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カトリーヌとの再会と

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「お兄様、お話は終わりましたか?」
カトリーヌの声が聞こえて、リラは咄嗟に扉の方に目を向けた。

そこには以前どこかで見た美女がいて、リラはあの時新聞で見た男女はユージーンと、カトリーヌであることを知った。

カトリーヌの所作は、リラの知っている彼女とは段違いに美しい。前とは違い、大切にされていることがわかって良かったと、畏れ多くも姉のような目線で彼女を思った。リラはどんな顔をして彼女に会えば良いか、かなり悩んでいたと言うのに、カトリーヌはあまりにも変わらない様子で平民のリラに駆け寄る。

「リラさん、良かった。」

カトリーヌは小柄で、虐待により発育は悪い。それでも前よりは健康そうな顔色でリラに抱きつく様子は、リラに、この子を守ってあげなくちゃ、と言う意識を抱かせた。

「カトリーヌ…‥様も、良かったです。お姫様みたいでとても可愛いですよ。」

「リラさん、私のことは前と変わらずカトリーヌと呼んでください。」
「無理です。私は平民で、貴女は公爵令嬢。不敬で死ぬのは嫌ですから。」

部屋の中にはカトリーヌを大切にしている人しかいない。私はその中では異質な存在で、彼らの信用を得られていないのだから、カトリーヌの好意に甘えるにはまだ早いのだ。

「カトリーヌ……様は、私などが侍女で良いのですか?」

「ええ、リラさんが私と一緒に淑女教育を受けるなら、私のお付きになった方が良いでしょう?伯爵夫人になるにしろ、職業婦人になるにしろ、公爵家で働いた実績は大きなプラスになると思うの。」

あのカトリーヌが、いつも誰かの後ろに隠れて自分の意見なども言えなかったカトリーヌが、とても成長している。

「リラさん?」
感慨深くなって、黙ってしまったリラに、不思議そうなカトリーヌ。

「失礼しました。カトリーヌ様がとても変わられた様子で感動してしまったのです。」

カトリーヌの屈託のない笑顔を見られて、リラはこの場にいられたことを含めてまたもや神に感謝した。

奇しくも醜聞に塗れた伯爵家と公爵家。どちらも似たような段階を経て若き当主が就任した。

「カトリーヌの件ではね、公爵家だけではなく、王家にもテコ入れが入ってね。王家の膿を吐き出して、改革を行なったんだよ。」

リラは知らなかったのだが、カトリーヌが受けていた仕打ちを王家が見逃していたと言うことがあったらしい。実際にはどこが積極的に関わっていたかは判明していないが、ユージーン達はすでにその黒幕を把握しているようだった。

膿を出して、空きになったところに、伯爵家を推薦し、バレット伯爵家とハダン公爵家に繋がりを作る。

「リラさんには、私付きの侍女として、伯爵家との連携を任せるから、その繋がりから、結婚と言う形を取りましょう。なりすましは、罪になるからダメだけど、平民同士、使用人同士の結婚に文句を言う人はいないと思うわ。」

あくまでもフリードはエリックの補佐として、エリックはあくまでも当主として、あるべき姿に戻されることとなった。

「その辺りのややこしいことは、王家に丸投げしよう。そのためにあれらは存在してるんだから。」

リラはユージーンの言葉に、含められた様々なことに思い当たったが、命が惜しいために、気がつかないふりをした。
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