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兄とつまらないプライド
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アレクシス・ローレンは、契約書を読むことが苦手だ。契約書をよく読まなくては自分が不利な契約を結ばされることがある。それは過去に思い知ったことだ。
アレクシスは、今まで侯爵家の長男としてうまくやっていると思っていた。いくら母が弟の方が後継に相応しいと主張していても、当主の意見が通ると思っていたし、何もしなければ結局は母も折れて自分を後継者として認めてくれると思っていたのだ。
何もしなければ、とは言え自分が侯爵家をよくするために交わした初めての契約は、妹システィーナによってなかったことになった。
功を焦った訳ではないが、友人からの儲け話を聞く限り、詐欺だと気がつかなかったのは自分の落度だ。これまで色々な場面で助けてくれた友人を信じてしまったのが仇となった。
「人を信じることは素晴らしいことですが、背景を少し調べてからでも遅くはなかったのでは?」
「何をいう。それならチャンスを逃していたかもしれないんだ。今なら間に合うと言われて……」
飛びついた結果、詐欺に遭ったのだから、妹の言う通りそうするべきではなかったのだ。
システィーナの言うことはいつも正しい。だけど、素直にそれを認めたくない気持ちがある。妹はバカにするが兄としてなけなしのプライドが、自分にだってある。
システィーナに取り次いでほしくて母を訪ねると、その場にはマイルズがいた。弟は、何か言いたいことでもあるのかチラチラと、こちらを窺っていたが、母に止められていた。
このままでは、侯爵家の次期当主の座は弟のものになってしまう。
母から言い渡された課題は、システィーナと向き合うこと。その際、誰の力も借りてはいけない。
マイルズは可愛い弟だが、母の信頼を得ているところが気に入らない。ロザリアやアレクシスよりもシスティーナの話をよく聞くし、使用人達の態度もどこかアレクシスやロザリアとはまた違う。
まるで、マイルズには敵わないのだと暗に言われているようで気分は悪かった。
ロザリアは昔からずっと家のことには無頓着だった。チヤホヤされたいだけの妹で少し褒めたり、声をかけてやると、機嫌が良くなる。金遣いの荒さだけは少し忌々しくは思ったが、適当な家に嫁に出し、兄の為に動いてくれれば良い、とただ甘やかした。
システィーナはいつの間にか公爵家の子息と婚約していたが、それについては特に不満はなかった。
システィーナを高位貴族に嫁がせたなら、ロザリアが自由恋愛からの平民との結婚をしたところで、特に自分は困らない。ロザリアは昔から勉強が嫌いで基本的なマナーすら出来ていなかった為に、貴族に嫁ぎたいと思っていることすら知らなかった。
ならば何故あの場で姉の婚約者を勧めたのか?完全にシスティーナへの嫌がらせの為だけだ。アレクシスだって、ロザリアを別の貴族家との橋渡しに使う気などなかった。
あの子には無理だと、自分もシスティーナと同じように考えた。
よくできた妹に醜くも嫉妬した結果、の話。許されなくても、システィーナに平謝りするしか手立ては残されておらず、アレクシスには絶望感でいっぱいになった。
アレクシスは、今まで侯爵家の長男としてうまくやっていると思っていた。いくら母が弟の方が後継に相応しいと主張していても、当主の意見が通ると思っていたし、何もしなければ結局は母も折れて自分を後継者として認めてくれると思っていたのだ。
何もしなければ、とは言え自分が侯爵家をよくするために交わした初めての契約は、妹システィーナによってなかったことになった。
功を焦った訳ではないが、友人からの儲け話を聞く限り、詐欺だと気がつかなかったのは自分の落度だ。これまで色々な場面で助けてくれた友人を信じてしまったのが仇となった。
「人を信じることは素晴らしいことですが、背景を少し調べてからでも遅くはなかったのでは?」
「何をいう。それならチャンスを逃していたかもしれないんだ。今なら間に合うと言われて……」
飛びついた結果、詐欺に遭ったのだから、妹の言う通りそうするべきではなかったのだ。
システィーナの言うことはいつも正しい。だけど、素直にそれを認めたくない気持ちがある。妹はバカにするが兄としてなけなしのプライドが、自分にだってある。
システィーナに取り次いでほしくて母を訪ねると、その場にはマイルズがいた。弟は、何か言いたいことでもあるのかチラチラと、こちらを窺っていたが、母に止められていた。
このままでは、侯爵家の次期当主の座は弟のものになってしまう。
母から言い渡された課題は、システィーナと向き合うこと。その際、誰の力も借りてはいけない。
マイルズは可愛い弟だが、母の信頼を得ているところが気に入らない。ロザリアやアレクシスよりもシスティーナの話をよく聞くし、使用人達の態度もどこかアレクシスやロザリアとはまた違う。
まるで、マイルズには敵わないのだと暗に言われているようで気分は悪かった。
ロザリアは昔からずっと家のことには無頓着だった。チヤホヤされたいだけの妹で少し褒めたり、声をかけてやると、機嫌が良くなる。金遣いの荒さだけは少し忌々しくは思ったが、適当な家に嫁に出し、兄の為に動いてくれれば良い、とただ甘やかした。
システィーナはいつの間にか公爵家の子息と婚約していたが、それについては特に不満はなかった。
システィーナを高位貴族に嫁がせたなら、ロザリアが自由恋愛からの平民との結婚をしたところで、特に自分は困らない。ロザリアは昔から勉強が嫌いで基本的なマナーすら出来ていなかった為に、貴族に嫁ぎたいと思っていることすら知らなかった。
ならば何故あの場で姉の婚約者を勧めたのか?完全にシスティーナへの嫌がらせの為だけだ。アレクシスだって、ロザリアを別の貴族家との橋渡しに使う気などなかった。
あの子には無理だと、自分もシスティーナと同じように考えた。
よくできた妹に醜くも嫉妬した結果、の話。許されなくても、システィーナに平謝りするしか手立ては残されておらず、アレクシスには絶望感でいっぱいになった。
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