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配役

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「あれは、何だ。本気で言っているのか。」

先ほどまでいた彼らが帰っていき、後に残された私に、ようやく姿を表します。

「あら、殿下も、ご一緒にお話しすれば、よかったですのに。」

「頭が痛くなる。本当によく喋るな。だが、やはり知っていたか。」
「ええ。今回は、彼が言ったとおり、真実の愛を唄う彼女になりそうですわね。」
「ああ、耳まで痛い。あの馬鹿が、従兄がやらかさなければ、まだマシだったのだが。」

この方は我が王国の第一王子であり、王太子殿下のアーサー様です。学園で生徒会長をしております。そして、私と婚約者の間柄です。

私の紹介がまだでしたわね。失礼致しました。リディア・オーエンと申します。オーエン公爵家の娘ですの。生徒会では副会長をしております。

今は学園祭の、催し物を決めている最中なのです。

催し物を決めているのは、実は私達ではありません。いえ、生徒会と致しましては、自分達で決めたと、思わせる必要はございます。ですから先程のように、わざわざ生徒会役員同士で話をたくさんする機会を設けるのです。今回は役員の方がご存知でしたが、話題に上がらない場合は、私が噂と言った形で、皆様のお耳に入れて回るのです。

そうして、毎回、この啓発は、作られているのです。

自分達で考えていないのなら、どこからくるのか。それは、国家機密ですわ。殿下が教えてくださるのです。去年は、レーン伯爵のご子息が隣国から仕入れた麻薬を売り捌いていると言う情報がございましたので、彼を主役として、麻薬を使うとどうなるか、を記録して、見せ物としてお出ししました。

レーン伯爵は、お家ごと処分され、取り潰しとなりました。全く脚色はしておりませんの。見る人が見ればわかるのですわ。

貴族は平民達の模範となるべきなのです。曲がったことをされるのでしたら、躾けて真っ直ぐに矯正しなければなりませんよね。

そして、今回の題材は、真実の愛、なのです。殿下の従兄である、公爵令息と言うのは、私も、存じ上げている方です。公爵家の方の割に、合理的ではない少しホワホワした方で、私は昔から苦手な方でした。

政略結婚を毛嫌いされておりました。貴族に生まれたのに、そんな馬鹿な話は、と思いますが、市井の女に騙されたと言うことは、本物の馬鹿でしたのね。それなら、仕方がないですわ。

そして、彼を騙した市井の女は、どう言う訳か、最近男爵が引き取って育てているそうで、どうやら学園に転入してくるようなのです。

次は誰を狙うのでしょうか。それこそ、私達の罠に、かかって貰いたいのですが、どうなることでしょうか。

「私は、彼女の狙いは、殿下一択だと思いますわ。」
「私もそう思う。」

「これは、しっかりお仕置きして差し上げなくてはね。」
「…君の笑顔を久しぶりに見られて嬉しいよ。」
ちっとも嬉しくなさそうです。心の声が漏れすぎですわ。

この笑顔はお気に召さないようです。いつもなら顔を真っ赤にされますのに。

怖いのは、顔だけです。怯えないでくださいませ。
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