16 / 25
どちらにしても
しおりを挟む
アランの怒りは多分システィーナにしかわからない。彼は見た目では穏やかに笑っているようだが。その本音は、システィーナ以外どうでも良いと思っているからだ。システィーナを傷つけようとする者は何もロザリアだけではなかった。
淑女になりきれない不特定多数の甘ったれた令嬢達は、システィーナを軽く見て、アランに色目を使ってくることがこれまで多かった。
アランはそう言った身の程知らずをシスティーナの目前に晒すことすら許さず、その殆ど全てを排除して来たのだ。
ロザリア自身だって真っ先にシスティーナの前から排除したくて。彼女が許すならきっとそうなっていたのは容易に想像できる。ロザリアに猶予を与えたのは、単にシスティーナが妹を愛してフォローしようとしていたことが原因だ。
システィーナの貴重な時間を奪っておきながら、我儘を押し通そうと無茶をするロザリアをアランは好きになれなかった。そんな時間があるならば、アランとの時間にあててほしいと何度も思った。
最近よく社交界を騒がしている夜会での衆人環視の中での婚約破棄は、第一王子クリストファーが始めたことではない。最初はただの小説だったのだ。ある下位貴族の出身の世間知らずの娘が主人公の、身分違いの相手との恋物語。
小説の中では、普通の貴族社会ではあり得ないことばかりが起きるから、作者は貴族のふりをした平民ではないか、と言われていたのだが。
実際には第二王子ジュリアスの元婚約者の公爵令嬢が仕組んだものだった。
第一王子をその気にさせて、婚約破棄を画策し、見事に第一王子はその王位継承権を奪われた。それに伴い、第二王子の王位継承権も奪われてしまうのだが。その時になっても、まだ婚約者のいなかった第三王子セドリックは今の位置にはいなかった。
彼が頭角を表したのは、シェアード公爵令嬢と婚約した辺りから。
セドリックに張り合うのなら、ローレン侯爵家と縁を望むのはある意味では間違っていない。
だが、システィーナはアランが離さないとなればロザリアにと考えたのも理解できる。だが、何が一番の悪手かと考えると、やはりロザリアを選んだことが、としかいえない。
アランはローレン家の中で、実力のある者が誰かを把握している。夫人かシスティーナ、そして近いうちに義弟になるマイルズ。
残念ながら兄と妹に才はない。自ら努力をして学ぶ力があればまだマシだったが、そんなことすらしない類の彼らには退行することはあっても進化することはない。
「今回ばかりは貴方の言う通りだったわ。」
システィーナは負けを認めて謝罪する。アランは彼女に謝罪を望んだ訳ではない。それでもアランは今は言い返すことはやめておいた。
平気な顔をしてはいるが、兄と妹と父を諦めなくちゃならないことは、相当システィーナには応えたようだ。
淑女になりきれない不特定多数の甘ったれた令嬢達は、システィーナを軽く見て、アランに色目を使ってくることがこれまで多かった。
アランはそう言った身の程知らずをシスティーナの目前に晒すことすら許さず、その殆ど全てを排除して来たのだ。
ロザリア自身だって真っ先にシスティーナの前から排除したくて。彼女が許すならきっとそうなっていたのは容易に想像できる。ロザリアに猶予を与えたのは、単にシスティーナが妹を愛してフォローしようとしていたことが原因だ。
システィーナの貴重な時間を奪っておきながら、我儘を押し通そうと無茶をするロザリアをアランは好きになれなかった。そんな時間があるならば、アランとの時間にあててほしいと何度も思った。
最近よく社交界を騒がしている夜会での衆人環視の中での婚約破棄は、第一王子クリストファーが始めたことではない。最初はただの小説だったのだ。ある下位貴族の出身の世間知らずの娘が主人公の、身分違いの相手との恋物語。
小説の中では、普通の貴族社会ではあり得ないことばかりが起きるから、作者は貴族のふりをした平民ではないか、と言われていたのだが。
実際には第二王子ジュリアスの元婚約者の公爵令嬢が仕組んだものだった。
第一王子をその気にさせて、婚約破棄を画策し、見事に第一王子はその王位継承権を奪われた。それに伴い、第二王子の王位継承権も奪われてしまうのだが。その時になっても、まだ婚約者のいなかった第三王子セドリックは今の位置にはいなかった。
彼が頭角を表したのは、シェアード公爵令嬢と婚約した辺りから。
セドリックに張り合うのなら、ローレン侯爵家と縁を望むのはある意味では間違っていない。
だが、システィーナはアランが離さないとなればロザリアにと考えたのも理解できる。だが、何が一番の悪手かと考えると、やはりロザリアを選んだことが、としかいえない。
アランはローレン家の中で、実力のある者が誰かを把握している。夫人かシスティーナ、そして近いうちに義弟になるマイルズ。
残念ながら兄と妹に才はない。自ら努力をして学ぶ力があればまだマシだったが、そんなことすらしない類の彼らには退行することはあっても進化することはない。
「今回ばかりは貴方の言う通りだったわ。」
システィーナは負けを認めて謝罪する。アランは彼女に謝罪を望んだ訳ではない。それでもアランは今は言い返すことはやめておいた。
平気な顔をしてはいるが、兄と妹と父を諦めなくちゃならないことは、相当システィーナには応えたようだ。
58
お気に入りに追加
339
あなたにおすすめの小説

