10 / 30
本編
友人と好奇心
しおりを挟む
「お嬢様、お手紙が届いております。」
最近新しく家令の下についた侍従が、クラリッサ宛の手紙を持参する。
「ありがとう。」
差出人は学園で仲良くなった友人の伯爵令嬢。彼女は学園の図書室で、恋愛小説をきっかけに仲良くなった。溌剌とした可愛らしい女性である。
「ジュリエットから茶会の招待だわ。行きたいけど、これってアルバート様に護衛してもらわないといけないのかしら。」
勝手に出歩いて叱られるのは嫌だし、困るので聞いてみると、護衛としては勝手についていくので気にしなくて良いらしい。クラリッサにはわからないのだが、アルバートはクラリッサがどのように過ごしていても、何らかの仕組みで護衛ができるという。
詳細を説明されたからといってそれを此方が理解できるとは思わない。
クラリッサは当初の約束通り、アルバートにはあまり関わらないようにした。
ジュリエットの茶会が行われるカリウス伯爵家は広い薔薇園を所有しており、茶会の前後には見せて貰えるらしく、その機会が来るのを楽しみにしていた。
ジュリエットは隣国に従姉妹がいて、そのご令嬢が此方に遊びに来ているらしく、紹介したいと言ってきた。
「ジュリエットの従姉妹も刺繍が大好きなんですって。この機に仲良くなりたいから、何か作って持っていこうかしら。何か隣国で流行っているものはない?」
「隣国での流行はわかりませんが、薔薇園にあやかって薔薇の刺繍を施すのはいかがですか?」
「薔薇!良いわね。糸が必要だわ。赤と言っても一色では立体感がないから何色かで作らないと!」
茶会の人数は、主催のジュリエットと従姉妹のご令嬢と、隣国からついて来た仲良しのご令嬢だそうで。三枚ぐらいならこの期間でも可能だと、頑張って作ることにした。
刺繍は初めから上手だった訳ではない。ただ集中して手を動かす作業を繰り返すたびに、腕がどんどん上達していった。厳密には、婚約者が中々来なかったり、キャンセルされたりしている待ち時間の間に、刺繍が上手くなったクラリッサと、待ち時間で恋愛小説に詳しくなったジュリエット。互いに婚約者に恵まれていなかったことが仲良くなったきっかけなんて、とても皮肉だ。
ジュリエットは恋愛小説みたいな婚約破棄に巻き込まれて、当時の婚約者とはお別れをしているが、新たな婚約者は決めないのか気になるところだ。
ジュリエットの元婚約者を誑かした女狐は、他にも多くの婚約を壊した責任を取り、修道院に入ったそう。
ジュリエットは彼女が本当にちゃんと修道院に行くかどうか見届けたのだと言うから、その行動力に驚いた。
「あれだけのことをして、修道院で終わりだから。恨んだ相手に刺されたり襲われたりしないのかな、と思って。別に助けたいとかではないのよ。野次馬って言うの?あんな感じよ。趣味が悪いでしょう。」
彼女もまた政略結婚の相手をそこまで思ってはいなかった為に、彼女に対して特に恨みなどは抱かなかったらしい。
「彼女がどうこうじゃなくて、彼女に対する態度が熱狂的な人が何人かいたの。彼らが暴走して、彼女を逃したりしたら厄介じゃない?だから、見届けた、って言うね。我ながらお人好しなことをしたわ。」
それが丁度前回の茶会での話。
そして、今。ジュリエットは挨拶もそこそこに、キラキラした瞳で今度はクラリッサを見つめている。
「最近、あなたの周りが楽しいことになっていると聞いて飛んできたのよ。」
ジュリエットの従姉妹も、その友人も彼女と同じ目をしていたから、逃してくれないとはわかっていた。
彼女は生粋の恋愛小説脳。勝手に話せないと、断ったはずなのに、最終的に折れたのはクラリッサの方だった。
