浮気は私の方でした

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クレアの相手

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あの日、エルザ様に選ばれたドレスは、今まで身につけたことのない滑らかな布地で、触らなくても見ただけで、高級な物とわかります。リアム様も、髪を後ろに流して、普段とは違う凛々しいお顔に、胸がドキドキしています。

リアム様と、私のドレスは対になっていて、リアム様の美しさに、私は引き立て役になることを決意しました。

「私とお揃いだね。今日はよろしくお願いします。人が多くて危険だから、なるべく離れないでいてもらえると助かるよ。」

優しい笑顔はいつも通りで、安心します。

「こちらこそ、よろしくお願いします。」

挨拶をすると、手を繋ぎ、馬車に乗り込みます。素敵なドレスなので、汚さないように気を張ります。

「クレアとは、中で合流できるからね。安心して。」

「あの、リアム様は、クレアの、相手をご存知で?」

「勿論、彼を薦めたのは私だからね。あんなに意気投合するとは思わなかったけれど。緊張してるの?」

「ええ、粗相があったらと思うと……」

リアム様は、向かいあっていた席を横に移動すると、私の手を取ります。

「大丈夫。アリアはそのままで、大丈夫だ。」

温かい手で包み込まれ、体温が伝わってきます。リアム様はとても温かい方です。

「ありがとうございます。」

出る前にある物を渡されます。これは今まで毎日使っていた魔道具の一つです。

「会場に入って合図したら、これを起動してくれる?いつもと同じやり方で構わない。これで、最後の仕上げをするからね。」

「はい。合図はどんな物ですか?」

急に、リアム様にギュッと抱き寄せられます。

「こうやって、今だ、って言うからね。」

「……緊張して、頭が回らなくなりそうです。」

「だから、練習だよ。もう一度やる?」

リアム様の顔を見上げると、揶揄うような目をしています。

「結構です!」

リアム様のような素敵な方に抱きしめられて、平気でいられる訳がありませんのに。私と違い、リアム様はいかにも経験豊富で羨ましい限りです。

けれど、初めての夜会で、リアム様が側にいてくださるのは、心強いです。願わくば、あまり揶揄われないようにしたいですけれど。



リアム様の人気は会場に入る時には、痛いぐらいに感じました。本当に視線で殺されそうになりましたもの。

たくさんの人の中に、見知った顔が現れます。クレアと長身の男性が、こちらに向かってきました。

「クレアと……リカルド?」

「リカルド・サファーと申します。以後、お見知りおきを。」

サファーって、ちょっと待って……公爵家?

「こう見えて、公爵家の三男坊なのよ。見えないでしょ?」

「身分だけなら、我がヒーラー家より上なんだよ。」

「アリア、緊張しなくて大丈夫よ。彼は三男坊だから家は継がないし、今までと同じ対応で。急に変わったら寂しがるわ。」

そう言われてしまうと、仕方がありません。かしこまるのは、諦めて、話の輪に加わります。

クレアとリカルドの馴れ初めも、いつか聞いてみたいです。



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