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過剰防衛?
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ユーナちゃんは、私の姿を見ると、嬉しそうに近づいてきます。彼女の額にある瘤はだんだんと濃く広がっていきます。あれでは、前が見えにくいのではないかしら、と思っていると、突然リアム様に抱きしめられます。
驚いて、見上げると、優しい笑顔で囁かれます。
「もう一度。」
「え?」
「もう一度、さっきの魔道具を起動して。」
ヒビの入ったものです。もう一度起動してしまえば、確実に壊れてしまうでしょう。ですが、リアム様が言うのですから、する、しか選択肢はありません。
もう一度取り出すと、起動します。
ユーナちゃんのいる方から、悲鳴が聞こえます。皆がそちらに注目すると、私を抱きしめるリアム様から、怖い言葉が飛び出します。
「ララの魔道具を改善したんだ。ララは、優しいから、痛みは伴わないのが、私は面白くなくてね。人を呪わば、穴二つと言うだろう。痛みをプラスして、差し上げたんだ。ここまでしたら、もう二度と、誰かを呪おうとしないだろう。」
周りに人がいるのも、そうですが、瘤はどんどん大きくなりユーナちゃんの顔を覆うほど大きくなっています。
「君は気がついてないみたいだったけれど、君には呪いがついていたんだよ。」
呪いの内容は言われませんでしたが、私が気がつかなかったぐらいですから、大したことではないのではないでしょうか。これは、過剰防衛ではありませんか?
私の心配をよそに、リアム様は楽しげにユーナちゃんの絶叫をきいていて、少し異様な雰囲気に寒気を感じます。
あら、リアム様の印象が大きく変わります。こんな方だったのですね。
怖いような、頼もしいような不思議な気分です。
ユーナちゃんは、騎士の方達に運ばれて、会場の外に出されました。医務室に向かうのでしょうか。私も心配でしたが、リアム様がお止めになるので、いけませんでした。
私を呪ったのは、ユーナちゃんと、もう一人でした。ユーナちゃんは、リシャール侯爵家にお手伝いにきていた使用人でしたが、元はカイン様のお母様の遠い親戚でした。伯爵家に生まれながら、使用人になった彼女は、カイン様に憧れていたようです。
私も驚いたのですが、カイン様が私を好いてくださったことで、彼女は、私を呪ってしまったようです。
そんな些細なこと、とは思いますが、好きな人に、振り向いてもらえない辛さはわかります。それにしても、ユーナちゃんの気持ちを私は一切理解していませんでした。貴族令嬢としての、教育を受けていないからでしょうか。
私にはつくづく腹芸が難しく、向いていないと思うのでした。
カイン様は、気がつけば、前にいて、リアム様に頭を下げています。
「ここまで、大勢の人の前での失態です。さすがに、母も観念するでしょう。どうもありがとうございます。お世話になりました。」
そう話し、私にも謝罪をします。
「君もありがとう。色々、悪かった。」
私が恋をしていた時より、素敵な笑顔を見せて去っていく背中に、寂しさは感じましたが、見送ります。
隣にはリアム様が心配そうな顔をしています。何だか可愛らしくて笑ってしまいました。
驚いて、見上げると、優しい笑顔で囁かれます。
「もう一度。」
「え?」
「もう一度、さっきの魔道具を起動して。」
ヒビの入ったものです。もう一度起動してしまえば、確実に壊れてしまうでしょう。ですが、リアム様が言うのですから、する、しか選択肢はありません。
もう一度取り出すと、起動します。
ユーナちゃんのいる方から、悲鳴が聞こえます。皆がそちらに注目すると、私を抱きしめるリアム様から、怖い言葉が飛び出します。
「ララの魔道具を改善したんだ。ララは、優しいから、痛みは伴わないのが、私は面白くなくてね。人を呪わば、穴二つと言うだろう。痛みをプラスして、差し上げたんだ。ここまでしたら、もう二度と、誰かを呪おうとしないだろう。」
周りに人がいるのも、そうですが、瘤はどんどん大きくなりユーナちゃんの顔を覆うほど大きくなっています。
「君は気がついてないみたいだったけれど、君には呪いがついていたんだよ。」
呪いの内容は言われませんでしたが、私が気がつかなかったぐらいですから、大したことではないのではないでしょうか。これは、過剰防衛ではありませんか?
私の心配をよそに、リアム様は楽しげにユーナちゃんの絶叫をきいていて、少し異様な雰囲気に寒気を感じます。
あら、リアム様の印象が大きく変わります。こんな方だったのですね。
怖いような、頼もしいような不思議な気分です。
ユーナちゃんは、騎士の方達に運ばれて、会場の外に出されました。医務室に向かうのでしょうか。私も心配でしたが、リアム様がお止めになるので、いけませんでした。
私を呪ったのは、ユーナちゃんと、もう一人でした。ユーナちゃんは、リシャール侯爵家にお手伝いにきていた使用人でしたが、元はカイン様のお母様の遠い親戚でした。伯爵家に生まれながら、使用人になった彼女は、カイン様に憧れていたようです。
私も驚いたのですが、カイン様が私を好いてくださったことで、彼女は、私を呪ってしまったようです。
そんな些細なこと、とは思いますが、好きな人に、振り向いてもらえない辛さはわかります。それにしても、ユーナちゃんの気持ちを私は一切理解していませんでした。貴族令嬢としての、教育を受けていないからでしょうか。
私にはつくづく腹芸が難しく、向いていないと思うのでした。
カイン様は、気がつけば、前にいて、リアム様に頭を下げています。
「ここまで、大勢の人の前での失態です。さすがに、母も観念するでしょう。どうもありがとうございます。お世話になりました。」
そう話し、私にも謝罪をします。
「君もありがとう。色々、悪かった。」
私が恋をしていた時より、素敵な笑顔を見せて去っていく背中に、寂しさは感じましたが、見送ります。
隣にはリアム様が心配そうな顔をしています。何だか可愛らしくて笑ってしまいました。
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