伯爵夫人を殺したのは誰だ

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ケイト・モリス⑥

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「実は私、リディの行方に心当たりがあるの。」

お金持ちの平民に、売られたように嫁いで行った彼女は、実は既に国を出て、外国で暮らしていると、マリアは言った。

ここだけの話、と言って、マリアは何故知っているのか不思議だが、リディの結婚の裏話をケイトに教えてくれた。

「両親に売られる予定だったのは本当だけど、元は別の人に買われる予定だったのよ。だけど、今のご主人に売られる金額より高い額で嫁ぐことになって、それは流れたの。しかもその金額でリディは元の家族と縁を切ったらしいから、二度と振り回されることはないわ。」

「でも、その相手の人は良い人なの?」
話を聞く限り、マリアは信頼してそうだけど、リディを買ったのは事実。今更何ができるわけもないけれど、大変な目にあっているなら助けたいと思った。

「平民だけど、裕福なのは、悪いことをしているからではないわ。真っ当な仕事よ。ただ普通のやり方だと、今回は助けられなかったから、人聞きの悪いやり方になってしまっただけ。」

「なるほどね。今はどうにか納得するしか無さそうね。ところで、マリアはどこからその情報を仕入れて来たの?」

「それは知らない方が良いかもしれないわ。」

マリアは急に言葉を濁して、多少違和感を感じる笑顔で尋ねた。

「ケイトは、シルバのことをどれだけ知っている?」

どういう意味かわからなくて、首を傾げると、マリアは首を横に振り、意味深なことを呟いた。

「リディは家族との縁を切っているの。勿論その家族に、シルバは含まれるわ。シルバとこれからも付き合う気なら、貴女にリディのアレコレは教えられない。ただシルバと縁を切ってくれるなら、教えるわ。これは今後貴女にも、知っておいてもらいたいことなの。」

ケイトの頭は混乱した。リディとシルバが特に仲が悪いようには見えなかった。

ただ縁を切ったとまで言っているのだから一時の喧嘩などではないのはわかる。よくよく思い返してみると、シルバについて話していたのは、リディに会った最初の間だけ。ケイトにだって兄はいるから、好きなだけではない複雑な感情は、何となくわかる。兄妹仲がずっと良いなんて、奇跡に近いということも。

「少し考えてみる。」
ケイトの言葉に、力強く頷いて、マリアは「良い返事を待っているわ。」と笑った。

シルバとリディに何があったのかは、調べたところで、外野にはわからないことかも知れない。だけど、ケイトはこのやり方以外知らない。

調べ始めて数日、ある知らせがケイトの元に飛び込んできた。エミリアがシルバに傷つけられたというそのニュースは、ケイト以外には知られた事実だといい、今の話ではなく、昔の出来事だったようだ。

だから、シルバとは会わないように言っていたのね。

エミリアと同じようなことを、リディにはずっとしていたのかしら?いや、まだ決めつけるのは早計よ。

シルバにも、言い訳はあるはずだから、聞いてみなくちゃ。ケイトは無意識にシルバの味方のような立ち回りをしていることに気づかないでいた。
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