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理想の恋人
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私には気の強い妹が二人いる。母も叔母も祖母も、従姉妹も、総じて皆気が強い。ヒーラー侯爵家の血筋だが、女性は強く、男性は弱い。祖父曰く、女性の尻に敷かれているぐらいで男性は丁度良いらしい。
とは言っても、私が昔から好きになる女性は、皆大人しく、可愛らしい人だった。
しかし、私の理想の女性だったご令嬢達は、幻だったことを知る。皆が皆演技だったなどとは信じたくはないが、彼女達ははっきりしていた。彼女達は、私に恥ずかしそうに笑いかけた顔で、ペチャクチャと、別のご令嬢を批判していた。
使用人に対する横柄な態度をみると、彼女達の振る舞いは最初から演技でしかなかったことがわかった。
エルザはそれを聞くと、「当たり前じゃない。」と鼻で笑い、ララには、私の頭の中を心配された。
「お兄様、顔に似合わず、お花畑過ぎるわ。」
エルザと仲の良いクレア嬢に至っては、私を笑いはしなかったが、目は雄弁で呆れていることが見て取れた。
ある日、クレア嬢に言われた。
「以前聞いたリアム様のお好きなタイプに近い子がいるのですが、紹介しましょうか?」
「まだ、私を揶揄う気かい?」
「いいえ、彼女は、侍女見習いとして新しく入った子爵令嬢です。彼女は、養殖でない、天然物です。気にいると思いますわ。」
養殖だの、天然だの、人に対する修飾語ではないが、話を聞く限り確かに私の好きなタイプではあった。
彼女には恋人がいたが、その恋人と言うのは、あのカイン・バルトだ。伯爵家の遊び人。人気は私に次いで二番人気らしい。そもそも私が一番人気と言うのも、異議を唱えたいのに。
「彼女をあの遊び人から解放して、真実の愛を教えて差し上げれば良いのです。」
「真実の愛って使い方あってる?」
「元々の意味はこちらで間違いないと思います。」
彼女は覚えていないかもしれないが、私は彼女に一度会っている。リシャール侯爵家に、用があり、前触れも出さず立ち寄った時のこと。彼女は入ったばかりだったか、初々しい働きぶりで、疲れ切った私の心を癒してくれた。
彼女はどれだけ時間が経っても、馴れ合うことはなく、謙虚で、真面目だった。なるほど、クレア嬢が気にいるわけだ。
私はカイン・バルトを調べる過程で、彼のことを偏執的に愛する母親が、アリアに敵意を抱いていることを知り、彼女を保護しようとした。
婚約者云々は、何かと理由をつけたが、下心があってのことだ。もしかしたら、このまま、婚約者で居続けてくれたりするのではないか、と。
あのカインが、彼女に手を出さなかったのは、出せなかっただけではないのか?
彼女と話すにつれ、自分が二の舞になりそうで怖くなる。私は奥手だし、彼女は鈍感だ。
私は大して強くもないワインを開ける。毎回お酒の力を借りないといけないのは、情けないが、彼女を失うわけにはいかない。
「アリア、愛してる。」
アリアはふふ、と微笑んで、少し口を尖らせる。
「酔っ払ってない時に仰ってください。でないと、ご褒美はあげられませんわ。」
アリアは、人差し指で、私の口を塞いだ。
とは言っても、私が昔から好きになる女性は、皆大人しく、可愛らしい人だった。
しかし、私の理想の女性だったご令嬢達は、幻だったことを知る。皆が皆演技だったなどとは信じたくはないが、彼女達ははっきりしていた。彼女達は、私に恥ずかしそうに笑いかけた顔で、ペチャクチャと、別のご令嬢を批判していた。
使用人に対する横柄な態度をみると、彼女達の振る舞いは最初から演技でしかなかったことがわかった。
エルザはそれを聞くと、「当たり前じゃない。」と鼻で笑い、ララには、私の頭の中を心配された。
「お兄様、顔に似合わず、お花畑過ぎるわ。」
エルザと仲の良いクレア嬢に至っては、私を笑いはしなかったが、目は雄弁で呆れていることが見て取れた。
ある日、クレア嬢に言われた。
「以前聞いたリアム様のお好きなタイプに近い子がいるのですが、紹介しましょうか?」
「まだ、私を揶揄う気かい?」
「いいえ、彼女は、侍女見習いとして新しく入った子爵令嬢です。彼女は、養殖でない、天然物です。気にいると思いますわ。」
養殖だの、天然だの、人に対する修飾語ではないが、話を聞く限り確かに私の好きなタイプではあった。
彼女には恋人がいたが、その恋人と言うのは、あのカイン・バルトだ。伯爵家の遊び人。人気は私に次いで二番人気らしい。そもそも私が一番人気と言うのも、異議を唱えたいのに。
「彼女をあの遊び人から解放して、真実の愛を教えて差し上げれば良いのです。」
「真実の愛って使い方あってる?」
「元々の意味はこちらで間違いないと思います。」
彼女は覚えていないかもしれないが、私は彼女に一度会っている。リシャール侯爵家に、用があり、前触れも出さず立ち寄った時のこと。彼女は入ったばかりだったか、初々しい働きぶりで、疲れ切った私の心を癒してくれた。
彼女はどれだけ時間が経っても、馴れ合うことはなく、謙虚で、真面目だった。なるほど、クレア嬢が気にいるわけだ。
私はカイン・バルトを調べる過程で、彼のことを偏執的に愛する母親が、アリアに敵意を抱いていることを知り、彼女を保護しようとした。
婚約者云々は、何かと理由をつけたが、下心があってのことだ。もしかしたら、このまま、婚約者で居続けてくれたりするのではないか、と。
あのカインが、彼女に手を出さなかったのは、出せなかっただけではないのか?
彼女と話すにつれ、自分が二の舞になりそうで怖くなる。私は奥手だし、彼女は鈍感だ。
私は大して強くもないワインを開ける。毎回お酒の力を借りないといけないのは、情けないが、彼女を失うわけにはいかない。
「アリア、愛してる。」
アリアはふふ、と微笑んで、少し口を尖らせる。
「酔っ払ってない時に仰ってください。でないと、ご褒美はあげられませんわ。」
アリアは、人差し指で、私の口を塞いだ。
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