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エミリー
生徒会
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学園に行くと、ルカの姿はなかった。デートが途中で終わったことを謝りに来てくれたけれど、エミリーは偶々会えなかった為、そのことを謝ろうと思っていたのだけれど、ルカは卒業後入る予定の騎士団の関連で忙しく、学園には当分来れないらしい。
正直あの後、ルカの母の伯爵夫人から、謝罪を受けたため、今ではそれほど気にしていない。
あの時の夫人は美しい顔を怒りで真っ赤にして、ルカの態度に怒ってくれた。ルカは大丈夫だろうか、と少し心配したぐらい。
ルカに会えなかったことは、拍子抜けではあるが、ホッとしたことも事実だった。
(会いたくないわけではないが、時間が必要ね。)
その代わりと言う訳でもないが、今年もまた生徒会の手伝いを頼まれてしまった。以前のように生徒会に直接知り合いはいないのだけれど、キャサリンが、エミリーに紹介したい人がいると言うので、少し楽しみだ。
エミリーは散々だったデートの話を、いつもついてくれる新人の侍女につい、話してしまったのだが、その日に母が現れ、男性の選び方について、レクチャーを受けたのだった。
エミリーの母は社交界で知らない人はいないほどの、有名人だ。エミリーは父似だが、母似ならもう少し華やかな人生を送ることができただろうか。
母はエミリーの地味な容姿も、父に似て素敵だといつも褒めてくれる。だが母を知る人達からの不躾な視線からは、母は美しいのに、と言う蔑みが少し入っていると思うのは、考え過ぎだろうか。
「私が産んだのは確実だから、似ていなくても構わないのよ。」
そう母は笑っているが、エミリーは笑えない。周りに心ある者達だけではないからだ。
「でも、性格はよく似てるわよ?理不尽なことをされた時に自分が我慢すれば良い、と考えてしまうところ、とかね。
そう言う時に、自分よりも親身になって怒ってくれる人は大切になさい。後は自分の気持ちに正直になること。恋って難しく考えても意味はないの。恋に落ちるのは一瞬なのよ。その時に焦らないように、準備は万端にね。」
母の言葉を噛み締めるも、良くはわかっていないのは、恋をしたことがない所為だ。
生徒会は、貴族のみで構成されている。これは成績優秀者が貴族のみであったことと、貴族より平民の方が放課後に忙しいことが原因だった。平民の多くは経済的に余裕がない者なので、学生でありながら、仕事を持っている者も少なくはない。
また成績が優秀だと言っても身分の所為でやっかみの的になることもあり、身を守ることからも、生徒会は貴族のみ、と言う暗黙の了解があった。
生徒会には女生徒からの熱い視線を送られることもあり、多くは男性で構成されているが、女性はいる。そのうちの一人がキャサリンの友人である、ご令嬢だ。彼女は伯爵家の方で、エミリーとも面識はあるが、何故だかあまり関わって来なかった。
「ああ、こんにちは。貴女があの……」
言葉を濁し、含み笑いの彼女。
「ちょっと失礼でしょう。ちゃんと自己紹介しなさい。」
「とても優秀な人だって、滅多に人を褒めない先輩から聞いていたものだから。感じが悪くて、ごめんなさい。私はキャサリンの友人で伯爵家のカレン・ツイードです。宜しくね。」
最初に感じた不快感は、褒められた途端消えた。
「エミリー・トラッドと申します。よろしくお願いいたします。」
エミリーを褒めていた先輩とは誰なのか、カレン嬢に尋ねようと近づいた瞬間、扉の向こうから慌しく人が向かってくる音が聞こえてきて、目の前で扉が勢いよく開かれる。
現れたのは背の高い金髪の輝くような美貌の青年。綺麗すぎて少し冷たいように見える彼は見るからに嬉しそうに、エミリーの側に立つ。成る程、彼こそが、先程の話題に上がっていた「人を滅多に褒めない」先輩であり、キャサリンが言っていた、「私に紹介したい」人の一人だ。
「微力ながら、お手伝いに参りました。エミリー・トラッドと申します。」
「ジョージア・ルーミスです。トラッド伯爵令嬢にまたお会いできて、嬉しいです。」
流れるようにエミリーをエスコートし、ソファに通される。
