14 / 25
墓穴は深く
しおりを挟む
「お姉様!」
友人との楽しいひと時に水を差すのは勿論非常識な妹ロザリア。今になって事情を知った父と兄に冷たくされたと、また性懲りも無く文句を言いにきた、といったところだろう。全く何だって自分が怒られる理由を此方に求めるのか。
頭がおかしいとしか言いようがない。この場にはシスティーナ、ルイーズの他にロザリアを苦手としている侯爵令嬢がいる。彼女は何を隠そう、第一王子の婚約者候補にまでなったことのあるご令嬢で名をアリア・カラントという。
第一王子の最初の被害者であり、冤罪で罪に問われる寸前に、他国の皇太子に助けられ、見そめられた正にヒロインのようなご令嬢だ。
いつもは他国にいるのだが、婚姻前の里帰りとして、戻って来たのだ。ルイーズとシスティーナはアリアとは幼馴染で仲良くしていた。
第一王子クリストファーが彼女を貶めた理由には、彼女が彼をも凌ぐ優秀な人だったからだと言われている。彼女は此方の事情をご存知でちらりとロザリアを見て、持っていた扇で口元を隠した。
「まあ、彼の方の好きそうなお顔立ちね。変わっていなさそうで安心したわ。」
ロザリアはシスティーナの友人として交流のあった彼女を覚えていなかったようで、彼女を無視してシスティーナに喚き続ける。
「彼の方も、女性が絡まなければ優秀な方なのよ。好きな人のことを信じすぎたり、嫌いな相手を嫌いすぎることはあっても、仕事などはできるのよ。おかげで今まで慰謝料なんかも払われているしね?支払いが滞ったこともないもの。ただ困るのはこれからの話よ。これ以上問題を起こすと、今の地位すら無くなるじゃない?なら、慰謝料の支払いがまだ済んでいない今、一括で返済してもらった方が良いのかな、って。」
ロザリアが喚いてはいるが、システィーナとしては、アリアの話に興味がある。というか、まだ慰謝料って全て支払われていないのね。
「お金が無いって言って分割にしたのは良いのだけれど、彼の方、侯爵家のお金で相手の方にたくさん貢がれていて、その分をお返ししてもらうことになっているの。だから、慰謝料というよりは借金の返済ね。
時に貴女、何か第一王子殿下から、貢がれたりしてない?余裕があるようなら、増額も考えなければいけないわ。」
ロザリアは何を思ったか息を吹き返し、アリアに向かって踏ん反り返る。
「クリス様は私にいつも綺麗でいてほしいとたくさん貢いでくださるわ。」
「そう、なら、考えてみるわ。教えてくれてありがとう。」
いまいち噛み合っていない二人の会話だが、システィーナとルイーズは同じことを考えていた。
驚くことに、ロザリアはどんどん墓穴を掘っていく。ここまでのことは考えていなかったものの、システィーナは妹に対して気の毒だとかけらも思えないことに納得していた。
友人との楽しいひと時に水を差すのは勿論非常識な妹ロザリア。今になって事情を知った父と兄に冷たくされたと、また性懲りも無く文句を言いにきた、といったところだろう。全く何だって自分が怒られる理由を此方に求めるのか。
頭がおかしいとしか言いようがない。この場にはシスティーナ、ルイーズの他にロザリアを苦手としている侯爵令嬢がいる。彼女は何を隠そう、第一王子の婚約者候補にまでなったことのあるご令嬢で名をアリア・カラントという。
第一王子の最初の被害者であり、冤罪で罪に問われる寸前に、他国の皇太子に助けられ、見そめられた正にヒロインのようなご令嬢だ。
いつもは他国にいるのだが、婚姻前の里帰りとして、戻って来たのだ。ルイーズとシスティーナはアリアとは幼馴染で仲良くしていた。
第一王子クリストファーが彼女を貶めた理由には、彼女が彼をも凌ぐ優秀な人だったからだと言われている。彼女は此方の事情をご存知でちらりとロザリアを見て、持っていた扇で口元を隠した。
「まあ、彼の方の好きそうなお顔立ちね。変わっていなさそうで安心したわ。」
ロザリアはシスティーナの友人として交流のあった彼女を覚えていなかったようで、彼女を無視してシスティーナに喚き続ける。
「彼の方も、女性が絡まなければ優秀な方なのよ。好きな人のことを信じすぎたり、嫌いな相手を嫌いすぎることはあっても、仕事などはできるのよ。おかげで今まで慰謝料なんかも払われているしね?支払いが滞ったこともないもの。ただ困るのはこれからの話よ。これ以上問題を起こすと、今の地位すら無くなるじゃない?なら、慰謝料の支払いがまだ済んでいない今、一括で返済してもらった方が良いのかな、って。」
ロザリアが喚いてはいるが、システィーナとしては、アリアの話に興味がある。というか、まだ慰謝料って全て支払われていないのね。
「お金が無いって言って分割にしたのは良いのだけれど、彼の方、侯爵家のお金で相手の方にたくさん貢がれていて、その分をお返ししてもらうことになっているの。だから、慰謝料というよりは借金の返済ね。
時に貴女、何か第一王子殿下から、貢がれたりしてない?余裕があるようなら、増額も考えなければいけないわ。」
ロザリアは何を思ったか息を吹き返し、アリアに向かって踏ん反り返る。
「クリス様は私にいつも綺麗でいてほしいとたくさん貢いでくださるわ。」
「そう、なら、考えてみるわ。教えてくれてありがとう。」
いまいち噛み合っていない二人の会話だが、システィーナとルイーズは同じことを考えていた。
驚くことに、ロザリアはどんどん墓穴を掘っていく。ここまでのことは考えていなかったものの、システィーナは妹に対して気の毒だとかけらも思えないことに納得していた。
70
お気に入りに追加
339
あなたにおすすめの小説

