おめでとうございます!今年の主役は貴女です!

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演技指導

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「先程のは、後ろを振り返ってニヤリと笑えば良かったかしら。」
何も言わず、振り返らずに来てしまった。今後殿下に真実の愛を振りかざして、私から婚約者を奪うのだから、わかりやすく挑発すればよかったかと、考える。

どうせ台本通りにはならないのだから、と思うが、映像を見た人がこちらを憎んでしまうのも避けたい。そう考えて、先程のは、今のままの方が良いだろうと、自ら結論づけた。

殿下は、深呼吸を繰り返し、嫌そうな顔を隠しもしない。

「殿下、お顔が雄弁すぎます。もう少し騙くらかしてください。」
「無茶を言うな。アレの相手をしなければいけないなんて、普通に罰ゲームだろ。」

「大丈夫ですわ。殿下は、いつも通りでよいのです。頑張るのは向こうの仕事ですわ。あとは、私に相手するような毒をお吐きにならなければ、大丈夫です。最悪、編集で何とか致しますので。」

その後も、何やら不貞腐れてはいたが、カーラ様と別れて、二人になった時に聞いてみると、ちゃんと従兄に、演技指導はされているようなので、やる気があるのかないのか、微妙なところだ。

「リディア、絶対に成功させる。」
急に真剣な顔をして、手の甲にキスを落とす。本当に性格が悪い。

クラスに入る前に顔が赤くなってしまう。妙に勘繰られてしまうではないか。

「殿下、宜しくお願いします。」
とびきりの笑顔を見せてやりましたわ。殿下は素直ではありませんが、私の笑顔に弱いのです。まあ、可愛い方だこと。

私に気を回す必要はございません。そんな暇があるなら、彼女を誑かすことだけ考えて下さい。きっと誰より見目麗しい貴方を狙ってきていただけるのですから。

「殿下、頼りにしてます!」
いつのまにか、側に他の役員たちが揃う。

「記録は任せてください!」
「殿下、緊張してるからって去年みたいに、カメラばっかり見るのは禁止ですよ!」

去年の殿下がカメラ目線だったのは、全くカメラに気付いていなかっただけなのだが、役員の彼らにとって、雲の上の王子様は、何でもお見通しに見えるようで、殿下の天然さには気がついていない。

不満そうにしながらも、殿下の緊張も少し解れたようだ。

殿下の護衛は、通常、殿下本人しか守れない。今回は、役員たちも殿下に陰ながらついていくので、充分気をつけて貰う必要がある。実は王宮の護衛を何人か内緒でつけている。本人達に言うと恐縮し、断られるので、完全に内緒の話だ。

だってこれはただの出し物ではないのだもの。真実の愛を使った結婚詐欺の実録を公表する一大イベントで、王家が主催なのだ。

何かがあっては、王家の責任になってしまう。それだけは避けなければ。

ただ毎年この辺りで役員の何人かが暴走してしまうのだが。



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