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魔道具を起動しました
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クレアと、共に侯爵家から戻ると、侍女長が帰りを待っていました。旦那様からは、ヒーラー侯爵家に力を貸してほしい、とお願いされました。
少し話してから、自室に戻り、言われた通りに、魔道具のスイッチを入れます。何も起こりません。魔道具を使うのは初めてなので、失敗したかどうかもわかりません。それでもよく見ると細くヒビが入っているように見えます。
怖すぎてこれ以上触るのを諦めました。だらしないですが、ベッドにそのまま倒れ込みます。考えることがたくさんです。
色々なことがありすぎて、あんなに引きずっていたカイン様のことを考えることすら、忘れていました。それにしても、今まで雲の上の存在だった侯爵家の有名なご令嬢に会い、話をしたことが信じられないでいます。
今日私は慰謝料について、必死に期限をどうにかしていただこうとしていたのです。蔑まれるのは覚悟の上で。
それが……エルザ様とララ様の朗らかで気さくな様子を前に、私はただ戸惑っておりました。
それにしても、あの時の彼女がララ様ではなかったなんて、驚きです。けれど、その事実を知った後ですと、余計にカイン様とは幸せになれない、と思いました。だって、ララ様のような素敵な方と婚約しておいて、複数人と浮気しているのですよ。
婚約者がいながら、浮気する男性も、婚約者のいる男性と平気で浮気する女性もあり得ません。知らなかったとは言え、そちら側になろうとしていたのです。それこそ、あり得ません。
あの日からあの時の彼女に感じていた劣等感みたいなものは、今はありません。寧ろ、彼女ではなくて、良かったとさえ思います。
私はちゃんとカイン様をお慕いしていましたが、とても清い関係でした。貧乏でも貴族の娘です。男性と爛れた関係になるのは、勇気がいる事です。
クレアからの連絡により、次回のお手伝いは二日後です。私が以前に会った方を招いて、調べるそうです。
エルザ様には、その時にもう一人の味方を紹介して下さる、と聞きました。その方は、リアム・ヒーラー侯爵子息で、エルザ様とララ様のお兄様です。
エルザ様は、ご自身が悪人顔であると、気にされていましたが、お兄様とは似ていないそうです。
エルザ様は、悪人顔と言うよりは、利発そうな顔に見えます。誰からも認められているご令嬢ですのに、自分のことに関しては、自信がなくなる様子は不思議ではありますが、可愛らしく感じてしまいます。不敬でしょうか。
リシャール侯爵家では、新しい侍女見習いが入ってきました。私達が、屋敷を離れる間の補充要員です。彼女も、私と同じく、貧乏で学園に通えなかったようです。話を聞くと、勉強はしたかったようでしたが、自分の境遇を受け入れていました。早く慣れて貰うために、クレアが私にしてくれたように、私も彼女の力になりたいと思うのです。
魔道具は無くさないように、宝物を入れていた箱にしまいます。以前ならそれには、カイン様からの贈り物が入っていました。今はスッキリしたものです。
私は魔道具について全くの素人です。だから、この魔道具の真の力も知らなければ、説明を理解していませんでした。
少し話してから、自室に戻り、言われた通りに、魔道具のスイッチを入れます。何も起こりません。魔道具を使うのは初めてなので、失敗したかどうかもわかりません。それでもよく見ると細くヒビが入っているように見えます。
怖すぎてこれ以上触るのを諦めました。だらしないですが、ベッドにそのまま倒れ込みます。考えることがたくさんです。
色々なことがありすぎて、あんなに引きずっていたカイン様のことを考えることすら、忘れていました。それにしても、今まで雲の上の存在だった侯爵家の有名なご令嬢に会い、話をしたことが信じられないでいます。
今日私は慰謝料について、必死に期限をどうにかしていただこうとしていたのです。蔑まれるのは覚悟の上で。
それが……エルザ様とララ様の朗らかで気さくな様子を前に、私はただ戸惑っておりました。
それにしても、あの時の彼女がララ様ではなかったなんて、驚きです。けれど、その事実を知った後ですと、余計にカイン様とは幸せになれない、と思いました。だって、ララ様のような素敵な方と婚約しておいて、複数人と浮気しているのですよ。
婚約者がいながら、浮気する男性も、婚約者のいる男性と平気で浮気する女性もあり得ません。知らなかったとは言え、そちら側になろうとしていたのです。それこそ、あり得ません。
あの日からあの時の彼女に感じていた劣等感みたいなものは、今はありません。寧ろ、彼女ではなくて、良かったとさえ思います。
私はちゃんとカイン様をお慕いしていましたが、とても清い関係でした。貧乏でも貴族の娘です。男性と爛れた関係になるのは、勇気がいる事です。
クレアからの連絡により、次回のお手伝いは二日後です。私が以前に会った方を招いて、調べるそうです。
エルザ様には、その時にもう一人の味方を紹介して下さる、と聞きました。その方は、リアム・ヒーラー侯爵子息で、エルザ様とララ様のお兄様です。
エルザ様は、ご自身が悪人顔であると、気にされていましたが、お兄様とは似ていないそうです。
エルザ様は、悪人顔と言うよりは、利発そうな顔に見えます。誰からも認められているご令嬢ですのに、自分のことに関しては、自信がなくなる様子は不思議ではありますが、可愛らしく感じてしまいます。不敬でしょうか。
リシャール侯爵家では、新しい侍女見習いが入ってきました。私達が、屋敷を離れる間の補充要員です。彼女も、私と同じく、貧乏で学園に通えなかったようです。話を聞くと、勉強はしたかったようでしたが、自分の境遇を受け入れていました。早く慣れて貰うために、クレアが私にしてくれたように、私も彼女の力になりたいと思うのです。
魔道具は無くさないように、宝物を入れていた箱にしまいます。以前ならそれには、カイン様からの贈り物が入っていました。今はスッキリしたものです。
私は魔道具について全くの素人です。だから、この魔道具の真の力も知らなければ、説明を理解していませんでした。
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