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思わぬ再会
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公爵家での日々は、特に問題はなかった。でもリラが今こうなっているには何かが確実に起こっていた証拠なのだろう。リラは諦めて、人員募集していた酒場や商店を客として見に行って見た。貴族家だと有り得ないが、平民向けの店なら前もって雰囲気を探ることができる。
リラはお酒を飲める年齢に達している為、酒場でも働けるが、酔っ払いなどのあしらいをしたことがない為に、あまり治安の悪いところは不安だった。
「あれ、リラ?リラじゃないか?」
酒場に入る前に、誰かに呼び止められたリラは声のした方へ顔を向けた。そこには伯爵家でお世話になった元騎士の門番、ガイがいた。
「久しぶりだなぁ。元気だったか?」
ガイは面倒見の良いおじさんで、実際若い侍女の間では、第二の父のような存在だった。
「リラは無事で良かったよ。今は公爵家だったか?あれから伯爵家では色々なことがあってなぁ。」
ガイはこちらの反応を気にせず話し出す。彼はとても良い人ではあるが、話が長い。掴まってしまったことに諦めの気持ちを持ちながら、話を聞く。
彼の話を要約すると、伯爵家はあれから嫡男のエリック様が伯爵位を継いだという。それに伴い、前伯爵は隠居し、レーナ様と奥様は離縁なされたらしい。
「奥様は後妻で平民だったろう?前妻の奥様が生きていらっしゃった頃から伯爵の愛人だった奥様は、前妻の子であるエリック様を長年虐げていたらしい。義妹にあたるレーナ様も、エリック様を慕っていると思っていたのだが、実際には違ったらしいから恐ろしいよなぁ。
そういえば、リラが伯爵家を辞めたのは、旦那様とエリック様に色目を使ったからだと、奥様とレーナ様が断言していたが、お二方は、平民に厳しかったから、それが嘘だということは仲間は皆知っていたから、安心していいぞ。」
リラはガイの言葉に驚いた。奥様には嫌われていたから何となく言いそうだと思ったものの、まさかレーナ様までそんな風にリラを評価していたなんて。悲しくて涙が出そうだった。
「奥様は自分が昔通った道だからか、平民の身分の使用人にはリラのように虐めて、辞めさせて来たんだ。同じことをやり返されると被害妄想があったんだろう。」
確かに伯爵様にはいつも優しく声をかけて貰っていた。だけどそれは男性として、というよりは年頃の娘を持つ父親のような目線だった。
「まあ、確かに旦那様は、若い侍女が実際好みだったらしいし。あのままリラが伯爵家にいたなら、手を出されていたかもしれんな。」
「いえ、そんな。不敬罪で捕まりますよ?」
周囲を見渡して、ガイに早口で牽制すると、ガイは大丈夫だと笑っている。
「大丈夫、というのは、もうその件はハダン公爵家によってちゃんと嘘だと証明されている。ちゃんとリラが大切にされているようで、俺は嬉しいよ。」
「ガイ、実は喜んでいるところ悪いのだけれど、私今職がないの。何故か公爵家を解雇されてしまって。理由がわからないのよ。」
ガイに打ち明けるのは怖かった。彼にまでさっきの人みたいな冷たい目を向けられたらと思うと。だけど、彼には嘘をつけない。正直に話す。
ガイは瞳に怒りの表情を浮かべたが、怒りの矛先はリラではなかった。
「ど、どうしてだ?もしかしたら、公爵家は重大な過ちを冒しているんじゃないだろうな。リラ、君があの公爵家で起こった事件には関わっていない、と今から彼らに言いに行こう。きっとリラは巻き込まれただけなんだ。」
「ちょっと、待って?公爵家で起こった事件って何?何があったの?」
ガイは何も知らないリラに事件とやらの詳細を教えてくれた。
リラはお酒を飲める年齢に達している為、酒場でも働けるが、酔っ払いなどのあしらいをしたことがない為に、あまり治安の悪いところは不安だった。
「あれ、リラ?リラじゃないか?」
酒場に入る前に、誰かに呼び止められたリラは声のした方へ顔を向けた。そこには伯爵家でお世話になった元騎士の門番、ガイがいた。
「久しぶりだなぁ。元気だったか?」
ガイは面倒見の良いおじさんで、実際若い侍女の間では、第二の父のような存在だった。
「リラは無事で良かったよ。今は公爵家だったか?あれから伯爵家では色々なことがあってなぁ。」
ガイはこちらの反応を気にせず話し出す。彼はとても良い人ではあるが、話が長い。掴まってしまったことに諦めの気持ちを持ちながら、話を聞く。
彼の話を要約すると、伯爵家はあれから嫡男のエリック様が伯爵位を継いだという。それに伴い、前伯爵は隠居し、レーナ様と奥様は離縁なされたらしい。
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そういえば、リラが伯爵家を辞めたのは、旦那様とエリック様に色目を使ったからだと、奥様とレーナ様が断言していたが、お二方は、平民に厳しかったから、それが嘘だということは仲間は皆知っていたから、安心していいぞ。」
リラはガイの言葉に驚いた。奥様には嫌われていたから何となく言いそうだと思ったものの、まさかレーナ様までそんな風にリラを評価していたなんて。悲しくて涙が出そうだった。
「奥様は自分が昔通った道だからか、平民の身分の使用人にはリラのように虐めて、辞めさせて来たんだ。同じことをやり返されると被害妄想があったんだろう。」
確かに伯爵様にはいつも優しく声をかけて貰っていた。だけどそれは男性として、というよりは年頃の娘を持つ父親のような目線だった。
「まあ、確かに旦那様は、若い侍女が実際好みだったらしいし。あのままリラが伯爵家にいたなら、手を出されていたかもしれんな。」
「いえ、そんな。不敬罪で捕まりますよ?」
周囲を見渡して、ガイに早口で牽制すると、ガイは大丈夫だと笑っている。
「大丈夫、というのは、もうその件はハダン公爵家によってちゃんと嘘だと証明されている。ちゃんとリラが大切にされているようで、俺は嬉しいよ。」
「ガイ、実は喜んでいるところ悪いのだけれど、私今職がないの。何故か公爵家を解雇されてしまって。理由がわからないのよ。」
ガイに打ち明けるのは怖かった。彼にまでさっきの人みたいな冷たい目を向けられたらと思うと。だけど、彼には嘘をつけない。正直に話す。
ガイは瞳に怒りの表情を浮かべたが、怒りの矛先はリラではなかった。
「ど、どうしてだ?もしかしたら、公爵家は重大な過ちを冒しているんじゃないだろうな。リラ、君があの公爵家で起こった事件には関わっていない、と今から彼らに言いに行こう。きっとリラは巻き込まれただけなんだ。」
「ちょっと、待って?公爵家で起こった事件って何?何があったの?」
ガイは何も知らないリラに事件とやらの詳細を教えてくれた。
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