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思ってたのと違う

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「だって、ずるいじゃない。苦労もせず、生まれた所が恵まれてるだけで、ルーカスだって、第三王子だって。マーガレット、マーガレット。私とは似ても似つかないって言うくせに、私を呼ぶだけ呼んで、あんたの昔話聞かされるとか、何の罰ゲームよ。あんたに会いに行きたいくせに、私で我慢してるのよ。何でも叶えられるはずの王族のくせに、何も持たないで、我慢して。何で、あの人が我慢ばかりしてるのに、あんた達はそんなに、幸せでいられるの?自分達のことしか考えないでいられるの?何であの人は、自分の幸せを諦めなきゃいけなかったの?」

あら?何だか思ってたのと違うわね。

貴女、良い方だったの?

私は何を聞かされているのかしら。
旦那様も無の表情をされているわね。

ん?これは何の話だったかしら。

この方、第三王子が好きなのに、相手をされなくて悲しいではなくて、第三王子が幸せになれないのが、悲しいって言ってるのよね。

あら、やっぱり良い方じゃない。

それで、私を恨むのはよくわからないけれど。

「あの、それでしたら、貴女が幸せにして差し上げたら?」

「だから、私には無理だって言ってるじゃない。マーガレットって言う名前は、あの人には何の役にも立たないし、寧ろ苦しめるだけだもの。」

はらはらと涙が次々に出てくるわ。なーんだ。この方、ちっとも悪い方じゃないじゃない。悪者を言い負かしたかったのに。

彼女に近づくのを、旦那様は戸惑いながらも止めたりはされなかった。

かわりにため息をついて、ぶつぶつと何かを呟いていた。

私は、彼女にハンカチを渡し、背中を撫でると、涙が更に溢れてきた。止めようとしたのに、更に泣くなんて。やっぱり嫌がらせなのかしら。

旦那様も近づいてきたわ。

「こんな筈ではなかったけれど、まあ、いいか。」そう言って顔を上げた。

「出て来難くなりましたが、どうぞ。」

「まあ、そう言うな。」

長身の人懐こい笑顔を宿した方がいらっしゃった。ああ、この方が。

私はご挨拶をして、まだ泣いているマーガレット様に目を向ける。

彼は、少し傷ついた様な瞳を、彼女に向けて跪いた。

「帰ろう。マーガレット。」

まさか愛妾を連れ戻すために、第三王子が来られるなんて、皆不思議そうな顔をしているわ。

私も同じ気持ち。第三王子を見たら、何か思うことがあるのかしら、とか思ったけれど、そうはならなかった。

拍子抜けだわ。

マーガレット様はヨロヨロと立ち上がった。第三王子の顔が少し甘くなったみたい。

何だ、気にして損したわ。十分相思相愛じゃないの。
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