馬鹿につける薬あります

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婚約者候補

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セドリックが持ってきた縁談は、シガニ卿が薦めたものらしい。従兄ではあるが、四人目のアレクよりも頼りになる長兄としてシガニ卿は頼れる存在だ。

スペンサーに懐いたのも元はと言えば、スペンサーの笑顔が少し彼に似ていたからだ。

彼が持ってきたのなら、間違いはないと思うが、できるなら余所見をせずに、向き合ってくれる人だと嬉しい。



辺境に住む男爵と、子爵は、卒業式後に丁度こちらに来るらしい。少し前から王都に滞在していたらしいから、すぐに来ると言っていた。

ルイスは何だかソワソワしている。私の緊張が移ったようだ。

「どんな方であっても、お嬢様を一番に考える人でなければ、私は認めません。」

サラは、キッパリと言い切って、ルイスもそれに賛同した。

「ルイスはこの方達との面識はないの?」

シガニ卿の知り合いなら、何か知っているか、と探りを入れてみるも、反応は悪い。

「会ってからのお楽しみでいいんじゃないでしょうか。お嬢様の素直な反応をあちらも待っていらっしゃるでしょうし。」

「緊張に効く薬、とかはないの?」
「何でも薬に頼るのはいかがなものかと思いますが、緊張に効く薬ですか……試してみるのもアリですね。割と需要はありそうですし。」


ルイスはそれから深い思考に入ってしまった。それでも護衛としては、ちゃんと使い物になるあたり、流石としか言いようがない。すぐに思考を止めて、ステラのそばに来る。

「顔合わせは、デイヴィスに任せます。顔合わせが終わりましたら、またお側に参りますので、ご安心ください。」

デイヴィスとは、ルイスが動けない時にたまに代わりに入る護衛だ。わかりやすい脳筋で可愛いワンコみたいな人。声が大きく、ガハガハ笑う。いい人だが、ステラは若干苦手にしている。

ルイスがいないと知って、急に不安になるものの、「公正を期す為です。」と、言われると、意味がわからなくて戸惑う。

どう言う意味?


意味はすぐにわかった。顔合わせの三人目が、ルイスその人だったから。

「え?男爵?平民じゃなかったの?」
「シガニ卿に、褒美として爵位を頂いたのです。兄に戴く予定が、兄が嫌がりまして、私に。」

彼が口にした公正ってこれのこと?でもそもそも最初から信頼関係を築いている時点で既に公正ではないような……

全て分かった上でシガニ卿は彼を薦めたのだろうけれど、他の候補者に一応は、配慮したのかな。

結果、私は悩みに悩んだ。ステラが真っ直ぐにルイスを選ぶと思っていたらしいシガニ卿は驚いたようだが、ステラの反応を見守ることにしたらしい。ルイスは、こちらが考えている間に着々と新しい薬を作り続けている。

『緊張を解す薬』も、売れ行きは好調のようで、あの店も儲かっていると言う。

あの店は、ルイスの兄がお小遣い稼ぎに始めたものだったらしいが、最近は客もまあまあ入るようになったことから、従業員を雇えるようになるまでになったらしい。

彼の口の悪さは相変わらずで会うたびに、暴言を吐かれるが悪い人ではないらしい。




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