初恋は叶わないと知っている

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エミリー

人生初のデート

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デートの間中、手を繋ぎたい、と提案した時、ルカは一瞬変な顔をした。

途端にニヤニヤして、「しょうがないなぁ。」と言い、「まだまだお子様だな。」と馬鹿にした。

「デートの時は世の恋人達は手を繋ぐらしいわよ。」
「まあ、それはうちの両親もそうだけど。俺らは小さい時を思い出すよな。」
ルカはエミリーの手を取ると、意外そうにしている。

「こう見ると小さくて、やっぱり女の子なんだな。可愛いよ。」

手を取った時のドキドキ感を少し返してほしい。本当にこの人は私を愛そうと思っているのか?エミリーはルカに対して認識を改める必要がありそうだと考えていた。

体格は良いし、顔だって綺麗。気心は知れているし、まあ、楽は楽。だけれど。

友人としては良いけれど、恋愛には向かないって人はいるんじゃないかな。

それはでも、自分もそうかもしれない、と思い始めたのは、最初こそドキドキしたものの、すぐ慣れてしまったこと。それに、せっかく教えてもらった恋人繋ぎと言うのも、手汗が凄くてすぐにやめてしまった。

結局、二人の距離はあまり変化は感じなかった。

お芝居は純愛物だときいていたのに、蓋を開けると喜劇色が強めで、笑いを抑えきれなかった。ただ、二人して、馬鹿みたいに笑って楽しい時間だったのは言うまでもない。食事は新しい店を探そうと言って、貴族より平民がたくさん来る街の食堂みたいなところで食べたのだけれど、チラチラ見られていたみたいだから、やっぱり貴族ってバレたのかと思ったら、女性はルカの顔ばかり見ているようだった。

ある一人の派手な子が、エミリーが近くにいるのに、エミリーと繋いでいる手とは、反対の手を勝手に繋いで口説いてきたけれど、ルカは適当にあしらっていた。こちらをチラッと見て、笑いを含んだ表情で帰っていく女性にちょっと腹が立ったけれど、こちらからは何も言わなかった。

ああいう態度は貴族でも、平民でも同じらしい。それからは平民の生活圏に足を踏み入れたことが原因かはわからないけれど、何度となく彼に擦り寄ってくる女性が現れて、その度に疎外感を味わい、つまらなくなってしまった。

最初の何人かは断固として断る姿勢を見せていたルカも、途中で知り合いがいたらしく、自分から楽しそうに声をかけたりしている。それなのに、なぜかエミリーを紹介してくれる訳でもないらしい。

エミリーは退屈で手持ち無沙汰だった。話は終わりそうにないし、帰ろうと思い立つ。

「私、帰るわ。今日はありがとう。楽しかった。」
まだ時間が早かったけれど、平民女性に話しかけられて、楽しそうな彼はエミリーの方を見てもいない。

聞こえたのは、ルカの気をつけてな、と言う一言だけ。まあ、友人の時からたしかにそんな感じだったけど!そのことで抗議でもしようものなら、「だって護衛がいるじゃないか。」とか言いそう。

エミリーは色々と諦めて、遠くに離れて控えていた護衛を呼び、ルカを待たずに帰った。護衛が言うにはルカは鍛えているし、一人でも帰って来られるだろう、とのこと。

帰ってから、自室でまったりと侍女が入れてくれたお茶を飲みながら、デートって難しい、と思った。

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