最近新しく家令の下についた侍従が、クラリッサ宛の手紙を持参する。
「ありがとう。」
差出人は学園で仲良くなった友人の伯爵令嬢。彼女は学園の図書室で、恋愛小説をきっかけに仲良くなった。溌剌とした可愛らしい女性である。
「ジュリエットから茶会の招待だわ。行きたいけど、これってアルバート様に護衛してもらわないといけないのかしら。」
勝手に出歩いて叱られるのは嫌だし、困るので聞いてみると、護衛としては勝手についていくので気にしなくて良いらしい。クラリッサにはわからないのだが、アルバートはクラリッサがどのように過ごしていても、何らかの仕組みで護衛ができるという。
詳細を説明されたからといってそれを此方が理解できるとは思わない。
クラリッサは当初の約束通り、アルバートにはあまり関わらないようにした。
ジュリエットの茶会が行われるカリウス伯爵家は広い薔薇園を所有しており、茶会の前後には見せて貰えるらしく、その機会が来るのを楽しみにしていた。
ジュリエットは隣国に従姉妹がいて、そのご令嬢が此方に遊びに来ているらしく、紹介したいと言ってきた。
「ジュリエットの従姉妹も刺繍が大好きなんですって。この機に仲良くなりたいから、何か作って持っていこうかしら。何か隣国で流行っているものはない?」
「隣国での流行はわかりませんが、薔薇園にあやかって薔薇の刺繍を施すのはいかがですか?」
「薔薇!良いわね。糸が必要だわ。赤と言っても一色では立体感がないから何色かで作らないと!」
茶会の人数は、主催のジュリエットと従姉妹のご令嬢と、隣国からついて来た仲良しのご令嬢だそうで。三枚ぐらいならこの期間でも可能だと、頑張って作ることにした。
刺繍は初めから上手だった訳ではない。ただ集中して手を動かす作業を繰り返すたびに、腕がどんどん上達していった。厳密には、婚約者が中々来なかったり、キャンセルされたりしている待ち時間の間に、刺繍が上手くなったクラリッサと、待ち時間で恋愛小説に詳しくなったジュリエット。互いに婚約者に恵まれていなかったことが仲良くなったきっかけなんて、とても皮肉だ。
ジュリエットは恋愛小説みたいな婚約破棄に巻き込まれて、当時の婚約者とはお別れをしているが、新たな婚約者は決めないのか気になるところだ。
ジュリエットの元婚約者を誑かした女狐は、他にも多くの婚約を壊した責任を取り、修道院に入ったそう。
ジュリエットは彼女が本当にちゃんと修道院に行くかどうか見届けたのだと言うから、その行動力に驚いた。
「あれだけのことをして、修道院で終わりだから。恨んだ相手に刺されたり襲われたりしないのかな、と思って。別に助けたいとかではないのよ。野次馬って言うの?あんな感じよ。趣味が悪いでしょう。」
彼女もまた政略結婚の相手をそこまで思ってはいなかった為に、彼女に対して特に恨みなどは抱かなかったらしい。
「彼女がどうこうじゃなくて、彼女に対する態度が熱狂的な人が何人かいたの。彼らが暴走して、彼女を逃したりしたら厄介じゃない?だから、見届けた、って言うね。我ながらお人好しなことをしたわ。」
それが丁度前回の茶会での話。
そして、今。ジュリエットは挨拶もそこそこに、キラキラした瞳で今度はクラリッサを見つめている。
「最近、あなたの周りが楽しいことになっていると聞いて飛んできたのよ。」
ジュリエットの従姉妹も、その友人も彼女と同じ目をしていたから、逃してくれないとはわかっていた。
彼女は生粋の恋愛小説脳。勝手に話せないと、断ったはずなのに、最終的に折れたのはクラリッサの方だった。
12
お気に入りに追加
1,438
あなたにおすすめの小説

