幼馴染は不幸の始まり

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本編

駒の役割と自覚

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第二王子は自分のことをとるに足らない人物であると自覚している。優秀な者は何も自分でなくとも構わない。寧ろ自分は優秀な者を遣う側でありたい。だから、ダニエル・ファーリとか言う癖の強い男だって、自陣に引き入れたし、たかだか子爵令嬢でしかないアリス・リゼットを自分の伴侶として選んでやった。

第二王子の婚約者はずっとミランダ・キエス侯爵令嬢だった。彼女は見た目はキツく見えるが、実際には男性がいないと生きていけない可愛い女で、そういう意味では令嬢らしくない。彼女は、第二王子と性格が合い、楽ではあったが、第二王子ともなれば、ただ合うだけの存在ならいくらでもいるものだ。

ミランダがキツいのは男性に対してではなく、第二王子の周りにいる令嬢達にである。彼女の独占欲は最初のうちは可愛いものだったが、そうは言ってられなくなってからは、いくらこちらが庇っても庇いきれないぐらいには彼女の嫉妬は、見苦しいものに変わっていった。



アリス・リゼット子爵令嬢に出会ったのは偶然……などではない。彼女のことだから、これ以上はないタイミングを綿密に調整されての出会いだったのだろう。

彼女は子爵令嬢にも関わらず高い教養と高い知性で第二王子の自分を釘付けにした。彼女と比べれば、他のご令嬢が全く別の生き物に見える。彼女はセルフプロデュースに長けていた。


あくまでも客観的に自分が有能であると誇示する彼女は第二王子の胸の奥に秘めた野望に火をつける。

彼女がいれば、兄に遅れをとることは無くなるんじゃなかろうか、と。

楽しければ良いと諦めていた自分の人生をより実りある人生に変えることができるのではないか、と。

その為には、ミランダよりも彼女こそが必要だと思ってしまったのだ。ミランダはうまく扱えば、自分の為に上手く立ち回ってくれるだろう。元より甘やかされた弊害か、同性には攻撃的で、情緒も不安定。上手く誘導すれば、望みの女性を喜んで害するだろう。

そんな彼女に襲撃される女を、アリスにしなかったところに、彼女の狡猾さがある。アリスはあくまでも巻き込まれた存在でなくてはならない。ミランダは昔から目の上の瘤として認識している女性がいたそうで、彼女をその被害者に仕立て上げようとしていた。

独自で調べたところ、アリスにも嫌いな女はいたらしい。彼女とミランダの嫌いが一致したことで、哀れな襲撃の被害者は決まってしまった。

第二王子の自分はその被害者を助けられないが、ミランダを捕らえ、本当のアリスを助けることで皆の人気を得る王子様役だ。何せ本物の王子なのだから、この役を他の誰にも任せることはできない、とすら思っていた。

だけど、第二王子はアリスの狙いを誤解していた。彼女が本気で第二王子が好きだという理由だけで彼に近づいたなどと盲目的に信じたのはそう彼女が誘導したからだ。彼女が第二王子を手懐けた理由はその方が簡単に目的を達せられると踏んだから。第二王子さえも彼女にかかればただの駒でそれ以上にはなり得ない。自分に自信のある者は、アリスには扱いやすい。

だって、自分が利用される立場であると最後まで気づかないのだもの。

上機嫌な第二王子を微笑みながら見つめ、頭は別のことを考える。アリスの頭の中はフル稼働で目まぐるしく動いていた。



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