踏み台(王女)にも事情はある

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罪に見合った罰を

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「それで、これは提案なんだが……」リカルドに耳打ちされた罰は、イザベラのいる修道院に入り、罪を償うこと。

「あの場所は、『孤島の監獄』と呼ばれる外からの干渉を許さない場所だ。君を害する者は一切入って来ない。そこでは聖女の仕事はしなくて良いし、希望があれば勉強や職業訓練なども受けられる。

王女は入れ替わりに出ていくことにはなるが、多分君は気に入ってくれると思う。」

また、デリクは、神殿の人達に唆されて魔物の魔力を奪った時に聖女の体が毒に侵されたと指摘する。一度汚染された身体は治癒魔法を一定期間毎日受ける必要があるという。

治癒魔法を定期的に受ける為には、監獄は都合が良いらしい。

「シスターフローレンスは別の国で、救国の聖女と呼ばれていたお方だ。厳しいが優しい方だから、きっと力になって貰える。」

その言葉の通り、ビアンカは、八年ぶりに懐かしい顔ぶれと顔を合わせることになる。シスターフローレンスには、度々苦言を呈されることもあるが、理不尽な怒り方はしない為、毎日楽しく過ごせている。



イザベラは入れ替わりに出てきて、王女業と聖女業の仕事を余儀なくされた。とはいえ、神殿内部の膿を落としたり、反対勢力の解体などができた今、全てを背負い込むことはなくなった。

第三者機関のデリクとの一件は国王陛下の立ち合いのもとに、謝罪をして、蟠りを残さないように配慮した。

アイラール公爵家はエドワードの所業で連座が確定し、ダミアンも含め、罪に見合った罰を受けることとなった。

ただダミアンについては、聖女の魔法の影響を鑑み、医療修道院に送られ更生の道を辿ることになる。

魔物を助けたイザベラを、魔物は忘れることはない。彼らは義理堅く、借りは返すタイプらしい。

向こう三年間の平和に関する同盟を結ぶことで、貸し借りはなしになった。

「どうして三年なんだ?」
デリクは不思議に思う。

「三年経てば今回傷ついた彼らが力を取り戻すので。それまでにせいぜい良い関係を築くことにします。」

デリクにはそれ以上の理由を述べなかったが、イザベラには考えがあるようだった。デリクは彼女に許されたのかと安堵する。

「私を人柱から解放するきっかけは何だったんです?」

「ザイール卿に止められた、それだけです。でなければ、貴方を精神的に支配して聖女と婚姻を結び、誓約魔法で縛り、監視役にアイラール卿をつける覚悟でした。」

ケロッと涼しい顔をしてとんでもないことを話すイザベラ王女に、デリクは恐ろしくなる。

「そんな鬼畜な、とんでもないことを考えるのですね。」

「貴方にそれをいう資格、あります?」

心を許せる相手と許せない相手には態度が違うらしいイザベラは、デリクには当然辛辣だ。

イザベラと話していると、背中から感じる圧が凄い。

「ガーランド卿とはいつ婚姻をされるので?」
「半年後に。ビアンカを呼べないのは悲しいですが、彼女が幸せなら仕方ありません。」
「時に貴女はどこまで考えていらっしゃったのです?誰にも言いませんので教えていただくわけには?」

イザベラはただ笑って、デリクを嗜めた。

「ただの好奇心なら、やめておいた方がいいですよ。人間不信になったら大変ですもの。」

デリクはこれ以上聞いても、彼女が教えてくれることはないと悟り、追求を諦めた。

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