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例え地獄に落ちようとも
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カトリーヌ嬢は、娼婦の母親と、貴族の父親を持つ。彼女の思った通り、貴族の落胤だが、彼自身は病でこの世を去っている。義父の妻の家系であったと言う事実は遂に掴めなかった。
扉をノックする音がして、サラが来たことを告げられる。
大方、ユーグから聞いてきたのだろう。カトリーヌ嬢が実の父親に会う為に隣国へ行き、多分もう帰ってこないことや、借金が全て清算されたことなどを。
エトワールは、この先サラと結婚して、隣国の王族がこちらにきた時に、真実を教えてやるのも一興だと思ったが、サラの命を守る為、それは避けた。代わりに隣国から侯爵夫妻を呼ぶことにした。カトリーヌ嬢と話をしていたのなら、自分達の孫が実は生きていると知って喜んでいる筈だ。
サラに彼らの正体を告げることは叶わなくても、祝福の瞬間に立ち会うことぐらいは許されていい。
サラに向き合うと、結婚の許しが出たことを告げる。隣国の曰く付きのご令嬢はすでに出国していった。今この国にいるのは、ただの伯爵令嬢だ。サラは伯爵夫妻に愛されて、厳しく躾けられ、真っ直ぐな性格に育った。
彼女が知らない昔の両親の行いで、不当な扱いを受けるなんて、耐えられなかった。
彼女を監視していたのは、紛れもないエトワール自身だ。彼女を見張り、不穏なことがあれば、すぐに対処できるように、プライバシーなど忘れて、監視し続けた。
結果、サラを好きになってしまった。念のためにサラには魔力がないことは何年かに一度調べて貰った。
サラは自分が魔法を使えないことを気にしていたが、なくて良かった。少しでも魔力があればそれこそ、アウトだった。こちらがどれほど頑張ろうとも、サラは隣国へ返されてしまっただろう。
エトワールは、サラの笑顔を見ながら、この笑顔を守る為に生きることを誓う。この笑顔が曇ることがないように、たとえ地獄に落ちようとも、サラの実の両親についての秘密は墓場まで持っていく。
隣国の王位継承権争いについては、何も言えない。私は王位継承権を放棄したからだ。サラを好きになって、彼女さえ手に入るなら、王位継承権など、いらなくなった。私にとっては、それぐらいのものだ。
正直に言えば、自分は国王の器ではない。表に立つのは嫌いだ。裏から色々策を巡らせる方が楽しい。だから、私は臣下でありたい。
それは第二王子もそうだったらしい。第三王子を矢面に立たせて、自分は家族共々臣下に降ったのは、最初からの計画なのか、仕組まれたのか。兄を蹴落としてまで、何がしたかったのかは、わからない。
わかりたくもない。
彼らが、私のサラに危害を加えないのなら、どうでもいい。
「エトワール様?今日はご機嫌ですね。」
顔を真っ赤にしているサラは可愛い。カトリーヌ嬢は地味だと言ったが、私とは美的感覚が合わないらしい。
サラの可愛らしさがわからないなんて、本当に残念な娘だ。
ただ彼女には本当に感謝している。サラが君を見捨ててくれたから、私は動くことができたんだ。
サラに見捨てられるように振る舞ってくれてありがとう。隣国での生活が少しでも苦痛のないものになるように祈っている。
扉をノックする音がして、サラが来たことを告げられる。
大方、ユーグから聞いてきたのだろう。カトリーヌ嬢が実の父親に会う為に隣国へ行き、多分もう帰ってこないことや、借金が全て清算されたことなどを。
エトワールは、この先サラと結婚して、隣国の王族がこちらにきた時に、真実を教えてやるのも一興だと思ったが、サラの命を守る為、それは避けた。代わりに隣国から侯爵夫妻を呼ぶことにした。カトリーヌ嬢と話をしていたのなら、自分達の孫が実は生きていると知って喜んでいる筈だ。
サラに彼らの正体を告げることは叶わなくても、祝福の瞬間に立ち会うことぐらいは許されていい。
サラに向き合うと、結婚の許しが出たことを告げる。隣国の曰く付きのご令嬢はすでに出国していった。今この国にいるのは、ただの伯爵令嬢だ。サラは伯爵夫妻に愛されて、厳しく躾けられ、真っ直ぐな性格に育った。
彼女が知らない昔の両親の行いで、不当な扱いを受けるなんて、耐えられなかった。
彼女を監視していたのは、紛れもないエトワール自身だ。彼女を見張り、不穏なことがあれば、すぐに対処できるように、プライバシーなど忘れて、監視し続けた。
結果、サラを好きになってしまった。念のためにサラには魔力がないことは何年かに一度調べて貰った。
サラは自分が魔法を使えないことを気にしていたが、なくて良かった。少しでも魔力があればそれこそ、アウトだった。こちらがどれほど頑張ろうとも、サラは隣国へ返されてしまっただろう。
エトワールは、サラの笑顔を見ながら、この笑顔を守る為に生きることを誓う。この笑顔が曇ることがないように、たとえ地獄に落ちようとも、サラの実の両親についての秘密は墓場まで持っていく。
隣国の王位継承権争いについては、何も言えない。私は王位継承権を放棄したからだ。サラを好きになって、彼女さえ手に入るなら、王位継承権など、いらなくなった。私にとっては、それぐらいのものだ。
正直に言えば、自分は国王の器ではない。表に立つのは嫌いだ。裏から色々策を巡らせる方が楽しい。だから、私は臣下でありたい。
それは第二王子もそうだったらしい。第三王子を矢面に立たせて、自分は家族共々臣下に降ったのは、最初からの計画なのか、仕組まれたのか。兄を蹴落としてまで、何がしたかったのかは、わからない。
わかりたくもない。
彼らが、私のサラに危害を加えないのなら、どうでもいい。
「エトワール様?今日はご機嫌ですね。」
顔を真っ赤にしているサラは可愛い。カトリーヌ嬢は地味だと言ったが、私とは美的感覚が合わないらしい。
サラの可愛らしさがわからないなんて、本当に残念な娘だ。
ただ彼女には本当に感謝している。サラが君を見捨ててくれたから、私は動くことができたんだ。
サラに見捨てられるように振る舞ってくれてありがとう。隣国での生活が少しでも苦痛のないものになるように祈っている。
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