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本編
謎の男
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「あの人、本当にアルバート様の知り合いかしら。」
アルバート様の素性はとても有名だが、知り合いなら絶対に知っておかなきゃならないことを彼は知らないと宣言した。
「アルバート・リースって言ってたわよね。」
確かに昔は彼の名前はアルバート・リースだった。リース公爵家に生まれた彼はフローラと同じく、リース姓を名乗っていた。だけど、今は師匠の内弟子に入ったことから、クラウの姓を名乗るようになり、リース公爵家の後継からは外れている。
「単に昔の名前で呼んでしまった、とかなら別に良いのよ。言い間違いとかね。問題は何らかの意味がある場合ね。」
「こんな時に肝心のアルバート様はいらっしゃいませんのね。」
彼がいないからこその護衛だから、当たり前のことなのだが、アルバートに直接話を聞けば一度で終わることが、解決しなくて、それがすごくもどかしかった。
元々フローラからの助言で、護衛になって貰った立場としては、アルバートに直接色々言っても良いのか、少し遠慮するところがあったけれど、何一つ解決していない今、半ばでポイと手を離されるというのは、予想していなかった。
「あのー、それで拒否していただいても良いのですが。使用人として、雇ってもらえませんか?私、こう見えて結構器用なんです。ザックさんは見たところお強そうですが、そうですね。侍従として試しにテストをしてみていただくことはできますでしょうか。」
「あら、貴方、まだ居たんですか?」
考えごとをしていたせいで、すっかり彼がまだいることに気がついていなかった。
私を助けると思って、なんて言い始めた男を、クラリッサは胡乱な目で見たが、男が動じることはない。
「使用人を雇う権限は私にはないので。」
「では、伯爵様に直談判しましょう。」
何でもないことのように勝手について来て、そのまま伯爵様に取り次ぎをお願いした後、最初から決まっていたかのように彼が侍従の制服を着ていたことから考えて、彼はどうやら貴族の、それも伯爵が恐縮するぐらいの人間であることがわかった。
でも、父は、特にクラリッサを叱らなかったし、彼の素性を口にすることもなかった。
ただ彼を護衛兼侍従で雇うと決めた父のおかげで、ザックを取り上げられてしまったのは痛かった。
「確かに見た目は怪しいが彼は信用できる。」という父の言葉が全て。クラリッサは、反抗する気もなく、彼を見守ることになった。それで無理ならその時に考える。クラリッサは割と行き当たりばったりな性格だった。
クラリッサの頭の中には懐柔された父の代わりに自分が何とか彼の本質を見極めてやる、と言った野心が目覚めていた。
なるべく取りこぼしがないように、彼を観察する為に見ていたのだが、彼はそれを別の意味に捉えていた、なんてきづくはずもなく。クラリッサは中身はアレだが見た目はまあまあ可愛らしく、イーサンさえいなければ、と周りに少なからず思っている男だっていたこともある。結局、あまりの鈍感さに、残らず去ってしまったのだが。
ヴィクトルは、クラリッサの見た目を気に入っていた。中身がポンコツであることには目を瞑り、当初の目的すら忘れて彼女に見惚れていた。
アルバート様の素性はとても有名だが、知り合いなら絶対に知っておかなきゃならないことを彼は知らないと宣言した。
「アルバート・リースって言ってたわよね。」
確かに昔は彼の名前はアルバート・リースだった。リース公爵家に生まれた彼はフローラと同じく、リース姓を名乗っていた。だけど、今は師匠の内弟子に入ったことから、クラウの姓を名乗るようになり、リース公爵家の後継からは外れている。
「単に昔の名前で呼んでしまった、とかなら別に良いのよ。言い間違いとかね。問題は何らかの意味がある場合ね。」
「こんな時に肝心のアルバート様はいらっしゃいませんのね。」
彼がいないからこその護衛だから、当たり前のことなのだが、アルバートに直接話を聞けば一度で終わることが、解決しなくて、それがすごくもどかしかった。
元々フローラからの助言で、護衛になって貰った立場としては、アルバートに直接色々言っても良いのか、少し遠慮するところがあったけれど、何一つ解決していない今、半ばでポイと手を離されるというのは、予想していなかった。
「あのー、それで拒否していただいても良いのですが。使用人として、雇ってもらえませんか?私、こう見えて結構器用なんです。ザックさんは見たところお強そうですが、そうですね。侍従として試しにテストをしてみていただくことはできますでしょうか。」
「あら、貴方、まだ居たんですか?」
考えごとをしていたせいで、すっかり彼がまだいることに気がついていなかった。
私を助けると思って、なんて言い始めた男を、クラリッサは胡乱な目で見たが、男が動じることはない。
「使用人を雇う権限は私にはないので。」
「では、伯爵様に直談判しましょう。」
何でもないことのように勝手について来て、そのまま伯爵様に取り次ぎをお願いした後、最初から決まっていたかのように彼が侍従の制服を着ていたことから考えて、彼はどうやら貴族の、それも伯爵が恐縮するぐらいの人間であることがわかった。
でも、父は、特にクラリッサを叱らなかったし、彼の素性を口にすることもなかった。
ただ彼を護衛兼侍従で雇うと決めた父のおかげで、ザックを取り上げられてしまったのは痛かった。
「確かに見た目は怪しいが彼は信用できる。」という父の言葉が全て。クラリッサは、反抗する気もなく、彼を見守ることになった。それで無理ならその時に考える。クラリッサは割と行き当たりばったりな性格だった。
クラリッサの頭の中には懐柔された父の代わりに自分が何とか彼の本質を見極めてやる、と言った野心が目覚めていた。
なるべく取りこぼしがないように、彼を観察する為に見ていたのだが、彼はそれを別の意味に捉えていた、なんてきづくはずもなく。クラリッサは中身はアレだが見た目はまあまあ可愛らしく、イーサンさえいなければ、と周りに少なからず思っている男だっていたこともある。結局、あまりの鈍感さに、残らず去ってしまったのだが。
ヴィクトルは、クラリッサの見た目を気に入っていた。中身がポンコツであることには目を瞑り、当初の目的すら忘れて彼女に見惚れていた。
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