(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?
水無月あん
恋愛
本編は完結してます。8/6より、番外編はじめました。よろしくお願いいたします。
私は、公爵令嬢のアリス。ピンク頭の女性を腕にぶら下げたルイス殿下に、婚約解消を告げられました。美形だけれど、無表情の婚約者が苦手だったので、婚約解消はありがたい! はれて自由の身になれて、うれしい! なのに、なぜ、近づいてくるんですか? 私に興味なかったですよね? 無表情すぎる、美形王子の本心は? こじらせ、ヤンデレ、執着っぽいものをつめた、ゆるゆるっとした設定です。お気軽に楽しんでいただければ、嬉しいです。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

婚約した幼馴染の彼と妹がベッドで寝てた。婚約破棄は嫌だと泣き叫んで復縁をしつこく迫る。
window
恋愛
伯爵令嬢のオリビアは幼馴染と婚約して限りない喜びに満ちていました。相手はアルフィ皇太子殿下です。二人は心から幸福を感じている。
しかし、オリビアが聖女に選ばれてから会える時間が減っていく。それに対してアルフィは不満でした。オリビアも彼といる時間を大切にしたいと言う思いでしたが、心にすれ違いを生じてしまう。
そんな時、オリビアは過密スケジュールで約束していたデートを直前で取り消してしまい、アルフィと喧嘩になる。気を取り直して再びアルフィに謝りに行きますが……


もう尽くして耐えるのは辞めます!!
月居 結深
恋愛
国のために決められた婚約者。私は彼のことが好きだったけど、彼が恋したのは第二皇女殿下。振り向いて欲しくて努力したけど、無駄だったみたい。
婚約者に蔑ろにされて、それを令嬢達に蔑まれて。もう耐えられない。私は我慢してきた。国のため、身を粉にしてきた。
こんなにも報われないのなら、自由になってもいいでしょう?
小説家になろうの方でも公開しています。
2024/08/27
なろうと合わせるために、ちょこちょこいじりました。大筋は変わっていません。

【本編完結】実の家族よりも、そんなに従姉妹(いとこ)が可愛いですか?
のんのこ
恋愛
侯爵令嬢セイラは、両親を亡くした従姉妹(いとこ)であるミレイユと暮らしている。
両親や兄はミレイユばかりを溺愛し、実の家族であるセイラのことは意にも介さない。
そんなセイラを救ってくれたのは兄の友人でもある公爵令息キースだった…
本垢執筆のためのリハビリ作品です(;;)
本垢では『婚約者が同僚の女騎士に〜』とか、『兄が私を愛していると〜』とか、『最愛の勇者が〜』とか書いてます。
ちょっとタイトル曖昧で間違ってるかも?

【完結】円満婚約解消
里音
恋愛
「気になる人ができた。このまま婚約を続けるのは君にも彼女にも失礼だ。だから婚約を解消したい。
まず、君に話をしてから両家の親達に話そうと思う」
「はい。きちんとお話ししてくださってありがとうございます。
両家へは貴方からお話しくださいませ。私は決定に従います」
第二王子のロベルトとその婚約者ソフィーリアの婚約解消と解消後の話。
⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎⭐︎
主人公の女性目線はほぼなく周囲の話だけです。番外編も本当に必要だったのか今でも悩んでます。
コメントなど返事は出来ないかもしれませんが、全て読ませていただきます。

愛人をつくればと夫に言われたので。
まめまめ
恋愛
"氷の宝石”と呼ばれる美しい侯爵家嫡男シルヴェスターに嫁いだメルヴィーナは3年間夫と寝室が別なことに悩んでいる。
初夜で彼女の背中の傷跡に触れた夫は、それ以降別室で寝ているのだ。
仮面夫婦として過ごす中、ついには夫の愛人が選んだ宝石を誕生日プレゼントに渡される始末。
傷つきながらも何とか気丈に振る舞う彼女に、シルヴェスターはとどめの一言を突き刺す。
「君も愛人をつくればいい。」
…ええ!もう分かりました!私だって愛人の一人や二人!
あなたのことなんてちっとも愛しておりません!
横暴で冷たい夫と結婚して以降散々な目に遭うメルヴィーナは素敵な愛人をゲットできるのか!?それとも…?なすれ違い恋愛小説です。
※感想欄では読者様がせっかく気を遣ってネタバレ抑えてくれているのに、作者がネタバレ返信しているので閲覧注意でお願いします…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる