僕の運命は君じゃない

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王子と公爵家と母の言葉

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我が国に王子は五人。それぞれに役割が違ってそれぞれが優秀。それは国として凄く恵まれていることで、同時に凄く不幸なことだ。王子が何人いても頂点に立つのはただ一人。

第四王子テオドールがいくら優れていても、それだけではどうにもならない問題がある。

公爵家には娘と息子が一人ずついて、娘は王子の婚約者に、息子は王子の側近になるのが決まっていた。王子が全員優秀なら側近達もそうありたいが、そこまでは当然無理な話。

公爵家は要件を満たす為、足りない人間は人数合わせのように、庶子を家に入れたり、養子を入れたりして、何とか約束事を守っていく。

王子は公爵家を選べない。後見は勝手にパワーバランスで決まる。

ポエナ公爵家が第四王子テオドールの後見につけたのは僥倖である、と言わざるを得ない。

第一王子ルシアンの後見として、メリウス公爵家が選ばれたのは数ある公爵家のうち、庶子も養子も使わずに自力で子を確保できたからだ。本人の能力はせいぜい、それでも公爵家の血は貴重だと判断された。

第二王子フェリクスの後見は、息子が庶子のベネーノ公爵家。ここはこの庶子が優秀すぎるきらいがあって何かと揉めていると聞く。

第三王子カミーユの後見は、オラン公爵家。こちらは息子が養子である。カミーユは最初病弱だと噂されていたが、後にオラン公爵家の強みである毒に慣らされていた為に、病弱だったことが判明した恐ろしい家。

第四王子テオドールの後見は我がポエナ家。入婿の我が家ではメリッサと父である現在の公爵に血の繋がりはない。メリッサは庶子ではなく、前公爵の娘ということになる。

第五王子ダニエルは、アケル公爵家。この第五王子だけが、今のところ、何の情報もない。本人の希望かアケル公爵家の事情か。全く存在そのものを隠す形で守られている。

だから、下位貴族のいくつかの家には王子は全部で四人と思われている。

アケル公爵家も、先の四つの公爵家と、クルデリス公爵家とも違う形で王家に貢献しているらしいのだが、当主も息子も娘も、学園おろか社交界にも顔を出さないでいるが故に、本当に実態があるのかさえも、疑われている不思議な家だ。

メリッサは何の証拠もないのだが、アケル公爵家について密かに立てている考察があった。

それは、王子の影と呼ばれる側近達のことだ。表に出る高位貴族の子息達による側近と裏で動き回る影という側近達。彼らを育成し、取り締まっているのがアケル公爵家ではないか、とメリッサは考えている。どうしてそんな結論になったかについては、前公爵だったメリッサの父の死後、現れた現在の父が、アケル公爵家から来たのではないか、と勘繰っているからだ。父と、偽物のテオドールはどこか似ている。まるでこちらが本物の親子みたいに。

メリッサは母から義父について調べることは禁止されていない。ただ「死ぬかもしれない覚悟があるならOK」と言われたに過ぎない。

それでもし亡くなった場合、「公爵家の者として、弔わない」とも言われている。

「メリッサ、どこかの国の諺に信じるものは救われる、というものがあるのよ。貴女は義父と母を信じるべきよ。最後に残るものは血なのよ。」

この言葉は母の性質にはそぐわない。だから、余計に覚えていた。この件に関して言えるのは、他のことなら絶対的に味方になってくれる母の協力が一切得られないばかりか失敗すれば追い出されるかもしれない危険に満ちていること。

だが、メリッサには調べなきゃならない理由がある。

それはメリッサに「僕の運命は君じゃない」と失礼な話をしたあの男に関することだからだ。
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