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理解の上限

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どのみち、ロザリアが第一王子を選んだ時点で既に罰は受けている気もするが、システィーナには何だかモヤモヤした気持ちが残っていた。ロザリアにやられたことと、罰が噛み合っていない。

ロザリアは今は幸せの真っ只中。システィーナにもルイーズにも勝ったと有頂天になっている。

「もう少しちゃんと叩きのめしたいわね。」
「あっはは。言うようになったわね。私は嬉しいわ。なら、こんなのはどう?」

ルイーズは惜しみなくアイデアをくれる。そのアイデアの元は、自分の経験談というのは笑えないけれど。システィーナが考えつかないことばかりだから、助かっていた。

彼女の案は採用した。とはいえ、成功するかどうかは二人の演技力にかかっている。ロザリアにその気にさせるどころか思惑を悟られたら意味がない。

「大丈夫よ。ロザリアは飛びついてくるわ。私達より自分が上だと、今にも主張したくて堪らないんだから。」
「なら、成功した暁にはうちの愚兄も呼んで良いかしら。先ずはアレに近況を知らしめたいの。」
「勿論いいわよ。システィーナ、偶にではなくて淑女は眠らせておいた方が良いんじゃない?この方が楽しいわ。」
「正直、私もそうね。それでも戻れるうちにやめないと。偶には、やめるぐらいが丁度良いのよ。」

妹にも兄にも、場合によっては父にも、仕返しはするし、罰も受けてもらうけど、オーバーキルはいけない。そこまで叩きのめして、立ち上がれなくなられても家族として困るのは目に見えている。

反省は大いに結構。アレクシスが当主になるのは反対だけど落ちぶれてほしいわけではない。弟マイルズの為にサポートに回れないぐらいだと困るのだ。お荷物になったらなったで、面倒だから。丁度良い落とし所を見つけなければいけない。どちらにしろ、あの性格は矯正するけれど。

「セドリックが、自分の出番はまだかとウズウズしていたわ。アランも呼ぶのでしょう?もう仲直りした?」
「まだよ。仲直りはしていないけれど、今は休戦中ね。ロザリアのことが片付いてからもう一度話し合うつもりよ。」
「ふうん、大変ね。システィーナは考えすぎなのだと思うけれど。私とは環境も考え方も違うのだから仕方ないわ。早く思う存分喧嘩し合えるといいわね。」

ルイーズの良いところは決して人に強制しないところだ。こうした方が良いんじゃない?とはいうものの、それをしなければ罰があるとかではない。それをしない選択肢もきちんと残してくれている。

「セドリック第三王子殿下に何を話しているの?」
「システィーナの力になりたい、ってことだけよ。多分あの茶会で起きた出来事は彼には筒抜けでしょうからそこから彼なりに推測したのよ。自分の兄が楽しそうなのも、側で見てて知っているでしょうし。」

ルイーズの婚約者のセドリック第三王子殿下は見た目の爽やかさからは想像できないほどの良い性格をしている。

彼に比べるとアランは真っ直ぐに育ってくれた。システィーナはルイーズを好いているものの、未だにセドリックとはあまり仲良く出来るとは思っていない。ロザリアが不敬を働くのを黙って見ているしかない状況で果たして自分は耐えられるのだろうか。

「大丈夫よ、システィーナ。あなたの妹の不敬は今更咎めたりしないそうよ。セドリックは第一王子殿下を叩きのめしたいだけだから。」

どうやって、と聞くのはやめた。知らなくて良いことは存在する。藪を突いたばかりに自分が被害を受ける必要はない。

「ほどほどにね。」

全くの気休めを口にするものの、その言葉は虚しく響いた。
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