浮気は私の方でした

mios

文字の大きさ
上 下
16 / 27

呪い返しの痕

しおりを挟む
新しく入った侍女の顔に呪い返しの痕があることについて、侍女ははじめ、口を割らなかった。

「君はまさか……アリアに呪いを掛けたのか?」

「あの身の程知らずに、制裁を加えただけです。貴方の婚約者はララ様ではありませんか?あんな下賤な女では、ないはずです。」

下賤……誰のことだ?

……アリアか?アリアが、下賤だと?

「アリアは子爵家のご令嬢だ。確かに伯爵家よりは下位だが、下賤と言われる程の身の上ではない。」

「それでも、侯爵家のララ様の方がお立場が上です。私はカイン様の為に、邪魔な方を排除しようと……」

カインは目の前にいる侍女の言うことが、全くわからない。この婚約者騒動は、そもそも王命だが、本当に婚約することも、ましてや婚姻することもないものだ。

次期王太子がほぼ決定している第二王子が、婚約者のエルザ様の実家であるヒーラー侯爵家を使って、自分に反旗を翻しそうな家をあぶり出した。

ララ嬢には会ったことはあるにはあるが、よくは知らず、興味も特にない。そこで、リアム様を使わないところが性格が悪いと思うのだが、婚約者役にカインが選ばれた。

カインの不満は、全貌について、何も知らされなかったことにある。知っていたら、アリアを取られることもなく、今のような状況に陥ることもなかったのに。

何となくしてやられたように、思い苛々が募る。ヒーラー侯爵家は、代々魔道具で生計を立てている。魔力も多く、呪いをかけられた人間を見ると放っておけない。

それにしても、アリアに、目をつけられたのは、不覚だった。アリアは大切に閉じ込めておくべきだった。それか契約時に、アリアには手を出さないようにちゃんと釘をさしておくべきだったのだ。

はあ…

ため息をついて、侍女に向き直る。

カインと、ヒーラー侯爵家の間で取り交わされた契約を知らなくて、侍女を扱うことができる相手は一人だけ。

「知らないなら教えておいてやる。お前のその瘤は、命令した相手にも反映される。お前だけに、辛い目を押し付ける気はないが、一月程は、呪い返しの痕は続くだろう。

私はそれまでにお前の解雇を進言するつもりだ。母上が命じたこととは言え、撤回することはない。勿論、紹介状はない。」

ここにきてようやくことの次第を理解した侍女が顔を青ざめさせたが、話は終わった。

カインは、足早に、実父の元に向かう。

「確かに俺の周りには面倒な女しかいないらしい。」

アリアをこんな自分のそばに置かなくてすんだと思えば、少しはスッキリしたものの、やはり気分は晴れなかった。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——? ⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。

一目惚れ

詩織
恋愛
恋も長くしてない私に突然現れた彼。 でも彼は全く私に興味なかった

初恋の人と再会したら、妹の取り巻きになっていました

山科ひさき
恋愛
物心ついた頃から美しい双子の妹の陰に隠れ、実の両親にすら愛されることのなかったエミリー。彼女は妹のみの誕生日会を開いている最中の家から抜け出し、その先で出会った少年に恋をする。 だが再会した彼は美しい妹の言葉を信じ、エミリーを「妹を執拗にいじめる最低な姉」だと思い込んでいた。 なろうにも投稿しています。

【完結】お忍びで占い師やってたら王子から「婚約破棄したい」と相談されました

恋愛
公爵令嬢であるアイシャは都の路地裏で『お忍び占い師』をやっていた。 ところがある日、占い師に変装したアイシャの元へ婚約者である王子が訪れる。 その相談内容は「婚約を破棄したいと思うんだが、どうだろうか」だった──。 心を閉ざした令嬢と突っ走る王子のドタバタ物語。 ※ ・当方気をつけてはおりますが、もし誤字脱字などを発見されたら遠慮なく申して下さい。すぐに直します。 ・2023/3/11(女性向け)HOTランキング2位ありがとうございました😊

見栄を張る女

詩織
恋愛
付き合って4年の恋人がいる。このままだと結婚?とも思ってた。 そんな時にある女が割り込んでくる。

妹は奪わない

緑谷めい
恋愛
 妹はいつも奪っていく。私のお気に入りのモノを……  私は伯爵家の長女パニーラ。2つ年下の妹アリスは、幼い頃から私のお気に入りのモノを必ず欲しがり、奪っていく――――――な~んてね!?

犠牲の恋

詩織
恋愛
私を大事にすると言ってくれた人は…、ずっと信じて待ってたのに… しかも私は悪女と噂されるように…

処理中です...