望んだことをしてあげただけなのに、妹が烈火のごとく怒り出したのですが

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父娘

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兄には嫌味を言われる仲でも、父とはそうではない。システィーナは父とは意識して会わなければ、姿を見ることもないという事実に気がついてしまった。こうなるとつくづく思うのは、システィーナにとって父とは然程重要な存在ではないと言うこと。

子供の頃は確かにあった彼との交流は、母が彼の代わりに仕事をしている事実に気がついてからは全くなくなった。

母は自分が能力があるものだから、彼の無能ぶりに関心を持っていないようだけど、システィーナは多分ショックだったのだ。無能だと言って、それを免罪符に何も努力をしなくなった父を。ならせめてサポートに回れば良いのに。本当に何もしない。

極め付けは、夜会での姿だ。母が精力的に挨拶周りをする中、父は黙ってニコニコと微笑むだけ。一応は父の名前で仕事している母だけど、あれではどちらが本当の当主かわかってしまうというもの。

「私は結構気に入っているわよ。能力がないのに出張る人じゃないのだもの。誰でも向き不向きはあるものだし、何より思いの詰まった土地を滅茶苦茶にされることがないのだもの。彼が己の能力を見極めて、自重してくれたことは良いことなのよ。」

システィーナはその気持ちがよくわかる。母に似て何でも自分でできるタイプだから、ロザリアやアレクシスが余計なことをするよりは、全て自分ではじめからやってしまった方が良いと思ってしまう。

母はそんな何もしない父とも仲良くいられるが、システィーナは違う。これは自分の視野が狭いからだろうか。父と娘だからだろうか。幸いなことにアランは能力がある人だ。だから、今回のようにぶつかることもあるけれど、互いに尊敬しあえて尊重し合える。アラン自身に不満などはない。

でも、アランには何故か上手に甘えることができない。彼は自分をうまく使って休むことを覚えてほしい、というが、それができないのだから、仕方がない。システィーナは理想が高いのだろうか。妥協をすることができないから、甘えたり仕事を溜め込んでしまうのだろうか。


システィーナは自分の中に半分は父の血が入っていることを実感することはない。ただふとした時に思うのだ。一度休んでそこで父のように己の無能さを思い知ったら?

もう何もできない、と悟ってしまったら?

アランは政略で結ばれた婚約者だが、システィーナを愛してくれている。自分だって、アラン以外とはもう結婚する気はない。だけど、彼に負担だと思われたらどうしよう、とそれだけがいつまでも怖い。



大して交流もなくなった娘と自分を利用する為でも大好きと言ってそばにいる娘。どちらが可愛いかなんて分かりきったことで。

この前の呼び出しを無視してからは父から呼ばれることもなくなった。こうして父娘の交流はどんどん薄くなっていくのだ。前例があるだけにわかった。

システィーナにとって、父との交流は「今更要らない。」と言われる程のものだということに。

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