当たり前だけど、こう言うことが自然にできるあたり、これはモテる訳だとエミリーは感心する。
とは言え、以前お目にかかった時とは驚くほどに表情が明るくなった彼に何が起きたのかはエミリーには、想像もつかなかった。
正直あの後、ルカの母の伯爵夫人から、謝罪を受けたため、今ではそれほど気にしていない。
あの時の夫人は美しい顔を怒りで真っ赤にして、ルカの態度に怒ってくれた。ルカは大丈夫だろうか、と少し心配したぐらい。
ルカに会えなかったことは、拍子抜けではあるが、ホッとしたことも事実だった。
(会いたくないわけではないが、時間が必要ね。)
その代わりと言う訳でもないが、今年もまた生徒会の手伝いを頼まれてしまった。以前のように生徒会に直接知り合いはいないのだけれど、キャサリンが、エミリーに紹介したい人がいると言うので、少し楽しみだ。
エミリーは散々だったデートの話を、いつもついてくれる新人の侍女につい、話してしまったのだが、その日に母が現れ、男性の選び方について、レクチャーを受けたのだった。
エミリーの母は社交界で知らない人はいないほどの、有名人だ。エミリーは父似だが、母似ならもう少し華やかな人生を送ることができただろうか。
母はエミリーの地味な容姿も、父に似て素敵だといつも褒めてくれる。だが母を知る人達からの不躾な視線からは、母は美しいのに、と言う蔑みが少し入っていると思うのは、考え過ぎだろうか。
「私が産んだのは確実だから、似ていなくても構わないのよ。」
そう母は笑っているが、エミリーは笑えない。周りに心ある者達だけではないからだ。
「でも、性格はよく似てるわよ?理不尽なことをされた時に自分が我慢すれば良い、と考えてしまうところ、とかね。
そう言う時に、自分よりも親身になって怒ってくれる人は大切になさい。後は自分の気持ちに正直になること。恋って難しく考えても意味はないの。恋に落ちるのは一瞬なのよ。その時に焦らないように、準備は万端にね。」
母の言葉を噛み締めるも、良くはわかっていないのは、恋をしたことがない所為だ。
生徒会は、貴族のみで構成されている。これは成績優秀者が貴族のみであったことと、貴族より平民の方が放課後に忙しいことが原因だった。平民の多くは経済的に余裕がない者なので、学生でありながら、仕事を持っている者も少なくはない。
また成績が優秀だと言っても身分の所為でやっかみの的になることもあり、身を守ることからも、生徒会は貴族のみ、と言う暗黙の了解があった。
生徒会には女生徒からの熱い視線を送られることもあり、多くは男性で構成されているが、女性はいる。そのうちの一人がキャサリンの友人である、ご令嬢だ。彼女は伯爵家の方で、エミリーとも面識はあるが、何故だかあまり関わって来なかった。
「ああ、こんにちは。貴女があの……」
言葉を濁し、含み笑いの彼女。
「ちょっと失礼でしょう。ちゃんと自己紹介しなさい。」
「とても優秀な人だって、滅多に人を褒めない先輩から聞いていたものだから。感じが悪くて、ごめんなさい。私はキャサリンの友人で伯爵家のカレン・ツイードです。宜しくね。」
最初に感じた不快感は、褒められた途端消えた。
「エミリー・トラッドと申します。よろしくお願いいたします。」
エミリーを褒めていた先輩とは誰なのか、カレン嬢に尋ねようと近づいた瞬間、扉の向こうから慌しく人が向かってくる音が聞こえてきて、目の前で扉が勢いよく開かれる。
現れたのは背の高い金髪の輝くような美貌の青年。綺麗すぎて少し冷たいように見える彼は見るからに嬉しそうに、エミリーの側に立つ。成る程、彼こそが、先程の話題に上がっていた「人を滅多に褒めない」先輩であり、キャサリンが言っていた、「私に紹介したい」人の一人だ。
「微力ながら、お手伝いに参りました。エミリー・トラッドと申します。」
「ジョージア・ルーミスです。トラッド伯爵令嬢にまたお会いできて、嬉しいです。」
流れるようにエミリーをエスコートし、ソファに通される。
当たり前だけど、こう言うことが自然にできるあたり、これはモテる訳だとエミリーは感心する。
とは言え、以前お目にかかった時とは驚くほどに表情が明るくなった彼に何が起きたのかはエミリーには、想像もつかなかった。
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