ざまぁ?………………いや、そんなつもりなかったんですけど…(あれ?おかしいな)
きんのたまご
恋愛
婚約破棄されました!
でも真実の愛で結ばれたおふたりを応援しておりますので気持ちはとても清々しいです。
……でも私がおふたりの事をよく思っていないと誤解されているようなのでおふたりがどれだけ愛し合っているかを私が皆様に教えて差し上げますわ!
そして私がどれだけ喜んでいるのかを。
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。
私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。
石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。
自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。
そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。
好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。
この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

もう我慢する気はないので出て行きます〜陰から私が国を支えていた事実を彼らは知らない〜
おしゃれスナイプ
恋愛
公爵令嬢として生を受けたセフィリア・アインベルクは己の前世の記憶を持った稀有な存在であった。
それは『精霊姫』と呼ばれた前世の記憶。
精霊と意思疎通の出来る唯一の存在であったが故に、かつての私は精霊の力を借りて国を加護する役目を負っていた。
だからこそ、人知れず私は精霊の力を借りて今生も『精霊姫』としての役目を果たしていたのだが————

婚約する前から、貴方に恋人がいる事は存じておりました
Kouei
恋愛
とある夜会での出来事。
月明りに照らされた庭園で、女性が男性に抱きつき愛を囁いています。
ところが相手の男性は、私リュシュエンヌ・トルディの婚約者オスカー・ノルマンディ伯爵令息でした。
けれど私、お二人が恋人同士という事は婚約する前から存じておりましたの。
ですからオスカー様にその女性を第二夫人として迎えるようにお薦め致しました。
愛する方と過ごすことがオスカー様の幸せ。
オスカー様の幸せが私の幸せですもの。
※この作品は、他投稿サイトにも公開しています。

誰も残らなかった物語
悠十
恋愛
アリシアはこの国の王太子の婚約者である。
しかし、彼との間には愛は無く、将来この国を共に治める同士であった。
そんなある日、王太子は愛する人を見付けた。
アリシアはそれを支援するために奔走するが、上手くいかず、とうとう冤罪を掛けられた。
「嗚呼、可哀そうに……」
彼女の最後の呟きは、誰に向けてのものだったのか。
その呟きは、誰に聞かれる事も無く、断頭台の露へと消えた。
交換された花嫁
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」
お姉さんなんだから…お姉さんなんだから…
我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。
「お姉様の婚約者頂戴」
妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。
「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」
流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。
結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。
そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる