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エミリー
思わぬ収穫
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ルーミス公爵家ではその日の夜、面白いものが見られた。
公爵家の娘ジュリアは兄ジョージアの顔がいつもと違うことに気がついた。
(今日は雨かしら)
そっと空を見上げただけなのに、兄は目敏い。
「私は寛大だから、妹の失礼な態度も見逃してやろう。」
「お兄様が機嫌がいいなんて、珍しいですわね。もしかして女神が見つかったとか?」
ジュリアは兄ジョージアが、その身分と容貌で、女性からの絶大な人気があるにもかかわらず、毎回露ほどの興味も持たないことから、その方面には興味がないか、男色かの疑いを持っていた。
男色については兄の知らないところで、兄をモデルにした本まで出てしまったことで、少々真実味を帯びてしまったが、身内としてそうではないはずだと思いたい。
少し前から、ローエル公爵家の次期公爵との縁談の話がでたところから兄の笑みが濃くなっていくのでまさかと思えば、あのオリバーとか言う息子の元婚約者に思いがあったようだ。
兄が理想が高すぎて、女神でも連れてこなくちゃいけないと言うジョークまで、でていたので、彼女が女神かということになる。
ジュリアはその持ち前の性格のキツさで、あまり友達ができないのだが、エミリーは頼めば友人になってくれそうに思った。
(お兄様が頑張って下さったら、義姉になるのよね。それなら、それからでも遅くはないかしら。)
「彼女はまさに女神だ。まさかそんなことがあるなんて……諦めずにいることは大事だな。」
ジュリアは兄の独り言のような言葉を聞いて思った。
(あの兄に目をつけられるだなんて、奇特な方。)
声に出してはない筈なのに、兄には心を読む能力でもあるのか、こちらを睨みつけている。
「時に妹よ、お前は勿論、私とパーティーに行くのだよな?」
「婚約披露のパーティーのこと?そのつもりだけど。あ、その女神と行きたいってこと?」
「いや、そうではない。彼女には新しい出会いがあるだろうから、それを邪魔することはできない。」
「お兄様がいながら、別の人と出会いを求めるの?」
「違う。私はただ婚約者候補に入れて貰っただけで、まだひとつの選択肢に過ぎない。どうせなら運命の目を授けてほしいじゃないか。」
「まさか、学園で警告が鳴り響いたってもしかして。」
「そう。彼女は運命の目の対象者だ。目を持つ人物はまだ誰かわからないが、誰が相手でも私が成り代わってみせる。」
「ええ……」
ジュリアは兄の発言に頭を抱える。兄は、昔からちょっと夢みがちなところがある。普通なら嫌がることでも、これと決めたら、どうしても欲しがるところが。
兄は欲しいのだろう。自分だけに許された自分だけのものを。候補の中から一つだけ、好きでいることを許された存在。
たった一人だけを永遠に愛することを兄は望んでいる。それは相手のことを考えてのものではない。多分、彼女が逃げたがっていたとしてもうまく丸め込んで、盲目的に愛でるつもりだ。
「しかも既に相手のいるかもしれない女性を……」
兄には悪いけれど、それには力を貸せない。ジュリアはエミリーがいずれ兄に絡め取られる際は、逃がそうと心に決めた。
公爵家の娘ジュリアは兄ジョージアの顔がいつもと違うことに気がついた。
(今日は雨かしら)
そっと空を見上げただけなのに、兄は目敏い。
「私は寛大だから、妹の失礼な態度も見逃してやろう。」
「お兄様が機嫌がいいなんて、珍しいですわね。もしかして女神が見つかったとか?」
ジュリアは兄ジョージアが、その身分と容貌で、女性からの絶大な人気があるにもかかわらず、毎回露ほどの興味も持たないことから、その方面には興味がないか、男色かの疑いを持っていた。
男色については兄の知らないところで、兄をモデルにした本まで出てしまったことで、少々真実味を帯びてしまったが、身内としてそうではないはずだと思いたい。
少し前から、ローエル公爵家の次期公爵との縁談の話がでたところから兄の笑みが濃くなっていくのでまさかと思えば、あのオリバーとか言う息子の元婚約者に思いがあったようだ。
兄が理想が高すぎて、女神でも連れてこなくちゃいけないと言うジョークまで、でていたので、彼女が女神かということになる。
ジュリアはその持ち前の性格のキツさで、あまり友達ができないのだが、エミリーは頼めば友人になってくれそうに思った。
(お兄様が頑張って下さったら、義姉になるのよね。それなら、それからでも遅くはないかしら。)
「彼女はまさに女神だ。まさかそんなことがあるなんて……諦めずにいることは大事だな。」
ジュリアは兄の独り言のような言葉を聞いて思った。
(あの兄に目をつけられるだなんて、奇特な方。)
声に出してはない筈なのに、兄には心を読む能力でもあるのか、こちらを睨みつけている。
「時に妹よ、お前は勿論、私とパーティーに行くのだよな?」
「婚約披露のパーティーのこと?そのつもりだけど。あ、その女神と行きたいってこと?」
「いや、そうではない。彼女には新しい出会いがあるだろうから、それを邪魔することはできない。」
「お兄様がいながら、別の人と出会いを求めるの?」
「違う。私はただ婚約者候補に入れて貰っただけで、まだひとつの選択肢に過ぎない。どうせなら運命の目を授けてほしいじゃないか。」
「まさか、学園で警告が鳴り響いたってもしかして。」
「そう。彼女は運命の目の対象者だ。目を持つ人物はまだ誰かわからないが、誰が相手でも私が成り代わってみせる。」
「ええ……」
ジュリアは兄の発言に頭を抱える。兄は、昔からちょっと夢みがちなところがある。普通なら嫌がることでも、これと決めたら、どうしても欲しがるところが。
兄は欲しいのだろう。自分だけに許された自分だけのものを。候補の中から一つだけ、好きでいることを許された存在。
たった一人だけを永遠に愛することを兄は望んでいる。それは相手のことを考えてのものではない。多分、彼女が逃げたがっていたとしてもうまく丸め込んで、盲目的に愛でるつもりだ。
「しかも既に相手のいるかもしれない女性を……」
兄には悪いけれど、それには力を貸せない。ジュリアはエミリーがいずれ兄に絡め取られる際は、逃がそうと心に決めた。
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