浮気は私の方でした

mios

文字の大きさ
上 下
9 / 27

魔道具を起動しました

しおりを挟む
クレアと、共に侯爵家から戻ると、侍女長が帰りを待っていました。旦那様からは、ヒーラー侯爵家に力を貸してほしい、とお願いされました。

少し話してから、自室に戻り、言われた通りに、魔道具のスイッチを入れます。何も起こりません。魔道具を使うのは初めてなので、失敗したかどうかもわかりません。それでもよく見ると細くヒビが入っているように見えます。

怖すぎてこれ以上触るのを諦めました。だらしないですが、ベッドにそのまま倒れ込みます。考えることがたくさんです。

色々なことがありすぎて、あんなに引きずっていたカイン様のことを考えることすら、忘れていました。それにしても、今まで雲の上の存在だった侯爵家の有名なご令嬢に会い、話をしたことが信じられないでいます。

今日私は慰謝料について、必死に期限をどうにかしていただこうとしていたのです。蔑まれるのは覚悟の上で。

それが……エルザ様とララ様の朗らかで気さくな様子を前に、私はただ戸惑っておりました。

それにしても、あの時の彼女がララ様ではなかったなんて、驚きです。けれど、その事実を知った後ですと、余計にカイン様とは幸せになれない、と思いました。だって、ララ様のような素敵な方と婚約しておいて、複数人と浮気しているのですよ。

婚約者がいながら、浮気する男性も、婚約者のいる男性と平気で浮気する女性もあり得ません。知らなかったとは言え、そちら側になろうとしていたのです。それこそ、あり得ません。

あの日からあの時の彼女に感じていた劣等感みたいなものは、今はありません。寧ろ、彼女ではなくて、良かったとさえ思います。

私はちゃんとカイン様をお慕いしていましたが、とても清い関係でした。貧乏でも貴族の娘です。男性と爛れた関係になるのは、勇気がいる事です。

クレアからの連絡により、次回のお手伝いは二日後です。私が以前に会った方を招いて、調べるそうです。

エルザ様には、その時にもう一人の味方を紹介して下さる、と聞きました。その方は、リアム・ヒーラー侯爵子息で、エルザ様とララ様のお兄様です。

エルザ様は、ご自身が悪人顔であると、気にされていましたが、お兄様とは似ていないそうです。

エルザ様は、悪人顔と言うよりは、利発そうな顔に見えます。誰からも認められているご令嬢ですのに、自分のことに関しては、自信がなくなる様子は不思議ではありますが、可愛らしく感じてしまいます。不敬でしょうか。




リシャール侯爵家では、新しい侍女見習いが入ってきました。私達が、屋敷を離れる間の補充要員です。彼女も、私と同じく、貧乏で学園に通えなかったようです。話を聞くと、勉強はしたかったようでしたが、自分の境遇を受け入れていました。早く慣れて貰うために、クレアが私にしてくれたように、私も彼女の力になりたいと思うのです。



魔道具は無くさないように、宝物を入れていた箱にしまいます。以前ならそれには、カイン様からの贈り物が入っていました。今はスッキリしたものです。


私は魔道具について全くの素人です。だから、この魔道具の真の力も知らなければ、説明を理解していませんでした。
しおりを挟む
感想 19

あなたにおすすめの小説

忙しい男

菅井群青
恋愛
付き合っていた彼氏に別れを告げた。忙しいという彼を信じていたけれど、私から別れを告げる前に……きっと私は半分捨てられていたんだ。 「私のことなんてもうなんとも思ってないくせに」 「お前は一体俺の何を見て言ってる──お前は、俺を知らな過ぎる」 すれ違う想いはどうしてこうも上手くいかないのか。いつだって思うことはただ一つ、愛おしいという気持ちだ。 ※ハッピーエンドです かなりやきもきさせてしまうと思います。 どうか温かい目でみてやってくださいね。 ※本編完結しました(2019/07/15) スピンオフ &番外編 【泣く背中】 菊田夫妻のストーリーを追加しました(2019/08/19) 改稿 (2020/01/01) 本編のみカクヨムさんでも公開しました。

私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。

さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。 許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。 幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。 (ああ、もう、) やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。 (ずるいよ……) リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。 こんな私なんかのことを。 友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。 彼らが最後に選ぶ答えとは——? ⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。

一目惚れ

詩織
恋愛
恋も長くしてない私に突然現れた彼。 でも彼は全く私に興味なかった

初恋の人と再会したら、妹の取り巻きになっていました

山科ひさき
恋愛
物心ついた頃から美しい双子の妹の陰に隠れ、実の両親にすら愛されることのなかったエミリー。彼女は妹のみの誕生日会を開いている最中の家から抜け出し、その先で出会った少年に恋をする。 だが再会した彼は美しい妹の言葉を信じ、エミリーを「妹を執拗にいじめる最低な姉」だと思い込んでいた。 なろうにも投稿しています。

見栄を張る女

詩織
恋愛
付き合って4年の恋人がいる。このままだと結婚?とも思ってた。 そんな時にある女が割り込んでくる。

妹は奪わない

緑谷めい
恋愛
 妹はいつも奪っていく。私のお気に入りのモノを……  私は伯爵家の長女パニーラ。2つ年下の妹アリスは、幼い頃から私のお気に入りのモノを必ず欲しがり、奪っていく――――――な~んてね!?

犠牲の恋

詩織
恋愛
私を大事にすると言ってくれた人は…、ずっと信じて待ってたのに… しかも私は悪女と噂されるように…

もう散々泣いて悔やんだから、過去に戻ったら絶対に間違えない

もーりんもも
恋愛
セラフィネは一目惚れで結婚した夫に裏切られ、満足な食事も与えられず自宅に軟禁されていた。 ……私が馬鹿だった。それは分かっているけど悔しい。夫と出会う前からやり直したい。 そのチャンスを手に入れたセラフィネは復讐を誓う――。

処理中です...