった。
「何か、ってそれはどこまでのことをいうの?」
「それは私がどう思われているかによるわね。私を舐めているようなら、危険があるかもしれないけれど、それは無いと思うから大丈夫よ。」
「どうしてそう言えるの?」
「だって、テオドール王子殿下が、今クルデリス家に入り浸っているのでしょう?あれは、他にも理由があるかもしれないけれど、ポエナ家に降りかかる火の粉を落とす為もあるのよ。
クルデリス家の前当主は、私の古い友人なのよ。ちゃんと彼も王家と共にあの時に脅しておいたから、ポエナ家の不利になることはしないわ。安心しなさい。」
メリッサは母が単なる公爵家の夫人だと思っていたが、それが間違いであると理解した。同時に今の父に関することを調べることが一気に怖くなる。この母を手に回すことが果たしてあっている事なのかやりたいことなのか、わからなくなったからだ。
「貴女には何の憂いもなく幸せになって貰いたいの。だから、これだけは言わせてちょうだい。テオドール王子殿下を調べるなら、彼の影ではなく、モスカント家から調べなさい。あの家なら危ないことはないはずよ。」
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