19 / 27
完璧だと思っていた兄
しおりを挟む
第二王子のリード様が王太子であるのには理由がある。第一王子は少し前に王太子の権利を失っている。
それは、リアムと伯爵家のカインがまだご令嬢達の話題に上る前のこと。エルザは今でこそ兄がご令嬢から憧れの眼差しで見られたりするのを、自慢に思っているが、前から不思議だった。どうしてうちの兄は、こんなに美しいのに、誰も気がつかないのだろうと。
理由は、他に目立つ存在がたくさんいたからだ。第一王子をはじめ、公爵家、侯爵家、伯爵家の嫡男達が、ご令嬢の人気を攫っていた。その中でリアムは美しいが、地味、と評されていた。
エルザはつくづく、あの時の第一王子の婚約者に選ばれなくて良かったと思う。第一王子は見た目だけは良かったが、頭がパッパラパーだった。婚約者を裏切り、平民の女性に熱を上げた。
そして、女性の言うままに行動した結果、国を滅ぼしかけたのだ。それには、派手な見た目の割に頭の悪い王子の友人達も関わっていた。王太子が反逆の罪に問われると、友人達も、罪からは逃れることが出来ず、没落したり、平民になったりした。
エルザが第二王子との婚約を結んだのは、この時に、魔道具で国を助けた功績に他ならない。第二王子は、第一王子のように、女遊びもしないし、何より馬鹿ではない。エルザとの間に恋愛感情はなくとも、お互いに同志として認め合う仲にはなれそうだった。
第一王子の一味として処分した家の中には、バルト伯爵家と懇意にしていた家もあった。よく調べると、伯爵夫人が主に動いていたようだ。バルト伯爵自身の関与は認められなかったので、お咎めはされなかったものの、伯爵夫人には監視がつくようになった。勿論王家の監視である。
貴族令嬢の中で、呪いが流行ったのもこの時期だった。今までは、好きな男性を振り向かせる為の魔法が流行ったのだが、所謂魅了魔法が禁術になったので、愛する人の愛する相手を呪うやり方にシフトチェンジしたらしい。
対抗するには、昔からの呪い返しが聞くと言う。妹のララと改良を加えて行き、ついにはあの魔道具を製作するに、至った。
バルト伯爵家は夫人をどうにかしないことには、身動きが取りづらいだろう。ララが以前から欲しがっていた実験体として、勧めてみるのはどうかしら。ご本人は身分の差に重きを置いているみたいだから、少しばかり横暴でも許してくれるはずだ。
その頃には、兄も、アリアの心を奪えていると良いのに。
女性の扱いに対してそれなりに慣れているはずの兄があそこまでヘタレだなんて、誰が予想したかしら。
でも、アリアは、あのカインでさえもヘタレにした実績があるのよね。ヘタレホイホイなのかしら。
次はヘタレを治す魔道具を作ろうかな。
エルザは初々しい兄の恋を応援していた。
それは、リアムと伯爵家のカインがまだご令嬢達の話題に上る前のこと。エルザは今でこそ兄がご令嬢から憧れの眼差しで見られたりするのを、自慢に思っているが、前から不思議だった。どうしてうちの兄は、こんなに美しいのに、誰も気がつかないのだろうと。
理由は、他に目立つ存在がたくさんいたからだ。第一王子をはじめ、公爵家、侯爵家、伯爵家の嫡男達が、ご令嬢の人気を攫っていた。その中でリアムは美しいが、地味、と評されていた。
エルザはつくづく、あの時の第一王子の婚約者に選ばれなくて良かったと思う。第一王子は見た目だけは良かったが、頭がパッパラパーだった。婚約者を裏切り、平民の女性に熱を上げた。
そして、女性の言うままに行動した結果、国を滅ぼしかけたのだ。それには、派手な見た目の割に頭の悪い王子の友人達も関わっていた。王太子が反逆の罪に問われると、友人達も、罪からは逃れることが出来ず、没落したり、平民になったりした。
エルザが第二王子との婚約を結んだのは、この時に、魔道具で国を助けた功績に他ならない。第二王子は、第一王子のように、女遊びもしないし、何より馬鹿ではない。エルザとの間に恋愛感情はなくとも、お互いに同志として認め合う仲にはなれそうだった。
第一王子の一味として処分した家の中には、バルト伯爵家と懇意にしていた家もあった。よく調べると、伯爵夫人が主に動いていたようだ。バルト伯爵自身の関与は認められなかったので、お咎めはされなかったものの、伯爵夫人には監視がつくようになった。勿論王家の監視である。
貴族令嬢の中で、呪いが流行ったのもこの時期だった。今までは、好きな男性を振り向かせる為の魔法が流行ったのだが、所謂魅了魔法が禁術になったので、愛する人の愛する相手を呪うやり方にシフトチェンジしたらしい。
対抗するには、昔からの呪い返しが聞くと言う。妹のララと改良を加えて行き、ついにはあの魔道具を製作するに、至った。
バルト伯爵家は夫人をどうにかしないことには、身動きが取りづらいだろう。ララが以前から欲しがっていた実験体として、勧めてみるのはどうかしら。ご本人は身分の差に重きを置いているみたいだから、少しばかり横暴でも許してくれるはずだ。
その頃には、兄も、アリアの心を奪えていると良いのに。
女性の扱いに対してそれなりに慣れているはずの兄があそこまでヘタレだなんて、誰が予想したかしら。
でも、アリアは、あのカインでさえもヘタレにした実績があるのよね。ヘタレホイホイなのかしら。
次はヘタレを治す魔道具を作ろうかな。
エルザは初々しい兄の恋を応援していた。
2
お気に入りに追加
144
あなたにおすすめの小説

忙しい男
菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。
「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」
「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」
すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。
※ハッピーエンドです
かなりやきもきさせてしまうと思います。
どうか温かい目でみてやってくださいね。
※本編完結しました(2019/07/15)
スピンオフ &番外編
【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19)
改稿 (2020/01/01)
本編のみカクヨムさんでも公開しました。
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。


初恋の人と再会したら、妹の取り巻きになっていました
山科ひさき
恋愛
物心ついた頃から美しい双子の妹の陰に隠れ、実の両親にすら愛されることのなかったエミリー。彼女は妹のみの誕生日会を開いている最中の家から抜け出し、その先で出会った少年に恋をする。
だが再会した彼は美しい妹の言葉を信じ、エミリーを「妹を執拗にいじめる最低な姉」だと思い込んでいた。
なろうにも投稿しています。


妹は奪わない
緑谷めい
恋愛
妹はいつも奪っていく。私のお気に入りのモノを……
私は伯爵家の長女パニーラ。2つ年下の妹アリスは、幼い頃から私のお気に入りのモノを必ず欲しがり、奪っていく――――――な~んてね!?


もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない
もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。
……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる