幼馴染は不幸の始まり

mios

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本編

敵は中に外に

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鳥籠の中の鳥が、大空で飛ぶことを覚えたら、籠には帰って来ることはもうないだろうか。ゆっくりできる巣に帰るように羽を休めに戻って来ることは?

小さなダニエルが外の世界の恐ろしさを見せつけて、閉じ込めたいと思った宝物は、その思惑には見向きもせずに、大空を羽ばたく方を選んだ。ダニエルは一度失敗したぐらいで諦めた訳ではない。訳ではないが、今になって、籠の中にいることが安全である、と無条件に考えていた己を恥じた。

敵はどこにでもいる。例えば同じ鳥だと思っていた相手が実は猛禽類だったり、自分より小さいから、はるかに弱いと思った存在が、火事場の馬鹿力を出したり。自分が考えつくことは、別の誰かが考えつく可能性だってある。

ダニエルが折角大切に守り、戻した宝物を籠の中で握り潰そうと企む不届者だって、いるのだ。

キエス侯爵家には元令嬢と現在の二人の令嬢がいる。元令嬢のミランダは、偽アリスを名乗っていて、第二王子との愛を貫く為に、自らを子爵令嬢とした。

現在のキエス侯爵令嬢は、元は子爵令嬢でしかないが、うまく立ち回ることで自らの身分を正に頂点にまであげようと模索している。

彼女達の共通の足枷は、ダニエル・ファーリその人であり、前者がダニエルに、動きを求めていることに対して、後者は、全く別の働きを求めていることは、ダニエルにもわかっていた。

最終的には生きるか死ぬか。アリス・リゼットは、ダニエルとの共存を許さない日がいつか来るようなそんな気さえする。理由はズバリ、自分の考えを解らせないようにする為。謂わば、彼女と彼の思考は、まるで血を分けた兄弟のように理解できてしまうのだ。

だから、彼女が完全犯罪を思いついたら、ダニエルならばその謎を解いてしまう。逆もまた然り。それを抑止として牽制し合う生き方を選べればよいが、多分そうはならない。

近い内にダニエルはアリスから仕掛けられるだろう。

「今のうちにクラリッサに全てを明かしてしまった方が楽ではあるけれど。」

制約があるからそれは叶わない。ヴィクトルについてもアルバートに対しても、ダニエルには彼らがどのような動きをするのか予想すらできない。

彼らがどこまで自分の宝物を大切にしてくれるか、それが全くわからない。

ダニエルは自分がいなくなる前に、前の協力者であるミランダに、あるものを託した。これを宝物だと誤認するのは難しいだろうが、最悪彼女自身が自ら気がついてくれるだろうと、クラリッサを信じることにした。

丁度、クラリッサと、ヴィクトルは、偽アリスを捕獲したところだった。

ある意味、ダニエルらしいその手がかりをクラリッサが見つめて、首を傾げたあたりで、ダニエルの意識が落ちた。



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