望んだことをしてあげただけなのに、妹が烈火のごとく怒り出したのですが

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結局こうなる

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「結局こうなったわね。」
グレータは、自分の娘の性根を誰よりも理解していた。
「息子だけでも手放さずに済んで良かったと捉えるべきなのよね。」




あの後、修道院に向かう最中、まんまと逃げおおせたロザリアが逃げた先には兄がいた。

その後馬車に乗せられて、修道院まで付き添われたおかげでロザリアはそれ以上は反抗が出来なくなった。護衛もいない馬車だったので逃げるのが簡単だったことにロザリアは気づくべきだった。

「手紙を読むなんて、酷いわ。」
「そこまで信用されていない自分を恥じろ。お前は色々やりすぎたんだ。システィーナの苦労が今になってわかったよ。今となっては、お前を可愛いと思っていた自分が馬鹿みたいだ。」
「酷いわ、お兄様。」
「何が酷い、だ。それはこちらの台詞だ。お前のせいで、こちらも危なくなってるんだ。わかってるのか。自分だけが被害者みたいな顔をするな。」

アレクシスに付いてきた護衛は、二人の会話を聞きながらどちらも似た者同士じゃないか、と思った。どちらも反省どころか、互いを罵ってばかり。システィーナ様や、マイルズ様なら、多分……と考えてそんな考えがそもそも不毛だと気がついた。どんな局面になっても本来の性格はそうも変わるものではない。寧ろ、ピンチに陥れば陥るほど、本性が現れるというもの。護衛は小さく溜息をついて、思考を放棄した。




あの日、ロザリアが書いた手紙は全て兄アレクシスに委ねられた。ロザリアが手紙を渡した人物は別人だったがそれもアレクシスの仕込みだ。アレクシスにとって似た思考の持ち主であるロザリア。彼女のやりそうなことを考えるのは得意だった。ただ一点だけ違うことと言えば、ロザリアが自分自身に魅力があると考えている点だけ。アレクシスは、自分から「侯爵家次期当主」という装飾がなくなれば、魅力というものはゼロどころかマイナスになることを充分に理解している。

だから、自分に自信がある者がやりそうなことと考えて…….自分に魅力を感じていそうな異性を誑かすだろうな、と判断したのである。

ある意味、それが大当たりで。本人は喜んで良いのか複雑な気持ちになった。ただこのおかげで、母からギリギリ許されたのだと思うと、素直に喜ぶべきだろう。


手紙は勿論全て宛先には届けられなかった。中身が白紙のものもあったし、謝罪を書いてあっても、全く反省していない様子が文面から読み取れる散々な内容に、侯爵家からは出さない方が良いという結論に達した。

そして一通だけびっしりと謝罪の念が書かれたある人物への手紙から読み取れたのは、「貴方だけのロザリアになるから、迎えに来て。」という意味のわからない文章でその下に、修道院へ移送する日時と道のりが書いてあった。道のりをどう調べたのかはわからないが、移送する手段を変えるのもありだな、とアレクシスは思った。少し遠回りになっても違う道筋なら、妹を絶望させられる。そう思ったのだが。




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