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効果は積もっていくようで
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「お嬢様、ヨハン様が迎えに来られています。」
「は?」
王都にある屋敷をヨハンが訪ねてくるのは何かを盗む時で、それはステラのいない時に限られる。
「ずっと婚約者らしいことをしてこなかったことを反省してるんだ。一緒に行って貰えないかな。」
「急に来られましても、こちらにも準備がありますので。」
しどろもどろになりながら、些細な抵抗をするも、何処で調べたのか、はたまた偶然か、彼はいつも絶妙なタイミングで現れた。
ヨハンを客間に待たせたまま、用意を続けるサラに、相談する。
「あの薬が効き過ぎてるのかしら。どうやって使っているかを見られたら良いのだけど。」
サラは手を止める事なく、提案する。
「なら、見に行って来ましょうか。あと、あの店にも行って、つけ過ぎた場合の対処法なども聞いて来ますね。」
「ありがとう!お願いね!」
不安そうなステラを見ていたくなくてそうは言ったものの、この現象にあの薬は関係ないと、サラは思っている。
だからこそ、何を考えているか見に行きたくての提案だ。彼が学園で侍らせていたご令嬢達は軒並み学園を休んでいる。
彼女達の動向も知りたい。お嬢様を危険に晒すわけにはいかない。
「お嬢様には苦痛でしょうが、一応馬鹿は治りつつある、ということで、話をしてみるのも良いかもしれませんよ。」
ステラは、ヨハンが愚行を始めてから彼と会話をするのをやめてしまっていた。
「何を話せば良いの?態度が変わった訳でも聞いたら答えてくれるかしら。ああ、でもフリッツ先生に聞いてみるのも良いかもしれない。」
「フリッツ先生というのは、あの?」
「そう、カウンセラーをされている先生よ。周りに言えない悩みを相談できる、すごくフレンドリーな先生なの。男性なのだけれど、少し喋り方が面白くて。しかも、スペンサーの友人なのですって。」
「そんなにお嬢様がお世話になっていらっしゃるのでしたら、一度ご挨拶に伺わないといけませんね。」
「うーん、最初は胡散臭いと思うわ。話しているうちにその考えはなくなっていくけれど、壁を取り払うのが上手いのよ。気づいたら、話すつもりもないようなことまで、たくさん喋らされているのよ。不思議よね。」
準備が終わると、嫌そうにしながらも、ステラは待たせていたヨハンの元へ。
ヨハンは、ステラを見ると目を細め、綺麗だと呟くと、馬車までエスコートする。こうしてみると、中々お似合いの二人だが、ステラの魂は既に体から出かかっている。
サラに助けを求めるも、綺麗な笑顔で見送られてしまった。
ステラは諦めて、学園についたらフリッツ先生に相談しよう、と考えていた。
「帰りも一緒に帰ろう。授業が終わったら、迎えに行くから。」
「え?放課後は……」
「図書館に行く?」
「ええ、本を返して、また借りたいから。」
「わかった。じゃあ一緒にいこう。」
「いえ、一人で行けますので。」
待ってもらったら、ゆっくり選べないじゃない!
「君を放置していたことを後悔しているんだ。頼むからそばで守ることを承知してほしい。」
そうは言うけど、何から私を守るって言うんだろう。どちらかと言うとあなたから逃げたいのですけど?
「コレを君に。」
ヨハンが出したのは、緑色の石がついたブレスレット。
「お守りとして、つけておいてくれ。」
慣れた様子でステラの左手に装着すると、恥ずかしそうな笑顔をみせる。
そんな顔、初めて見た。
ステラは、あの薬のせいで、彼がこうなっていることを知っている。本来ならその顔をステラが見ることはなかった。
彼の婚約者という立場にありながら、見向きもされず、薬で縛りつけるなんて、私、横暴かしら。
ふと。申し訳ないような気分に陥るが、それが何に対しての、誰に対しての謝罪なのかはっきりわからなかった。
「は?」
王都にある屋敷をヨハンが訪ねてくるのは何かを盗む時で、それはステラのいない時に限られる。
「ずっと婚約者らしいことをしてこなかったことを反省してるんだ。一緒に行って貰えないかな。」
「急に来られましても、こちらにも準備がありますので。」
しどろもどろになりながら、些細な抵抗をするも、何処で調べたのか、はたまた偶然か、彼はいつも絶妙なタイミングで現れた。
ヨハンを客間に待たせたまま、用意を続けるサラに、相談する。
「あの薬が効き過ぎてるのかしら。どうやって使っているかを見られたら良いのだけど。」
サラは手を止める事なく、提案する。
「なら、見に行って来ましょうか。あと、あの店にも行って、つけ過ぎた場合の対処法なども聞いて来ますね。」
「ありがとう!お願いね!」
不安そうなステラを見ていたくなくてそうは言ったものの、この現象にあの薬は関係ないと、サラは思っている。
だからこそ、何を考えているか見に行きたくての提案だ。彼が学園で侍らせていたご令嬢達は軒並み学園を休んでいる。
彼女達の動向も知りたい。お嬢様を危険に晒すわけにはいかない。
「お嬢様には苦痛でしょうが、一応馬鹿は治りつつある、ということで、話をしてみるのも良いかもしれませんよ。」
ステラは、ヨハンが愚行を始めてから彼と会話をするのをやめてしまっていた。
「何を話せば良いの?態度が変わった訳でも聞いたら答えてくれるかしら。ああ、でもフリッツ先生に聞いてみるのも良いかもしれない。」
「フリッツ先生というのは、あの?」
「そう、カウンセラーをされている先生よ。周りに言えない悩みを相談できる、すごくフレンドリーな先生なの。男性なのだけれど、少し喋り方が面白くて。しかも、スペンサーの友人なのですって。」
「そんなにお嬢様がお世話になっていらっしゃるのでしたら、一度ご挨拶に伺わないといけませんね。」
「うーん、最初は胡散臭いと思うわ。話しているうちにその考えはなくなっていくけれど、壁を取り払うのが上手いのよ。気づいたら、話すつもりもないようなことまで、たくさん喋らされているのよ。不思議よね。」
準備が終わると、嫌そうにしながらも、ステラは待たせていたヨハンの元へ。
ヨハンは、ステラを見ると目を細め、綺麗だと呟くと、馬車までエスコートする。こうしてみると、中々お似合いの二人だが、ステラの魂は既に体から出かかっている。
サラに助けを求めるも、綺麗な笑顔で見送られてしまった。
ステラは諦めて、学園についたらフリッツ先生に相談しよう、と考えていた。
「帰りも一緒に帰ろう。授業が終わったら、迎えに行くから。」
「え?放課後は……」
「図書館に行く?」
「ええ、本を返して、また借りたいから。」
「わかった。じゃあ一緒にいこう。」
「いえ、一人で行けますので。」
待ってもらったら、ゆっくり選べないじゃない!
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そうは言うけど、何から私を守るって言うんだろう。どちらかと言うとあなたから逃げたいのですけど?
「コレを君に。」
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「お守りとして、つけておいてくれ。」
慣れた様子でステラの左手に装着すると、恥ずかしそうな笑顔をみせる。
そんな顔、初めて見た。
ステラは、あの薬のせいで、彼がこうなっていることを知っている。本来ならその顔をステラが見ることはなかった。
彼の婚約者という立場にありながら、見向きもされず、薬で縛りつけるなんて、私、横暴かしら。
ふと。申し訳ないような気分に陥るが、それが何に対しての、誰に対しての謝罪なのかはっきりわからなかった。
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