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誰かの思惑
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ガーランド卿は真面目に、デリクの質問に答えてくれた。一番意外だったのは、聖女の出身がこの国ではなく、デリクにも思い出が多いある国だったことだ。
デリクがその名を世界に知らしめた、ある事件がある。その舞台となったのが、聖女の出身だと言うある国だ。
とはいえ、今回のことにその事件は関係ない。要らぬ先入観は頭を鈍らせると、デリクは懐かしさに蓋をする。
デリクはガーランドから、ほぼ聞きたいことは聞けていた。やはり、魔物を討伐するにあたり、王女と周りで考え方に隔たりが出来ていた。
「魔物に情けなどかける必要はない」派と、「魔物を無闇に殺すのは先の争いを生むので避けるべき」派と。
聖女に会ってみて意外だったのだが、聞いていた年齢より随分と幼く、随分と小柄だったことだ。
「聖女様はあまり自分の意見を言うのが得意ではありません。その点は、王女様が上手く話をして彼女の意思を汲み取り、コミュニケーションを取っておられました。」
ガーランド曰く、その姿は姉妹のようで微笑ましく見えたとも。一方で、聖女様を押さえつけ、誘導していたのではないかと考える者達もいて、王女様はほとほと疲れていたらしい。
「今回の件を王女になすりつけられた者達は、うまくいって喜んでいるだろうな。」
「いえ、それが……聖女様が倒れ、不調が広がった頃からすっかり彼らを見なくなったのです。噂では病にいち早く倒れたと。今はもう寝たきりで立ち上がることすら困難だと。」
「それが今回の病が王女の仕業だと叫んだ者達か。」
「ええ、彼らからすれば、徳を積んでいる自分達より王女の方が魔法の恩恵を得ていることに僻みでもあったのでしょう。全く、不敬と取られて処刑もあったでしょうに。イザベラ様の温情に胡座をかいて。」
「ガーランド卿は、聖女側ではなく、中立に近いのか。」
「いいえ、やはり聖騎士なので聖女様寄りです。ただ、聖女様が生きるには、イザベラ様が必要だと理解しています。彼女がいなければ、多分聖女様は長くは生きられない。だから、王女様には帰って来ていただかないと困るんです。」
あくまでも、聖女の為に。何もできない聖女の為に王女に生きろ、と言うガーランド卿は確かに王女側の人間ではない。
デリクは立場上、そう言わざるを得ないガーランド卿を責められないものの、その暴論に苛々した。
そもそも、何故彼女は別の国から連れてこられたんだ?満足に魔法が使えない癖にどう言った経緯で聖女を名乗っている?何でも出来る王女を追いやってまで彼女を護る意味は何だ。
デリクが苛々しているのは、他にも理由がある。ずっと視界に入るアイラールもそうだが、デリク自身に纏わり付く、魔法の痕跡がところどころに見つかり、まるで王女のいない今、次の生贄として、デリクを取り込もうとしているように思えることだ。
何なら、聖女が正気であればそうなったかもしれない。
もしかしたら……デリクは考え得る最悪なケースに思いを馳せ頭を抱える。自分はまんまと、ここに誘い出されたのではないだろうか、と言う嫌な疑惑に辿り着く。
「ガーランド卿、貴方は聞いたら何でも答えてくれるのですよね。」
「私の答えられることであれば、です。」
「なら、私をこの場に連れてくることは、誰かの指示だったのですよね。聖女の治療をさせて、あわよくば王女の代わりに使ってやろうと。」
「あの方にどう言った思惑があったかは、正直わかりかねますが、概ね流れはそうです。聖女様の力を使い、貴方を聖女の伴侶として、この国に留まって貰えたら、と。」
デリクがその名を世界に知らしめた、ある事件がある。その舞台となったのが、聖女の出身だと言うある国だ。
とはいえ、今回のことにその事件は関係ない。要らぬ先入観は頭を鈍らせると、デリクは懐かしさに蓋をする。
デリクはガーランドから、ほぼ聞きたいことは聞けていた。やはり、魔物を討伐するにあたり、王女と周りで考え方に隔たりが出来ていた。
「魔物に情けなどかける必要はない」派と、「魔物を無闇に殺すのは先の争いを生むので避けるべき」派と。
聖女に会ってみて意外だったのだが、聞いていた年齢より随分と幼く、随分と小柄だったことだ。
「聖女様はあまり自分の意見を言うのが得意ではありません。その点は、王女様が上手く話をして彼女の意思を汲み取り、コミュニケーションを取っておられました。」
ガーランド曰く、その姿は姉妹のようで微笑ましく見えたとも。一方で、聖女様を押さえつけ、誘導していたのではないかと考える者達もいて、王女様はほとほと疲れていたらしい。
「今回の件を王女になすりつけられた者達は、うまくいって喜んでいるだろうな。」
「いえ、それが……聖女様が倒れ、不調が広がった頃からすっかり彼らを見なくなったのです。噂では病にいち早く倒れたと。今はもう寝たきりで立ち上がることすら困難だと。」
「それが今回の病が王女の仕業だと叫んだ者達か。」
「ええ、彼らからすれば、徳を積んでいる自分達より王女の方が魔法の恩恵を得ていることに僻みでもあったのでしょう。全く、不敬と取られて処刑もあったでしょうに。イザベラ様の温情に胡座をかいて。」
「ガーランド卿は、聖女側ではなく、中立に近いのか。」
「いいえ、やはり聖騎士なので聖女様寄りです。ただ、聖女様が生きるには、イザベラ様が必要だと理解しています。彼女がいなければ、多分聖女様は長くは生きられない。だから、王女様には帰って来ていただかないと困るんです。」
あくまでも、聖女の為に。何もできない聖女の為に王女に生きろ、と言うガーランド卿は確かに王女側の人間ではない。
デリクは立場上、そう言わざるを得ないガーランド卿を責められないものの、その暴論に苛々した。
そもそも、何故彼女は別の国から連れてこられたんだ?満足に魔法が使えない癖にどう言った経緯で聖女を名乗っている?何でも出来る王女を追いやってまで彼女を護る意味は何だ。
デリクが苛々しているのは、他にも理由がある。ずっと視界に入るアイラールもそうだが、デリク自身に纏わり付く、魔法の痕跡がところどころに見つかり、まるで王女のいない今、次の生贄として、デリクを取り込もうとしているように思えることだ。
何なら、聖女が正気であればそうなったかもしれない。
もしかしたら……デリクは考え得る最悪なケースに思いを馳せ頭を抱える。自分はまんまと、ここに誘い出されたのではないだろうか、と言う嫌な疑惑に辿り着く。
「ガーランド卿、貴方は聞いたら何でも答えてくれるのですよね。」
「私の答えられることであれば、です。」
「なら、私をこの場に連れてくることは、誰かの指示だったのですよね。聖女の治療をさせて、あわよくば王女の代わりに使ってやろうと。」
「あの方にどう言った思惑があったかは、正直わかりかねますが、概ね流れはそうです。聖女様の力を使い、貴方を聖女の伴侶として、この国に留まって貰えたら、と。」
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