ざまぁ?………………いや、そんなつもりなかったんですけど…(あれ?おかしいな)
きんのたまご
恋愛
婚約破棄されました!
でも真実の愛で結ばれたおふたりを応援しておりますので気持ちはとても清々しいです。
……でも私がおふたりの事をよく思っていないと誤解されているようなのでおふたりがどれだけ愛し合っているかを私が皆様に教えて差し上げますわ!
そして私がどれだけ喜んでいるのかを。
離婚した彼女は死ぬことにした
まとば 蒼
恋愛
2日に1回更新(希望)です。
-----------------
事故で命を落とす瞬間、政略結婚で結ばれた夫のアルバートを愛していたことに気づいたエレノア。
もう一度彼との結婚生活をやり直したいと願うと、四年前に巻き戻っていた。
今度こそ彼に相応しい妻になりたいと、これまでの臆病な自分を脱ぎ捨て奮闘するエレノア。しかし、
「前にも言ったけど、君は妻としての役目を果たさなくていいんだよ」
返ってくるのは拒絶を含んだ鉄壁の笑みと、表面的で義務的な優しさ。
それでも夫に想いを捧げ続けていたある日のこと、アルバートの大事にしている弟妹が原因不明の体調不良に襲われた。
神官から、二人の体調不良はエレノアの体内に宿る瘴気が原因だと告げられる。
大切な人を守るために離婚して彼らから離れることをエレノアは決意するが──。
-----------------
とあるコンテストに応募するためにひっそり書いていた作品ですが、最近ダレてきたので公開してみることにしました。
まだまだ荒くて調整が必要な話ですが、どんなに些細な内容でも反応を頂けると大変励みになります。
書きながら色々修正していくので、読み返したら若干展開が変わってたりするかもしれません。
作風が好みじゃない場合は回れ右をして自衛をお願いいたします。

もう我慢する気はないので出て行きます〜陰から私が国を支えていた事実を彼らは知らない〜
おしゃれスナイプ
恋愛
公爵令嬢として生を受けたセフィリア・アインベルクは己の前世の記憶を持った稀有な存在であった。
それは『精霊姫』と呼ばれた前世の記憶。
精霊と意思疎通の出来る唯一の存在であったが故に、かつての私は精霊の力を借りて国を加護する役目を負っていた。
だからこそ、人知れず私は精霊の力を借りて今生も『精霊姫』としての役目を果たしていたのだが————

誰も残らなかった物語
悠十
恋愛
アリシアはこの国の王太子の婚約者である。
しかし、彼との間には愛は無く、将来この国を共に治める同士であった。
そんなある日、王太子は愛する人を見付けた。
アリシアはそれを支援するために奔走するが、上手くいかず、とうとう冤罪を掛けられた。
「嗚呼、可哀そうに……」
彼女の最後の呟きは、誰に向けてのものだったのか。
その呟きは、誰に聞かれる事も無く、断頭台の露へと消えた。
交換された花嫁
秘密 (秘翠ミツキ)
恋愛
「お姉さんなんだから我慢なさい」
お姉さんなんだから…お姉さんなんだから…
我儘で自由奔放な妹の所為で昔からそればかり言われ続けてきた。ずっと我慢してきたが。公爵令嬢のヒロインは16歳になり婚約者が妹と共に出来きたが…まさかの展開が。
「お姉様の婚約者頂戴」
妹がヒロインの婚約者を寝取ってしまい、終いには頂戴と言う始末。両親に話すが…。
「お姉さんなのだから、交換して上げなさい」
流石に婚約者を交換するのは…不味いのでは…。
結局ヒロインは妹の要求通りに婚約者を交換した。
そしてヒロインは仕方無しに嫁いで行くが、夫である第2王子にはどうやら想い人がいるらしく…。

婚約者が、私より従妹のことを信用しきっていたので、婚約破棄して譲ることにしました。どうですか?ハズレだったでしょう?
珠宮さくら
恋愛
婚約者が、従妹の言葉を信用しきっていて、婚約破棄することになった。
だが、彼は身をもって知ることとになる。自分が選んだ女の方が、とんでもないハズレだったことを。
全2話。

断罪される一年前に時間を戻せたので、もう愛しません
天宮有
恋愛
侯爵令嬢の私ルリサは、元婚約者のゼノラス王子に断罪されて処刑が決まる。
私はゼノラスの命令を聞いていただけなのに、捨てられてしまったようだ。
処刑される前日、私は今まで試せなかった時間を戻す魔法を使う。
魔法は成功して一年前に戻ったから、私はゼノラスを許しません。

理想の『女の子』を演じ尽くしましたが、不倫した子は育てられないのでさようなら
赤羽夕夜
恋愛
親友と不倫した挙句に、黙って不倫相手の子供を生ませて育てさせようとした夫、サイレーンにほとほとあきれ果てたリリエル。
問い詰めるも、開き直り復縁を迫り、同情を誘おうとした夫には千年の恋も冷めてしまった。ショックを通りこして吹っ切れたリリエルはサイレーンと親友のユエルを追い出した。
もう男には懲り懲りだと夫に黙っていたホテル事業に没頭し、好きな物を我慢しない生活を送ろうと決めた。しかし、その矢先に距離を取っていた学生時代の友人たちが急にアピールし始めて……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる