浮気は私の方でした

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完璧だと思っていた兄

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第二王子のリード様が王太子であるのには理由がある。第一王子は少し前に王太子の権利を失っている。

それは、リアムと伯爵家のカインがまだご令嬢達の話題に上る前のこと。エルザは今でこそ兄がご令嬢から憧れの眼差しで見られたりするのを、自慢に思っているが、前から不思議だった。どうしてうちの兄は、こんなに美しいのに、誰も気がつかないのだろうと。

理由は、他に目立つ存在がたくさんいたからだ。第一王子をはじめ、公爵家、侯爵家、伯爵家の嫡男達が、ご令嬢の人気を攫っていた。その中でリアムは美しいが、地味、と評されていた。

エルザはつくづく、あの時の第一王子の婚約者に選ばれなくて良かったと思う。第一王子は見た目だけは良かったが、頭がパッパラパーだった。婚約者を裏切り、平民の女性に熱を上げた。

そして、女性の言うままに行動した結果、国を滅ぼしかけたのだ。それには、派手な見た目の割に頭の悪い王子の友人達も関わっていた。王太子が反逆の罪に問われると、友人達も、罪からは逃れることが出来ず、没落したり、平民になったりした。

エルザが第二王子との婚約を結んだのは、この時に、魔道具で国を助けた功績に他ならない。第二王子は、第一王子のように、女遊びもしないし、何より馬鹿ではない。エルザとの間に恋愛感情はなくとも、お互いに同志として認め合う仲にはなれそうだった。

第一王子の一味として処分した家の中には、バルト伯爵家と懇意にしていた家もあった。よく調べると、伯爵夫人が主に動いていたようだ。バルト伯爵自身の関与は認められなかったので、お咎めはされなかったものの、伯爵夫人には監視がつくようになった。勿論王家の監視である。

貴族令嬢の中で、呪いが流行ったのもこの時期だった。今までは、好きな男性を振り向かせる為の魔法が流行ったのだが、所謂魅了魔法が禁術になったので、愛する人の愛する相手を呪うやり方にシフトチェンジしたらしい。

対抗するには、昔からの呪い返しが聞くと言う。妹のララと改良を加えて行き、ついにはあの魔道具を製作するに、至った。

バルト伯爵家は夫人をどうにかしないことには、身動きが取りづらいだろう。ララが以前から欲しがっていた実験体として、勧めてみるのはどうかしら。ご本人は身分の差に重きを置いているみたいだから、少しばかり横暴でも許してくれるはずだ。

その頃には、兄も、アリアの心を奪えていると良いのに。

女性の扱いに対してそれなりに慣れているはずの兄があそこまでヘタレだなんて、誰が予想したかしら。

でも、アリアは、あのカインでさえもヘタレにした実績があるのよね。ヘタレホイホイなのかしら。

次はヘタレを治す魔道具を作ろうかな。

エルザは初々しい兄の恋を応援していた。
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