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叶わなかった大博打 ルイス視点
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彼女の婚約者候補になるために、打った大博打は、儚く散った。どこかでこの結末を読めていた自分はそこまでショックは受けていない。いや、やはりショックはショックか。
少しの間だけど、一緒にいられた日々はとても楽しく心地よく、だけどそばにいるだけで満足とはならないものだと、自分の欲深さも認識するほどだ。
彼女を見ていると、初めは危ういような頼りないような庇護欲を唆る、可愛い感じだったのに、あの薬を塗ると段々本来の彼女が主張してくる様が面白かった。
彼女は頼もしい兄弟に挟まれたからなのか、直情的で後先考えないタイプらしい。人を信じやすく、人は皆優しいものだと思っている。
彼女の周りには、彼女には優しい者達が存在しているが、彼女の兄弟含め皆が皆、ただ優しいのではない。
どちらかと言うと、優しくはない、と言われる人ばかりが揃っている。
自分だって、見た目のせいで柔らかく見られるだけで、性格はあまり良い方ではない。味方か敵かわからない相手に対しては話すことすらしない。それには人見知りと言うことも作用するのだけど。
親しく話せる仲には、当然兄もいる。兄は爵位を取らずに自分に譲ってくれた。ついでに、彼女の婚約者候補になることすら譲ってくれたのかと、勝手に思っていたのに、そうではなかったらしい。
彼女を最後には奪い去っていくなんて。
彼女が何か迷った時に相談するのは僕じゃなかった。彼女が笑顔以外を見せるのも僕じゃなかった。彼女が令嬢の振る舞いを忘れて、とびっきりの笑顔を見せるのも、甘えたような声を出すのも、彼女の目を覚まさせて、立ち上がらせたのも、全て僕じゃない。兄だ。
兄はそうして、彼女の内側を満たしていった。僕はいつも、自分が彼女に満たされていただけで、彼女がそれによって満たされるかどうかを確認さえしなかった。
だから、こうなることは、必然と言えよう。正直悔しさは残るが、あの兄ならば、絶対に彼女を幸せにしてくれるって思えるから。
兄には僕にはない魅力があるように、僕には僕にしかない魅力がある。二人がのんびりしている間に僕の方が先に幸せになってやる。
ただ博打は性に合わないから、今度は堅実に一歩一歩進めていこう。自分を偽って好意を得たところで、誰も幸せになれないだろうし、疲れてしまうから。
新しく爵位を得たことで、既に釣書が届いていると言う。未婚の男性で爵位持ちは、人気があるらしい。
「人見知りを先にどうにかしないといけないな。集団見合いでもするか。」
何か恐ろしい言葉がシガニ卿から放たれた気がするけれど、気のせいだと思おう。そんなことをされる前に誰か選んだ方が良いのか。
ふと手に取った釣書は、前に一度会ったことのあるご令嬢のものだ。
店にも来たことがある、気がする。
「ああ、このご令嬢は、ディオの店でお前を見染めたらしいぞ。店で購入したもののお礼も言いたいらしい。会ってみるか?」
「はい。」
集団見合いよりは、マシかと、会って見た彼女とは話が弾み、一人目にして婚約を決めたのはまた別の話。
少しの間だけど、一緒にいられた日々はとても楽しく心地よく、だけどそばにいるだけで満足とはならないものだと、自分の欲深さも認識するほどだ。
彼女を見ていると、初めは危ういような頼りないような庇護欲を唆る、可愛い感じだったのに、あの薬を塗ると段々本来の彼女が主張してくる様が面白かった。
彼女は頼もしい兄弟に挟まれたからなのか、直情的で後先考えないタイプらしい。人を信じやすく、人は皆優しいものだと思っている。
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親しく話せる仲には、当然兄もいる。兄は爵位を取らずに自分に譲ってくれた。ついでに、彼女の婚約者候補になることすら譲ってくれたのかと、勝手に思っていたのに、そうではなかったらしい。
彼女を最後には奪い去っていくなんて。
彼女が何か迷った時に相談するのは僕じゃなかった。彼女が笑顔以外を見せるのも僕じゃなかった。彼女が令嬢の振る舞いを忘れて、とびっきりの笑顔を見せるのも、甘えたような声を出すのも、彼女の目を覚まさせて、立ち上がらせたのも、全て僕じゃない。兄だ。
兄はそうして、彼女の内側を満たしていった。僕はいつも、自分が彼女に満たされていただけで、彼女がそれによって満たされるかどうかを確認さえしなかった。
だから、こうなることは、必然と言えよう。正直悔しさは残るが、あの兄ならば、絶対に彼女を幸せにしてくれるって思えるから。
兄には僕にはない魅力があるように、僕には僕にしかない魅力がある。二人がのんびりしている間に僕の方が先に幸せになってやる。
ただ博打は性に合わないから、今度は堅実に一歩一歩進めていこう。自分を偽って好意を得たところで、誰も幸せになれないだろうし、疲れてしまうから。
新しく爵位を得たことで、既に釣書が届いていると言う。未婚の男性で爵位持ちは、人気があるらしい。
「人見知りを先にどうにかしないといけないな。集団見合いでもするか。」
何か恐ろしい言葉がシガニ卿から放たれた気がするけれど、気のせいだと思おう。そんなことをされる前に誰か選んだ方が良いのか。
ふと手に取った釣書は、前に一度会ったことのあるご令嬢のものだ。
店にも来たことがある、気がする。
「ああ、このご令嬢は、ディオの店でお前を見染めたらしいぞ。店で購入したもののお礼も言いたいらしい。会ってみるか?」
「はい。」
集団見合いよりは、マシかと、会って見た彼女とは話が弾み、一人目にして婚約を決めたのはまた別の話。
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